#80 初めてのお料理
「ねぇねぇお姉ちゃん!」
「ん〜どうしたの?」
ある日の夕方俺が仕事をしていると結衣が顔をニコニコさせながら話しかけてきた。なんかやけに上機嫌だなぁ、なんかいい事あったのかな?
「今日は〜お姉ちゃんずっとゴロゴロしてて良いよ!」
「……どういう事?」
「今日は夜ご飯も結衣が作るし、お皿も洗うしぜ〜んぶ結衣がやるよ!」
おお〜それはありがたい。実は仕事が立て込んでどうしようかと悩んでたんだよね。
それに今日は休みの日だし結衣に家事とかに挑戦してもらうのにちょうど良いな。よし、やってもらうかな。
「じゃあお願いするね」
「うん!まずは……何すればいいの?」
そうだなぁ、もうすぐでいつもご飯作り始める時間だからお米を研いで炊いてもらおうかな。
「う〜ん取り敢えずご飯炊こっか」
「わかった!」
結衣はそう言うと台所に向かっていった。
……大丈夫かなぁ、さっきから何も音が聞こえないんだけど。もしかしてお米をそのまま炊飯器に入れたりしてないよね?心配だなぁ、ちょっと見に行くか。
そう思って台所に行くとどこから出したのかエプロン姿の結衣が炊飯器の前に立ちながら固まっていた。
「結衣〜大丈夫?」
「ーー!だ、大丈夫!これからお米炊こうと思ってたの!」
結衣はそう言うとこっちに手招きをしてきた。俺は一応見に行くと………俺の予想通り水が入っていなかった。う〜ん、わからなかったかぁ。まあ初めてだししょうがないか。
「結衣、お米はお水を入れてから炊くんだよ」
「そうなの!?わかった!」
俺がそう言うと結衣はさっそくジャー(お米が入ってる所)に水を入れ始めた。そしてそのまま炊飯器に戻し始めた。
「ちょっ!ストップストップ!」
「えっ!どこかダメなとこあった?」
「えっと……お米は何回か洗ってから炊飯器に戻すの」
「そうなの!?うぅ知らなかった」
俺が教えてあげると結衣はわかりやすく落ち込んでしまった。初めてだから知らなくても当然だと思うんだけどなぁ。
「じゃあやってみよっか」
「うん……」
俺の指示通りにしてお米の炊く準備ができた。
そういえば結衣は何を作ろうとしてるんだろう。まだ食材も何も出してないけど
「結衣、今日は何作ろうとしてたの?」
「えっと、今日はカレーを作ってみようかなって」
お〜カレーか、確かに初めて作るのはカレーっていう感じがあるよなぁ。
俺も一人暮らしして初めて作ったのはカレーだったな。それまでは自分で作ってなかったからま〜酷いのが出来たのよ。普通のカレー作ったはずがスープカレーになったし野菜は硬いし味は薄いし。しかもレシピを一切見ないでやったのが間違いだった、母さんから「最初は絶対にレシピを見ながら作りなさい」って言われてたのに見ないでやってこんな事になったからな。
「良いんじゃない。それじゃあ食材を出そっか」
「うん!」
そして結衣が冷蔵庫からカレーに使う食材を出してきた。出してきたのは人参、玉ねぎ、牛肉、じゃがいも、エリンギ、はちみつ………はちみつ!?え、カレーに蜂蜜って使うっけ?エリンギはわかるけど、はちみつ!?大丈夫かなぁ。
「結衣、なんではちみつ?」
「この前学校でね、『今日の給食のカレーには蜂蜜が使われていて辛いのが苦手な子でも食べれるようになってます』って言っててね良いな〜って思ったの!」
へぇ〜最近の学校だとそういう事を教えてくれるんだな。ま〜確かに将来料理を作る人になりたいとか思ってる人にとっては良いかもな。
「カレーの他には何か作るの?」
「ん〜サラダ作る!」
「お〜じゃあそれに使う食材も出しとこっか」
そして出してきた食材がキャベツ、レタス、トマト(大量)、チーズだった。結衣は……トマト好きだったんだな。
「まずは何からするの?」
「えっと……お肉とお野菜を切る!」
「そうだね、ちゃんと洗ってから切るんだよ。あと、お肉を最後に切ると楽だからね」
「わかった!」
まあお肉を最後に切るのは当然だよな。お肉を最初に切っちゃうとその後に野菜を切る時にまな板と包丁を一回洗わないといけないし。やっぱりこういうのはちゃんと教えてあげないとな!
結衣はどんどん野菜を切っていく。この前手伝ってくれた時に包丁の扱い方は大丈夫だったから特には言わなくても良いかな。
「お姉ちゃん油って入れたほうが良いの?」
「ん〜ちょっとだけね。そしたら玉ねぎ、じゃがいも、人参、お肉の順に炒めてね」
「わかった!」
【炒め中……】
「お姉ちゃん柔らかくなったよ!」
「そしたらお水とはちみつを入れてね」
入れる分量は結衣が頑張って炒めてる間に俺が用意しておいた。流石にこれくらいは、ね?
「はちみつも入れちゃうの?」
「そうだよ。ほら、レシピにもそう書いてある」
俺ははちみつを使ったカレーのレシピを見せる。にしても何でこのタイミングなんだろうな。別にもっと後でも良いと思うんだけどな。
「ほんとだ〜なんでだろうね?」
「う〜ん、お姉ちゃんにもわかんないや」
もっと結衣のために勉強しないとな、聞かれたことは全部答えられるようにしなきゃ。
「ほら、早くお水入れないと焦げちゃうよ」
「わっほんとだ!」
「それで少し経ったらルーを入れて完成だよ」
「うん!」
◇
そして結衣だけで作った夜ご飯が出来た。
初めてにしては結構良い感じにできてるな。やっぱり結衣は天才だからどんな事でもすぐに出来るようになるな!いや〜羨ましい。
「はやく!はやく!」
「はいはい、ちょっと待って〜」
結衣は待ち切れないらしくもうスプーンを手に取って「準備万端」という格好になっている。やっぱり自分で作ったのを食べるのは楽しみだよね。わかるなぁ。
「「いただきます!」」
俺たちはさっそくカレーを食べてみた。
お〜やっぱりカレーは美味しいな。それにほんのりはちみつの感じがあって俺の作るいつもの感じじゃないから新鮮に感じる。こんなに美味しいならこれからもはちみつは入れても良いかもな。
「結衣、美味しいよ」
「えへへっ!お姉ちゃんのおかげだよ!」
「いや、アドバイスをしても上手に作れるかはわかんないの。だから上手に出来たのは結衣の力なんだよ」
俺はそう言って結衣の頭を撫でる。結衣は満足そうな顔をしていた。
サラダもちゃんと食べやすい大きさに切られてるし、家を空けてても大丈夫だね。あ〜けど流石に大人がいないのにガスを使わせるのは怖いからやっぱり無しだな。
「さっ食べ終わったし片付けよっか」
「うん!あっお姉ちゃんはこたつでのんびりしてて!」
そう言うと結衣はテキパキとお皿を片付けてお皿を洗い始めた。
はぁ、こんなに働いてくれるなんてなんてありがたいんだ。
ん〜そういえばなんか忘れてるような…………あ
まあ結衣の成長の為だし、死ぬ気で頑張れば……なんとかなる、か?
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