#74 デート(2回目)
「結衣、どうしてここに来たの?」
俺は疑問になってた事を聞いた。結衣には仕事としか言ってないし、俺がここで仕事をしてるとも言ってない。
「えっとね、楓ちゃんママがお出かけしよって言って午前中にお買い物してここに来たの!」
「へぇ〜楓ちゃんのお母さんはお姉ちゃんがここでお仕事してるって言ってた?」
「ううん、何も言ってなかったよ」
そうか、て事はここに来たのは偶然なのかな?それとも楓ちゃんとかもvtuberが好きでここに来ようって話でもしてたのかな。まあ何でもいっか。
「結衣は中見たの?」
「ううん、お姉ちゃんと見たかったからまだ見てない!」
「そっか……じゃあお姉ちゃんと一緒に見て回る?」
「うん!」
「よしじゃあ早く行こっか!」
俺は結衣を降ろして紅葉さん達がいる所に向かった。
「紅葉さん、ありがとうございました」
「いえいえ、楓も楽しそうでしたしこういう時は助け合いですよ」
「これから結衣と一緒に中を見て回るんですけど、紅葉さん達もどうですか?」
俺がそう聞くと楓ちゃんと何か話すと「私たちこれから行く所があるので結衣ちゃんと楽しんでください」と言ってその場を離れていってしまった。結衣を預かってくれてたお礼とかもしたかったんだけどな、また今度にするか。
「お姉ちゃん早く行こうよ!」
「そうだね」
俺は結衣と手を繋ぎながら会場に入った。会場に入る時にチケットを渡すときにスタッフに二度見されたのは面白かったな。「なんでわざわざお金払ってまで来てるんですか!?」っていう感じの顔だった。
「結衣、どこ行きたい?」
「えっと……ここ行きたい!」
結衣が指差したのは射的や型抜きがある縁日が並ぶエリアだった。パンフレットによると景品にサイン入りのクリアファイルとか色々貰えるらしい。俺も気になってた所だからちょうど良かったな。
「よし、行こっか」
そして少し歩いて縁日エリアに着いた。そこにはたくさんの親子連れがいて射的やクジを楽しんでいた、がその中に明らかに子供向けでは無いパチンコ台があった……なんでここに置いた!?せっかくの縁日の雰囲気が台無しじゃん。けど……逆に気になるなぁちょっとだけやってみようかな?
「結衣、はいお小遣い。楽しんできな」
俺は財布から千円札を取り出して結衣に渡そうとした。けど結衣は受け取らずに俺に自分の財布を見せてきた。
「ちゃんとお財布持ってきてるから大丈夫!」
そう言って財布の中を広げて俺に見せてくる。その中には数枚のレシートと一枚の五千円札が入っていた。あ〜そういえば結衣にためにお金置いてってたな。使って無かったんだ〜せっかくだから使えば良かったのに。
「結衣、お金はいくらあっても良いんだからもらっておきな!」
俺は無理やり結衣の財布に千円札を詰め込む。結衣も観念したようで「ありがとうお姉ちゃん!」と言って射的のある場所に向かって走って行った。なんか結衣があんなに楽しそうに走ってくの初めて見るような……もしかしてお祭りとか好きなのかな?
さてと、それはさておき俺はあのパチンコ台に……
***
「射的は一回200円ですよ」
私は係のお姉さんに千円札を渡した。そして800円のおつりと5発の弾を渡された。係のお姉さんに弾の入れ方を教えてもらっていざ挑戦してみようとしたら……背がちっちゃいから狙いづらい!他の子を見るとみんなお父さんとかお母さんに抱えてもらいながら打ってたり、お父さんとかに取ってもらってた。うぅみんな良いなぁ……あんな良いお母さんもお父さんもいて……
「結衣ちゃん?……だよね?」
私が周りの子を羨ましそうに眺めていると後ろから声をかけられた。声のする方を向いてみると若い女の人が私のことを覗き込んでいた。
「そうですけど……」
「やっぱり!私ねあなたのことずっと探してたの!」
「何でですか?」
「それはね……」
お姉さんが理由を言おうとした瞬間なんでかわかんないけど心の中で「逃げなきゃ!」って言葉が出てきた。お姉さんの目から何か怖いものを感じたような気もして私は渡された銃のおもちゃを机を置いてお姉ちゃんを探し始めた。
「……あら?何でわかったのかしら?カモだと思ったんだけどな〜」
***
俺はその場から遠ざかろうとしていたその女性の進行方向に立ち塞がった。
「すみません。私の娘に用がありましたか?」
「……何ですか?」
「いや〜私の可愛い娘に何かしようとしてたので不審に思って声をかけただけですよ」
俺がそう言うと女はあからさまに不機嫌そうな顔をしながら「何もありません」と言ってその場から離れようとした。けど逃すつもりは無い。
「一緒に来ていただけますか?私はあなたに用があります」
「すみません急いでるので」
「さっきの場面録画してありますよ。あなたがポケットから何か取り出そうとしてたところもね」
俺が逃げようとする女の決定的証拠を言うと女はスタッフさんに諦めて裏方に連れて行かれた。まったく俺の娘に手を出そうとは……ぜっったいに許さないからな
「お姉ちゃーん!」
「どうしたの〜そんなに涙目になっちゃって〜」
結衣が涙目のなりながら俺のところに走ってきた。俺は何も知らない風を装って聞く。
「さっきね、怖い人がいてね!」
結衣は嗚咽をこぼしながら泣き出してしまった。俺は結衣の頭を撫でながら結衣が落ち着くのを待った。周りから凄い見られてて恥ずかしいけど……結衣はもっと怖い思いをしたからな、我慢しなければ。
「結衣、落ち着いた?」
「……ひっぐ……うん」
「ちょっとここ離れよっか、周りの邪魔になっちゃうから」
「……うん」
俺は結衣を連れて近くにあった休憩所に向かう。俺は行こうと思っていたタピオカミルクティーを買ってきて結衣の渡した。
「泣いて喉乾いたでしょ?はいっ飲んで!」
結衣は最初はタピオカミルクティーをちょびちょびと飲んでたけど二口飲んだくらいから凄い勢いで飲み始めた。すごく美味しそうに飲んでて笑顔になってくれて良かったよ。俺も買えば良かったけど……結衣が美味しそうに飲んでくれてるだけで俺も飲んだ感じになるなぁ。
「お姉ちゃんも飲む?」
「えっ良いの?」
結衣が半分くらい飲んだところで渡してきた。
「うん!おいしいから飲んでみて!」
「それじゃあちょっとだけ……ん〜美味しいね」
ほんとに美味しかった。そういえばライバーの誰かをモチーフにしてたなぁ誰かは知らんけどな。
◇
「そろそろ疲れてきた?」
「ん〜まだぁ……」
あれから色々なところを回っていって、時間もそろそろ終わりに近づいてきていた。結衣も流石に疲れてきたのか少し目がとろ〜んとしてきて握ってる手も少し弱くなってきてる気がした。
「もうそろそろ帰ろっか?」
「やぁ〜もうちょっと」
「それじゃあ次のブースで終わりね」
「……うん」
と言ったものの次のブースに着く前に結衣の体力に限界が来たらしく残念ながら帰ることになった。なんとか結衣には車まで頑張って歩いてもらってなんとか家に帰る事が出来た。
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