#60 結衣と未空
未空視点
初詣から帰ってきて私達は寝ることになった。お父さんとかお母さん、葵兄ちゃんはまだ起きてお酒とかを飲むらしい。子供の私たちは早く寝なさいってお父さんが言うから仕方なくだけどね。夢未とか結衣ちゃんはまだ小学生だけど私はもう中学生なんだよ!ちょっとくらいは起きてても良いと思うんだけだな〜。
けど葵兄ちゃんは違った。葵兄ちゃんは部屋で起きてれば良いって言ってくれてお菓子とかジュースを渡してくれたんだ!いや〜やっぱり子供の心がわかる大人は良いなぁ。
「結衣ちゃんお部屋でいっぱいお話ししようね!」
「うん!」
さっきからずっと結衣ちゃんが私のそばに居てくれるの!も〜可愛くて可愛くて……理性を失っちゃう所だったよ。
「結衣、未空ちゃんに迷惑かけちゃダメだよ」
「大丈夫だよお姉ちゃん!結衣未空お姉ちゃん大好きだもん!」
結衣ちゃんがそう言うと私に飛びついてきた。私はそれをなんとか受け止めるとそのままぎゅ〜っとした。
「未空ちゃんも結衣が鬱陶しくなったら素直に言って良いからね。結衣人に抱きついたりするの大好きだから」
「ふふっそこが可愛いじゃないですか!」
「そうなんだけどね。それじゃお休みなさい」
やっぱり葵兄ちゃんも結衣ちゃんの事が大好きなんだ。そうだよね!こんなにも可愛らしいんだから。私と結婚しても良いんだけどな〜法律的に無理だからなぁ、私が男の子だったら良かったのに!
「未空お姉ちゃん?早くお部屋行こ?」
結衣ちゃんのことを考えてると袖をクイクイと引っ張られた。
「あっごめんごめん考え事してた」
「結衣のこと考えてたの?」
「そうだよ〜♡」
「えへへ〜」
私が正直に言うと結衣ちゃんは顔を綻ばせた。この笑顔は……凶器だ、人を浄化させかねない。天に召されそうだ、けど……結衣ちゃんだったら構わないな。
◇
「結衣ちゃん葵兄ちゃんからお菓子とか貰ったんだけど食べる?それとももう寝ちゃう?」
「食べたい!」
私は部屋にある机に貰ったお菓子とジュースの入ったペットボトル、それと私のと結衣ちゃんの歯ブラシを置く。お菓子はチョコレートとかスナック菓子、飴とかグミがいっぱいある。けど……これ絶対二人分の量じゃないんだけど。
「結衣ちゃん、好きなだけ食べて良いからね」
「うん!」
私がそう言うと結衣ちゃんはクッキー生地にチョコが付いているキノコの形をしたお菓子の箱を開け始めた。結衣ちゃんはそっちの方が好きなんだ〜私はこっちの筍形の方が好きだな〜
「結衣ちゃんはそっちが好きなんだ〜お姉ちゃんはこっちの方が好きだな〜」
「え〜そうなの?そっちは手が汚れちゃうじゃん」
うっ女子だ、夢未とかクラスの人と同じことをいってくる。何でみんな「美味しい」より「汚したくない」を優先するんだろう。手にチョコが付いちゃったら舐めちゃえば良いじゃん。
それなのに、それを友達に言ったら「未空ちゃんはそんなんだから女の子なのに女の子じゃないって言われるんだよ」なんて言ってくるし!何、綺麗に食べないと女の子じゃ無いの!?
「けっ!私だって女の子じゃなくて良いし!」
「ヤダ!未空お姉ちゃんは女の子じゃなきゃヤダよ!」
「結衣ちゃん……」
自暴自棄になってそんな事を言うと結衣ちゃんがはっきりと否定してきた。
「未空お姉ちゃんはこんなに可愛いくて優しいのに……結衣は未空お姉ちゃんが女の子だから好きなの!」
「結衣ちゃ〜ん!」
う〜こんな事言ってくれたのは結衣ちゃんが初めてだよ〜!
「お姉ちゃんはず〜っと結衣ちゃんの味方だからね!いつでも頼って良いからね!」
「えへへ〜じゃあキスしよっ!」
「へっ!?ゆ、結衣ちゃん!?」
き、きき、キス!?え……何、最近は小学生でもうキスとかしたりするの?うぅ、最近の子達は凄いなぁ進んでるな〜。私なんてちっちゃい頃に夢未とふざけてしたことしか無いのに。
「この前はお姉ちゃんが寝てる時にしたんだけど、今度はちゃんと起きてる時にしたいから……練習させてっ!」
な、なるほど結衣ちゃんの本番のための練習か……寝てる間にキスをする、か。考えもしなかったな。ていうか、葵兄ちゃん、大好きな結衣ちゃんにキスされたってこと気づいてるのかな?
「未空お姉ちゃん良いでしょ?」
「う、うううん。いい、良いよ」
「じゃあ目瞑ってて」
私は結衣ちゃんに言われた通りに目を閉じた。そしたら「開けちゃダメだからね」と釘を刺すように言われてしまった。これじゃあキスしてる時の可愛い結衣ちゃんの顔が見えないじゃん!
「じゃあ……するよ」
「う…うん」
結衣ちゃんが言うと唇に柔らかい感触がしてきた。
「ちょっ……ちょっとストップ!」
驚いた私は急いで結衣ちゃんから離れて結衣ちゃんの方を見る。結衣ちゃんはポカーンとこっちを見つめていた。
「未空お姉ちゃん?どうしたの?」
「ゆ、結衣ちゃん!キスって口にするの!?」
「?キスって口にするんじゃないの?」
結衣ちゃんは「当たり前だよね?」と言わんばかりの口調で言ってくる。私が言いたいのはそういう事じゃないの!これは何も分かってなさそうだからちゃんとお姉ちゃんとして正しい事を教えてあげねば。
「良い結衣ちゃん、口でキスをするのは本当に好きな人同士でするんだよ!私なんかに……その……初めてを使っちゃって良いの!?」
「結衣は未空お姉ちゃんのこと本当に好きだよ?」
結衣ちゃんは大好きだよと言わんばかりの笑顔をこちらに向けてくる。うぅ眩しい。
「うう〜嬉しいけど!そういう事じゃないの!!」
「え〜結衣分かんないよ」
「口にキスするのはこの人と結婚っていう人とする事なの。だから結衣ちゃんは……お姉ちゃんとなら口でしても良いんだろうけど……お姉ちゃんとはしちゃダメだからね!」
「……わかった!じゃあ続きしよ!」
わかったのかな〜。まぁ結衣ちゃんは賢いし、大丈夫か。
「はい、今度こそ良いよ」
もう一度目を閉じる。今度はどこにするのかなぁ?そんな事を考えていると……唇に餅のような柔らかい感触が伝わってきた。
「結衣ちゃん!わかってない!!」
「えへへ〜」
私がそう言うと結衣ちゃんはニコッと笑っていた。まったく、絶対反省してないでしょこれ。
「もう!そんな事するならもう寝るよ!」
「わかった!」
結衣ちゃんはそう言うと歯を磨き始めた。はぁ、私も歯磨こ。
「ん?結衣ちゃんどうしたの?」
私が歯を磨いていると結衣ちゃんが歯ブラシを咥えたまま私の前に座り出した。
「……磨いて?」
わっ!まさか結衣ちゃんから磨いてって言われるなんて……感激だよ〜。前は夢未に見せつけるために磨いちゃったけど……結衣ちゃんはどう思ってたか分かんなかったから、言いづらかったんだよね。
「うん、良いよ!ほら、おいで」
私は前みたいに膝の上をポンポンと叩く。すると結衣ちゃんは嬉しそうにしながら膝に頭を乗せてきてくれた。う〜ん!可愛い!!
「結衣ちゃんはお姉ちゃんに磨いてもらうのは嬉しい?」
私がそう聞くと結衣ちゃんはコクンと頷いた。
「ん!」
「そう、良かった。これからも磨いてあげるからね!」
◇
「結衣ちゃん、くっ付いて寝よ」
「うん!」
私はベッドの半分くらいを開けてそこに結衣ちゃんを呼ぶ。すると、結衣ちゃんはすぐにベッドに来てくれた。結衣ちゃんがベッドに入った事を確認して布団をかけると結衣ちゃんは私にくっ付いてきてくれた。
「未空お姉ちゃん、あったかいね」
「そうだね、お姉ちゃんもあったかいよ」
私がそう言うと結衣ちゃんはこっちを向いた。
「未空お姉ちゃん、ぎゅっとしていい?」
「良いよ、おいで」
そう言うと結衣ちゃんは私の事をぎゅ〜っと抱き締めてきた。結衣ちゃんは「ふぁ〜」と言うとこっちを向いてきた。
「未空お姉ちゃん良い匂いする!」
「結衣ちゃんもね」
私がそう言うと結衣ちゃんはまた顔を胸に戻した。
「未空お姉ちゃんこのまま寝ていい?」
「うん、おやすみ結衣ちゃん」
「おやすみ〜」
結衣ちゃんはそう言うと目を閉じ始めた。しばらくすると「すぅ〜」という可愛らしい寝息が聞こえてきた。私はそっと結衣ちゃんのほっぺを触って眠っている事を確認して結衣ちゃんのほっぺにキスをした。
「ふふっさっきのお返しだよ、結衣ちゃん」
そして私も眠りについた。
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