#62 親戚に囲まれる結衣
朝ご飯を食べ、ごろごろしているとインターホンが鳴った。どうやら親戚が来たみたいだ、こっからは親戚ラッシュだから気を引き締めてないとな。
「あけましておめでとうございます〜今年もよろしくお願いします〜」
「こちらこそよろしくお願いします〜」
まぁこういう仕事は母さんと父さんの仕事だから基本的に俺たちは部屋でゴロゴロしてるだけなんだけどな。……そう考えたらお年玉を貰うためだけに来てるってヤバいな。
「あら〜!葵ちゃんこんなに別嬪さんになっちゃって〜」
「叔母さんお久しぶりです。それと僕は男ですよ」
「あら〜?そうだったかしら」
この人は毎年このボケをかましてくる。最近はもはやボケなのかすら分からないが。
「あら?葵ちゃん、後ろにいるのは?……もしかして、結婚したの!?」
叔母さんが結衣の姿を見て驚いている、誤解を生む前に説明しておかないとな。
「叔母さn……」
「やだ〜葵ちゃん、おばちゃんも結婚式呼んでよ〜お相手さんは?やっぱり美少女にはイケメンかしら?それとも美男子?」
「ちょ、叔母s……」
「ちょっとあなたー!葵ちゃんも結婚したんだってー!!」
ああーー!!相変わらずこの人は人の話を聞かんな!ていうか結婚相手が男って……やっぱりこの人(年齢的に)ボケてんじゃないのか!?
「叔母さん!私は結婚してません!この子は……訳あって預かることになったんですよ!」
「あら、そうなの?なら早く言ってよ〜勘違いしちゃったじゃない」
「言う暇くれなかったじゃないですか!」
「あっはっは、お喋りおばちゃんに隙を与えちゃダメよ」
あ〜めんどくせ。さっさと帰ってくれ(←失礼)
そして叔母さんの興味が結衣に移った
「お嬢ちゃん、お名前は?」
「あ、え、えっと……ゆ、結衣です」
相変わらず結衣は知らない人の前だと緊張で口が回らない。
「あら〜!結衣ちゃんっていうのね!可愛いわ〜さすが葵ちゃんの娘ね!」
叔母さんにそう言われると結衣の顔がボッと赤くなった。そして恥ずかしくなったのか俺の背中に顔を隠してしまった。
「あら〜隠れちゃって、可愛いわね〜」
「叔母さん、結衣と私は血は繋がってませんよ?」
「わかってるわよ〜血が繋がってると思うくらいに可愛いってことよ!」
叔母さんがそう言うと結衣に近づいた。当たり前だが結衣は体が縮こまっていく。
「結衣ちゃん、少しおばちゃんとお話ししない?」
「すみません、結衣は人見知りなので……」
「そうなの〜?じゃあお話は来年にしましょうか!あ、けどこれは渡さないとね!」
叔母さんはそう言うと封筒とお財布を取り出して封筒の中に数枚のお札を入れ始めた。
「結衣、顔を上げて叔母さんの方を見て」
「はい、お年玉。急だったから封筒だけど許してね?」
「あ、ありがとうございます……」
結衣はお年玉を受け取ると2階に上がっていった。お金をしまうのは大切だからな、良い心がけだ!
「結衣ちゃんのことちゃんとお世話するんよ」
「はい、任せてください」
「それじゃあおばちゃん達はもう行くわ、それじゃ」
叔母さんはそう言うと未空ちゃん達の分のお年玉を置いて帰っていった。うちの親戚たちは泊まっていかないからすぐお別れになるんだよなぁ。まああの人は騒がしいからすぐに帰っても良いんだけどね。
それからも沢山の親戚がやって来た。
それに結衣は毎回ガチガチに緊張していた。そして毎回結衣は親戚のおばちゃんおじちゃん、夫婦にもみくちゃにされていた。さらに驚いたことに結衣を見るたび毎回俺が結婚したと大騒ぎになる。そんなに俺が結婚するのが重大ニュースなの?
◇
「結衣お疲れ様〜」
俺はこたつでグダーっとしている結衣にジュースを渡す。今日はたくさんの人に会ったからな、疲れてるんだろうな。それにしてもびっくりしたのが結衣がいるって事を知らせてなかったのに全員が結衣にお年玉をくれてたって事なんだよね。しかもあげる額がみんな1万とかなんだよね、最初に来た叔母さんに至っては5万も入ってたからな。
「お姉ちゃん疲れた〜よしよしして〜」
「はいはい、結衣頑張ったね〜」
「えへへ〜」
結衣は完全に甘えモードに入っている。
「結衣ちゃん、未空お姉ちゃんも疲れたよ〜」
そこにずっと親戚の子供達に遊ばれていた未空ちゃんが現れた。未空ちゃんは中学生って事もありやってくる親戚の人達の子の遊び相手になっていたのだ。いや〜よく頑張ったと思う。
「未空ちゃん、はいお小遣い」
俺は疲れ切ってこたつにでろーんとしている未空ちゃんにお年玉を渡す。
「あ、ありがとうございます!」
う〜ん、さすが中学生。どんなに仲のいい人であっても目上の人には敬語を使う、よく出来てるな。そう思ってると袖がクイクイと引っ張られた。
「お姉ちゃん、結衣には無いの?」
「ふふっ結衣も欲しいの?」
「うん!」
う〜ん、ちゃんと結衣の分は用意してあるけど……そのまま渡すのも面白くないなぁ。ちょっと遊んじゃうか!
「いや〜ごめん!結衣の分は用意してなかったんだ」
「え……そんな……」
俺が用意してないと言ったら物凄く残念そうな声をしながら落ち込んじゃった。けど、落ち込んでる結衣も可愛いなぁ。
「結衣ちゃん、はい!お年玉!」
「え、未空お姉ちゃん……いいの?」
落ち込んでる結衣に自分のお年玉を渡す未空ちゃん……なんて良い子なんだ!
「結衣、お姉ちゃんからもお年玉あげる」
「えっ?結衣の分あったの?」
俺が結衣にお年玉を渡すと結衣は顔を丸くしていた。けどすぐに笑顔になってお年玉を受け取ると「ありがとう!」と言ってくれた。
「うん、結衣がどんな反応するか見たかったから無いって言っちゃった」
「も〜お姉ちゃんひどいよ!」
結衣はそう言うと俺の胸をポコポコと叩き始めた。ふふっ可愛いなぁ♡
「もうっ!今日はお姉ちゃんとは寝てあげないから!」
「ええっやだよ!結衣一緒に寝ようよ〜」
俺が結衣に手を伸ばすと結衣はスッと手を避けて未空ちゃんの方へ走っていき未空お姉ちゃんの後ろに隠れてしまった。
「やだよ〜。未空お姉ちゃん今日も一緒に寝よっ!」
「結衣ちゃ〜ん!今日も一緒だね!」
結衣に今日も一緒に寝よと言われた未空ちゃんは嬉しそうにしている。うぅ羨ましい!俺も結衣にあんな風に抱きついて欲しいよぉ!う〜意地悪なんてしなければ……今頃結衣のことを抱きしめられたのに!なんて事してくれたんだ、数分前の俺!
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