#38 お菓子作り ガレット・デ・ロワ編
お昼を食べ終わり俺は午前中に約束していた未空ちゃんとのお菓子作りをする事になった。今回は本人からの希望でガレット・デ・ロワというフランスの伝統のお菓子を作る事になった。なんかの本で出てきて作ってみたくなったらしい。
そしてお菓子作りが始まった。今回作るのは俺も作った事がなかったからレシピを見ながらの作業になる。まあ俺は指示だけして実際に作るのは未空ちゃんなんだけどね。
「え〜っとまずクレームダマンドを作るためにバターを混ぜてクリーム状にするらしい」
「わかった!」
そして未空ちゃんはバターを混ぜ始めた。最初は固そうだったけどだんだん柔らかくなっていっているから、それとも筋肉があったまってきたからかなのか、だんだん混ぜるスピードが上がってきた。溢さないか心配だ。
「葵兄ちゃんできたよ!」
そして混ぜ始めること5分やっと画像くらいのクリーム状になった。
そしたら次は……
「次は砂糖、卵、アーモンドプードルを順番に入れて混ぜる。そこにラム酒を入れるらしい」
「わかった!」
「未空ちゃんは休んでな、材料は俺が用意するから」
俺はそう言って冷蔵庫の中を漁る。
ラム酒ってあったかな……おっあったあった。よかった〜。アーモンドプードルってアーモンドパウダーだよな?まずいな〜ちょうど切らしてたか。しょうがない、作るか!
俺はアーモンドを取り出して茹でる。茹で終わったら薄皮を剥きトースターにぶち込む、これで時短出来るでしょたぶん。アーモンドを乾燥させてる間に卵とかは混ぜちゃって良いかな。
「未空ちゃ〜んそしたらさっき混ぜたものに砂糖と卵あとラム酒を分量通り入れて混ぜておいて〜」
「は〜い!」
そして未空ちゃんが材料を混ぜ始めた。この間に俺は……何もないなうん!
そしてトースターからアーモンドを取り出す。ちょっとやり過ぎて焦げてるけど……まあ大丈夫でしょ!そのままアーモンドを粉状になるまで砕く。う〜ん今度フードプロセッサー買ってこよ、手動はきついわ。
「未空ちゃん混ぜ終わったらこれも入れてね」
「これ何?」
「これはアーモンドパウダーだよ」
「ふ〜ん」
◆
「葵兄ちゃん終わったよ」
「お〜お疲れ様そしたら……」
俺が次の指示をしようとすると
「ちょっ!休憩!休憩しよ!」
と言ってきた。まったく、最近の小娘は混ぜるだけで疲れるのか、だったらまず体力作りをしないといけないじゃないか。
「ん〜もう少しで休憩できるからガンバ!で次は今作ったやつをパイシートに乗せる。大体直径12cmくらいかな」
「は、はい」
未空ちゃんも諦めたようだ。少し可哀想だけどお菓子作りは時間との勝負だからな、試練だと思って耐えてくれ、そのかわり作り終わった後のお菓子は格別に美味しいからな!
「はい、できたよ」
「よしそしたらその周りに卵白を塗ってくれ」
俺がそいうとキッチンの上を探し始めた、けどいくら経っても見つからない。そりゃ準備してないからな。一回くらいは黄身と卵白を分ける練習もさせた方がいいだろう。
「卵白ってどこ?」
「卵から黄身と卵白を分けるんだよ、やってみよっか!」
俺は未空ちゃんにお手本を見せる。すると未空ちゃんは一回見ただけど綺麗に分ける事ができていた、初めてだと卵の殻が入っちゃったり、黄身が割れて混ざっちゃったりするけど未空ちゃんはそんな事にならないで綺麗に分けていた。
「葵兄ちゃん出来た!」
「お〜凄いぞ!あとは塗るだけだな」
「うん!」
そして俺はその間にもう一枚パイシートを用意する。
「出来たよ?」
「そしたら次はもう一枚のシートを上にかぶせて……破かないように指で押しながら密着させて」
「………出来た!」
よしちゃんとくっついてるな。そしたら休憩だな。
「よし、あとはこれを……」
「焼くの?」
「いや、その前に冷蔵庫で15分くらい冷やすらしい」
「へ〜そうなんだ〜」
「その間は休憩だな」
「やったー!」
ん〜明日のおやつも作っちゃおうかな〜指示出してるだけで暇だったし。あ、あとオーブンを予熱しておかないとな。
〈15分後〉
「葵兄ちゃんもう出しても良い?」
「ああ良いぞ」
俺がお菓子作りに夢中になっていると未空ちゃんが話しかけてきた。
「何作ってたの?」
「ん?あ〜明日のおやつだよ」
「結衣ちゃんは毎日葵兄ちゃんの美味しいおやつが食べれるのか……羨ましいなぁ」
「ん?なんか言ったか?」
「いや何でもない!次は何するの?」
「次は……さっき使わなかった卵黄を塗るんだ」
「え〜また塗るのか〜」
「そしたら楽しい作業が待ってるから頑張りな〜」
そう、この後には楽しい作業でもあるけど集中力が必要なある作業が待っているのだ。これはこのお菓子を美味しく見せるためにすごく大切な作業なのだ。
「はい出来たよ」
「よしそれじゃあ楽しい地獄の作業……模様を描くぞ!」
俺はそう言って未空ちゃんに模様を描いた紙を渡す。いや〜頑張ったよ、この模様描くのすごくめんどくさかったわ。
「え…これどうやるの?」
「ナイフで生地を破らないように〜こうするんだよ」
俺は少しだけナイフで模様を描く。いや〜緊張する。
「これ描けたら言ってね〜俺お菓子作ってるから〜」
「が、頑張る…」
10分後……
「で、出来た!」
そんな声が隣から聞こえてきた。
「葵兄ちゃん出来たよ!」
そう言って俺に模様を書いたのを見せてくる。
「お〜凄いな!めっちゃ綺麗にできてるじゃん!」
「えへへ〜すごく頑張ったんだ〜!テスト期間中の勉強より集中してたかも!」
それはダメだろ。まったく、学生は勉強が仕事なんだから勉強にちゃんと集中しないと!
「そしたら真ん中に空気穴を開けてくれ、そしたらあとは焼くだけだ!」
「お〜!」
◇
〈チーン〉
おっ焼き上がったか。
「未空ちゃ〜ん焼きあがったよ〜」
リビングで結衣達の勉強を見ていた未空ちゃんを呼ぶ。
「ほら、開けてみな」
「うん!」
そして未空ちゃんがオーブンを開ける。そうすると開けた途端に甘い匂いが流れてきた。いや〜もう美味しそうだ!
「火傷しないようにな」
オーブンからガレット・デ・ロワを取り出す。そしたら最後の工程だ!
「そしたらこれにシロップを塗って完成だよ」
「何でシロップ塗るの?」
「そうすると艶が出るんだ」
「へ〜」
そしてついにガレット・デ・ロワが完成した!
やっぱりお菓子作りの醍醐味は作りたてのお菓子を食べることだよな!さっそく用意しなきゃな!
俺は4人分のお皿とフォーク、ナイフを用意する。そしてそれをテーブルに運ぶ。
「結衣、夢未ちゃんおやつだよ」
「今日は私が作ったんだよ!」
そう言うと二人はテーブルの上を片付け始めた。
「お姉ちゃん上手にできたの?」
「もっちろーん!だってお姉ちゃんだもん♪」
そう言う未空ちゃんに夢未ちゃんは
「……化学兵器じゃん」
とボソリと呟いた。未空ちゃん、いったいどんな物を作ったんだ。
「お、お父さん!」
ん?お父さん?お父さんなんていたか?
………!?
「俺のこと?」
「うん!」
ゆ、結衣が、俺のことを、お父さんって……ま、なんて言われようがどうでも良いか。早く食べてみたいな〜
「…葵お兄さん今までなんて呼ばれてたんですか?」
俺たちのことを見ていた夢未ちゃんからふと聞かれた。
「ん?お姉ちゃんって呼ばれてたよ」
「え…なんで」
「俺の外出時の服装がほぼ女だから?あと声も男にしては高いし、髪も長いし」
「あ〜けど、おっぱいないじゃん」
「ちょっ!」
「あ〜あとマ……」
「言わせねぇよ!?」
危ない危ない、未空ちゃんが禁句ワードをぶっ放す前に未空ちゃんの口を塞ぐ。結衣はまだ小学生なんだからそういうのは良くないだろ!
「なんて言おうとしたのー?」
ほらー!結衣が興味持っちゃったじゃん!まだ早いよー
「結衣ちゃんはまだ知らなくて良いんだよ」
夢未ちゃんがフォローを入れる。……ん?てことは夢未ちゃんも知ってるって事か?……最近の若者は凄いなぁ…
「ほら!冷めちゃうから早く食べるぞ!」
無理矢理にでも話を変えないと大変なことになりそうだからな!
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