#84 手術の日
「お姉ちゃん、明日……だよね?」
俺が部屋で着る物とかの準備をしていると結衣がおずおずと聞いてきた。
そう、明日は俺が手術をするために病院に行く日なのだ。正確に言えば明日は病院に入院して明後日に手術をするんだけどね。
「そうだよ〜。って結衣なんで泣きそうになってるの?」
俺が結衣に方を見ると結衣はなぜか目に涙を溜め込んでいた。
「だって、だって……もし失敗しちゃったらお姉ちゃん死んじゃうかもしれないんだよ!」
「大丈夫、日本の医療の技術は凄いんだから!」
「けど……」
も〜結衣はいつまで経っても心配性なんだから。
俺は結衣のことをそっと抱きしめるとなぜか結衣は逆に声を出して泣き出してしまった。俺、結衣を安心させたかっただけなんだけど……
「お姉ちゃん……絶対に無事でいてね!」
「もうっ大丈夫だって」
俺は結衣の頭を撫でながら結衣にも、自分に言い聞かせるように言った。
◇
そして朝になり出発の時間になった。
病院側からは今日中だったらいつ来ても構わないと言われているからまぁ、お昼過ぎに着くようにしたら良いかな。それに結衣を姉ちゃんのところに送っていかないといけないからどう頑張ってもお昼前には着かないしな。
「結衣〜準備できた?」
「出来た〜」
「もう行くよ〜」
「今行く〜!」
俺が車のエンジンのエアコンをつけて中を温めているとキャリーケースを持った結衣が玄関のドアを開けて出てきた。今回は一週間と長いお泊まりだから俺が遠出する時に使ってるのを使ってもらってる。そういえば今年は学習旅行は1泊2日だから結衣用のも買っておかないとな。
「大丈夫?忘れ物ない?下着とか靴下も持った?」
「大丈夫!お姉ちゃんもさっき確認したでしょ!」
「そうだけど〜」
「ほらっ早く行こ!」
そう言うと結衣はさっさとキャリーケースを後ろの方へ積み込んで助手席に入って行った。
昨日はずっとおどおどしてたのに、今朝になったら急におとなしくなっちゃって。
〜〜数時間後〜〜
途中で朝ごはんを買って食べたりして10時ごろに姉ちゃんの家に着いた。
インターホンを鳴らすと夢未ちゃんが出迎えてくれた。
「葵〜ついに決心したんだ〜」
部屋に入ると早々に姉ちゃんが嬉しそうでもあるし残念そうでもあるような声で言ってきた。
「うん、結衣の為にもね……変わらなきゃ」
「うんうん、お姉ちゃんは良いと思うよ。結衣ちゃんは任せておいてね」
「ああ、頼むよ。結衣も良い子にしてるんだよ」
「うん!」
よし、行くか。次に会う時はもう俺は女になってるんだよな。
早く行こう。ここに長くいちゃうとどんどん行く気が無くなっちゃうからな。
◇
病院に着くと早速健康診断とか色々検査をして入院着に着替えさせられた。
なんか病院着ってスースーするな、落ち着かない。
「それでは神崎さん、明日の9時から手術開始でよろしいですね」
「はい、お願いします」
「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。ところで何か聞きたい事とかはありますか?」
「あ〜そうですねぇ……手術後はどれくらい安静にしてれば退院できますか?」
「はい、大体3日間安静にしてその後異常が見られなければそのまま退院できますよ」
そうか、じゃあ調子が良ければ5日くらいで出る事が出来るのか。
そう考えると結衣に一週間分の服とかを持たせて正解だったな。
「では、また明日」
「はい、ありがとうございました」
そう言うと看護師さんは部屋を出て行った。ちなみに部屋は相部屋?ていうか大部屋で俺以外にも三人の人が入院している。俺の向かい側には20代前半の女性、右隣には中学か高校くらいのおとなしそうな男の子、そして右斜め上には一人は結衣と同じくらいの女の子だった。
向かい側にいる女性はかなり美人さんで………綺麗だった。本が好きなのか隣にある小さな棚には本が積み上げられていた。
そして隣のおとなしそうな男の子は机を出して絵を描いていた。その絵はとても上手でその歳にしてはかなりの腕前だった。そしてその隣で女の子がその絵を見ていた。
俺がその二人のことを見ていると女の子がこっちに寄ってきた。
「ねぇねぇお姉ちゃんはなんで入院してるの?」
「え〜っとまぁ色々かな」
「へ〜」
「穂花迷惑かけちゃダメだよ。すみません妹が」
俺のところに来ていた子を絵を描いていた男の子が呼び戻した。
妹って言ってたから兄弟で入院してるのか。兄弟と一緒だったら辛くもなさそうだな。
「いえいえ、可愛い妹さんですね」
「そうなんですよ!もうほんとに可愛くて!」
俺がそう言うと男の子が嬉しそうにしながら喜んだ。
やっぱり大切にしてる人を良く言われると自分も嬉しくなるよな。
「あっそういえば自己紹介してませんでしたね。僕は上園輝って言います。でこっちが妹の上園穂花です」
「私は神崎葵っていうの。多分すぐ退院するけど短い間よろしくね」
「はい!」
あ〜良い子、ちゃんと挨拶できて偉いね。こういう子がもっと増えてくれれば日本の未来は良くなるだろうな。
「ねぇねぇお姉ちゃんも絵描いてるの?」
すると女の子が俺の指を見ながら言ってきた。俺にもって事にはお兄ちゃんの輝君にも俺と同じところにマメがあるのかな?
「うん、お姉ちゃんも絵を描いてるよ」
「そうなんですか!!」
俺が絵を描いていると言うと輝君がすごく反応した。
「あっあの、僕の絵見てくれませんか!将来イラストレーターになりたいんです!」
「お〜喜んで見るよ〜」
いやはや、こんな所でイラストレーターになりたいって子と会えるとは。本職で生きてる俺からしたら凄く嬉しいな。
◇
そして次に日になり俺は二人の兄弟に別れを告げて手術室に向かった。
手術室に入ると何人かの看護師さんと一人の女性のお医者様がいた。くそっなんで最近はこんなにも美人な人が多いんだ!
「それでは始めますね。あっ別に緊張することでもないので適当に笑っててください!」
「は、はい」
「では確認で少し質問しますね。まず……」
それから何個かの質問に答えた。そして俺は生まれて初めて全身麻酔を受け手術が始まった。
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