#87 女子組でお風呂
病院から出ると予想外な人物が俺の事を待っていた。
「和葉さん?どうしてここに?」
「あっ葵さん、お疲れ様です。体調はどうですか?」
「すっかり良くなってますよ」
「それは良かったです。実は朱音から『手術の後で事故とか起こしたら大変だから迎えに行ってあげて!』って頼まれたんです」
まじか………なんか手術をしてから姉ちゃんが人が変わったように優しくなってるんだけど。なんか変な物でも食べたのか?
「あっあと『これは結衣ちゃんのためだからね!』ってすごい勢いで言ってて葵さんは愛されてるんだなぁって思いました」
ツンデレかっ!
「そうなんですか………あれ?私の車は?」
俺は病院に一番近いところに車を停めておいたはずだ。だけど何故かそこに俺の車が無かったのだ。
もしかして回収された?んなわけないよな。
「あ、葵さんの車は昨日家に運ばれましたよ」
「それって………どういう事ですか?」
「朱音が昨日『葵は頑固だから退院したら絶対に車でこっちに来ようとするから先に車運んでもらったわ!』って言ってました」
嘘ぉ〜まじで姉ちゃんどうなってるの〜。今までだったら絶対にそんな事しないよな。
ほんとに何かあったんじゃないのか?例えば……詐欺に遭ったとか、犯罪を犯したとか。いや、無いか。姉ちゃんはそこら辺はちゃんとしてるし。
「まあとりあえず行きましょう。結衣ちゃん、楽しみに待ってますよ!」
「そうですね」
そして俺は和葉さんの車に乗り込んで姉ちゃん達の家に向かった。
姉ちゃん達の家は神奈川にある。そう、神奈川に家があるという事は………お金持ちという事だ。まぁ実際に和葉さんは大手企業のエリートだし姉ちゃんは高校の教員だ。姉ちゃんが「私先生になる!」って言った時は家族全員がびっくりしていた。それまでほとんど勉強をしてないで適当に生きてきた姉ちゃんが高校生の時にいきなりそんな事を言い始め勉強をし始めた時には本気なんだなぁって感心したよね。
そして大学で和葉さんと出会い意気投合、結婚したのだ。
それと姉ちゃん曰く生徒、特に女子生徒から絶大な支持があるらしく育休の時には毎回色紙が渡されたらしく今でも部屋の壁には色紙が飾られている。
◇
車に揺られながら数時間経って姉ちゃんの家に着いた。
あ〜緊張するなぁ〜。確かに昨日会ったけどその時は入院着だったし、ある程度は隠れてたけど今日は昨日姉ちゃんが用意してくれた服を着てるんだけど………すっっごく恥ずかしい。だって白いワンピースなんて着たことないし、下着とかの色が透けそうで怖い。何よりスースーする。今までの人生で感じたことの無い感覚がする。
俺はなんとか我慢しながら家に入るすると………
「お姉ちゃんお帰り!!」
「ただいま、結衣」
部屋に入るなり結衣が俺に飛びついてきた。
俺は飛びついてくる結衣を受け止めると少し違和感を覚えた………あれ、なんか結衣大きくなった?手術受ける前は結衣の頭が胸の下にくるくらいだったんだけど今はちょうど結衣の顔が胸に重なるくらいになっていた。
………もしかして、縮んだ!?えっそんな事お医者さんは言ってなかったんだけど!………ま、いっか。特に支障は無いしね。
「あれ?お姉ちゃんちっちゃくなった?」
結衣も気づいたようだ。そりゃあ今まで数えられないくらいぎゅ〜ってしてきたからわかるよね。
「う〜ん、そうみたい。まあ特に支障は無いから大丈夫だよ」
「いやっ結衣がおっきくなったかもしれないよ!」
あ〜それもあるか。確か女の子って小学生の高学年の頃からすごく成長するんだったな。
そう考えると………結衣が成長して俺も縮んだって事か。結衣が成長したっていう喜びもあるけど縮んだっていう悲しみもあって複雑な気持ちだ。
「葵〜湯船沸かしてあるからゆっくりお風呂入ってきたら〜?昨日は入れなかったんでしょ?」
「あ〜そうだね、ちょっと入ってくる」
流石に病院ではお風呂に入れなかった。体は拭いて貰ったんだけどやっぱりそれじゃあさっぱり出来ないしなんか気持ち悪い。
「結衣も一緒に入る!」
「そう?じゃあ一緒に入ろっか」
「うん!」
もう女になったし、自分の娘と一緒に入っても罪悪感も無いしな。いや〜これからはやっと温泉とかでも結衣と一緒に入れるね。流石に結衣を男湯に入れる訳にもいかないから温泉とかは行きづらかったんだよね。
「あー!結衣ちゃんずるい!私も一緒に入りたい!!」
俺が結衣と一緒に入ろうと話をしていると上から未空ちゃんと夢未ちゃんもやって来た。
「お姉ちゃんも入るなら私も入りたい!」
「二人とも!久しぶりなんだから葵お姉ちゃんと結衣ちゃんだけにしてあげなさい!」
「「え〜!」」
二人が一緒に入りたいと言ったら姉ちゃんが二人を止めた。やっぱりなんか違和感がすごい。
俺は別に一緒に入っても良いんだけどな〜。
「お風呂広いんだし良いじゃん!」
「うんうん!」
「え〜しょうがない、葵が良いって言ったら良いよ」
姉ちゃんがそう言うと二人が一斉にこっちを向いてきた。
◇
「葵お姉ちゃんありがとね」
俺たちは今四人で湯船に浸かっている。結衣は俺の膝の上に座っている。
姉ちゃんの家のお風呂はめっちゃ広かった。湯船も俺と結衣の二人で入っても足を伸ばせるし、子供三人だったらかなりゆったりできる。俺もこんなお風呂がいいなぁ。
「お姉ちゃん……なんでこんなにお胸大きいの」
結衣が俺の胸を見ながら聞いてくる。
俺は普通で良いって言っただけなんだけどなぁ。
「羨ましいの?」
「………」
「大丈夫、きっと大きくなるよ」
俺がそう言うと結衣が振り向いて俺の胸に顔を埋めてきた。
ふふっ男の時はこういう事をされると焦るけど女になると別になんとも思わなくなったな。
「あ〜!結衣ちゃんずるい!私も!!」
「私もっ!」
それを見た二人も俺にくっついてきた、ちょっと恥ずかしい。
俺は三人を覆うように手を回した。
「ほらっ狭いから離れて〜」
「夢未髪洗おっ!」
「うん!」
俺が離れるように言うと二人は湯船を出て髪の毛を洗い始めた。けど、結衣は一向に離れようとしなかった。
「結衣〜?大丈夫〜?」
「……お姉ちゃん」
「なあに?」
結衣が何か聞きたそうにしている。
「その………お胸触っていい?」
「………」
これは〜どう答えれば良いんだ。
触らせても…………良いのか?こういう時に姉ちゃんがいたら聞けるんだけどなぁ。そんな事を考えていると俺の願いが届いたのか姉ちゃんがお風呂に入ってきた!?
「結衣ちゃん、優しくだったら大丈夫よ」
「姉ちゃん!?なんで?」
「え〜だってさっきからお風呂から楽しそうな声が聞こえてくるんだもん」
そう言った姉ちゃんは体をさっと洗い流して湯船に入ってきた。
「じゃあお姉ちゃん良いよね!」
姉ちゃんから言葉を聞いた結衣は目を輝かせながら聞いてきた。
まぁ姉ちゃんが良いって言うなら良いか。
「うん、良いよ。ただ……優しく、ね」
「うん!」
そう言うと結衣はそっと胸を触ってきた。
んっ……!ちょっとくすぐったい。けど………触って良いよって言っちゃったからすぐにやめてとは言いずらい。
「ゆ、結衣………くすぐったい」
「えっ……ごめんなさい」
俺がくすぐったいと言ったら結衣はすぐに手を離してくれた。
結衣はこういう所ではちゃんと引いてくれる、やっぱり優しいなぁ。
「今度は結衣の触って良いよ!」
今度は結衣が触っても良いと言ってきた。
………犯罪の匂いがする。流石に子供のを触る気にはなれないな。
けど触らなくて良いって言ったらそれはそれで結衣を傷つけちゃうかなぁ。どう答えれば結衣のことを傷つけないで触らなくて済むのかな。
「結衣ちゃん、お姉ちゃん髪の毛洗いたいって!洗ってあげたら?」
「……!そうなの?じゃあ洗お!」
「うん!」
ありがとー!姉ちゃん!助かったよ。
◇
「結衣〜大丈夫?」
「ん〜熱い〜」
あれからめっちゃ長い時間お風呂に入っていたせいで結衣がのぼせて膝の上で伸びている。ま〜確かにいろんな話聞けて良かったけど………子供達の事を考えてもっと早く出るべきだったな。結衣と夢未ちゃんはのぼせちゃってお風呂から出る時は俺と姉ちゃんで抱っこしてたし、未空ちゃんはなんとか頑張って自力で出てもらったけど少し申し訳ないと思った。
この後はパーティーをするからそれまでには回復してくれると良いなぁ。
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