#3 買い物
部屋に戻ると結衣ちゃんは準備を終わらせていた。女の子だから準備に時間がかかるのかなって思ってたけどそうじゃないんだな。それに荷物もなんか少ないような気がする、子供ってこのくらいなのかな?
「結衣ちゃん、準備できた?」
「うん…それとこれも持っていって良い?」
そう言って俺に見せてきたのは封印していた俺のイラスト(自作)集だった。…どこからそれを見つけてきたんだ、大人じゃ絶対に見つけられないところに置いたのに……結衣ちゃん子供だから見つけられるか。
「う、うん…イイヨー」
「ほんと?ありがとう!これに書いてある女の子すごい可愛いの」
まあ喜んでくれてるならいい、か。
「結衣ちゃん、荷物が少ないけど下着とか服とかも持った?」
あまりにも荷物が少ないから念のため聞いておく。
「うん、ちゃんと全部持ったよ」
「中身見ても大丈夫?」
念のためちょっと確認するか。
そう思って結衣ちゃんが持っていたリュックの中を見る。するとそこには一組の下着と1着の服と靴下しか無かった。…なんで1枚しかないの?結衣ちゃんの親はこれしか買ってあげなかったの!?これは予定変更だな。
「お姉さん?」
「結衣ちゃん、今から買い物に行くよ。」
俺は結衣ちゃんを抱え込んで急いで車に向かう。
「お姉さん、恥ずかしいよ。それにお姉さんーー」
「ごめんね、ちょっとだけだから我慢して!姉ちゃんじゃーねー!」
何か言おうとしていた結衣ちゃんを遮って姉ちゃんたちに挨拶をする。
「ふぅ、ごめんね急に持ち上げちゃって。痛くなかった?」
「う、うん。…ところでお姉さんとお兄さんどっち?」
うん、どっち?
「どういう事?」
「さっき抱っこされた時おっ◯いが無かったから」
やべ、急いでたから全く考えてなかった。まあ隠す必要もないしそのうち気付かれるからもう言っちゃうか。
「俺はお兄さんだよ。全然そう見えないでしょ」
俺のカミングアウトアウトに結衣ちゃんは口を開けて固まっていた。今この空間に道具があればすぐにでもデッサンをしたんだけどな〜持ってくればよかったよ。
「か」
「か?」
「可愛い…なんか負けたような気がする」
よかった。気持ち悪いって言われたら多分ショック死してたわ。
「おに…おね……あおい!」
まさかの呼び捨て!まあ小さい子に呼び捨てにされるのもいいな。まあ呼び方はなんでも良いって言っちゃたしな。
「う〜ん、けどやっぱりお姉ちゃんが良い!」
お、お姉ちゃん……ハッ。危ない危ない、危うく天国に召されるところだった。これが姉ちゃんが言ってた小さい子の最強な微笑みか、確かにひとたまりもないな。気をつけなければ。
「いや?」
「嫌じゃないよ。けど人前ではお母さんって呼んでね」
「わかった!」
ちなみになぜ母親になるかというと俺は戸籍が女性として記録されてる。俺は高校生までは戸籍上は男だった、けど姉ちゃんがふざけて性別変更したらそれが受理されてしまい戸籍上は女になってしまった。
「まずはお買い物に行こっか、流石に服とか下着が少なすぎるし。あとお昼ご飯も食べよっか、何が食べたい?」
「お姉ちゃんの手作りが良い!」
くそ、そう来たか。はっきり言って俺はオシャレな料理は出来ない、できるのはよくある一般的な料理だけだ。これは結衣ちゃんのために勉強した方がいいかな?
「わかったわ。お買い物が終わったらすぐに家に帰ろうか」
取り敢えず家の近くのショッピングセンターで足りない物色々と調達しないとな。
◇
まずは服とかを買わないとな。
「結衣ちゃん、着いたよ。行こっか」
「うん!」
服とかは本人の着たい物が1番だから本人に選んでもらう。もちろん着て欲しい物もいっぱい買うけどね。
「結衣ちゃん、好きな服持ってきて良いよ」
「ほんとっ?」
「うん」
そう言うと結衣ちゃんは走り去ってしまった。こっちも新しい服を探すか〜、流石に子供がいるのにジャージだけはまずいよね
お店に入ってから10分ほど経った頃、結衣ちゃん用の服を選んでいると後ろから服を引っ張られた。
「お姉ちゃん、服選んだよ?」
後ろを振り返るとカゴに全く女の子っぽくない服が入れられていた。…もっと女の子っぽい可愛い服を入れてくれても良いのにな〜。もしかして自分に合った服が分かんないから?
「これだけで良いの?他に帽子とかアクセサリはいらないの?」
「え…帽子とかも選んでいいの?」
「いいんよ、だってもう私達は家族なんだよ。娘のためにお金を出すのは当たり前の事なんだよ?ほら、一緒に見に行こ!」
こんな可愛い子のためなら俺はいくらでもお金を出せる。
「うん!」
けどここだとあんまり可愛いのがないな〜。やっぱりちゃんとしたお店で買った方がいいよね!
「ここにあんまり良いの無いからちゃんとしたお店に行こっか。お会計してくるからちょっと待ってて」
「すみませーんお会計お願いしま〜す」
「はーい、少しお待ちください!…お待たせしました。これで全てですか?」
「はい」
「それでは12点で合計で28,000円です」
…28,000円?予想以上に高くなちゃったな。まあこれから楽しく過ごすための投資だし問題ないよね、うん!
会計を終えて戻って次は小物屋に向かった。
さっきのでお金使いすぎちゃったからこっちは少なめにしないとな〜
「結衣ちゃん、これで好きなの買ってきな」
結衣ちゃんに5千円を渡す、学校とかには可愛いの着けてって欲しいからね。そしてその間に俺は休む!久しぶりに運動したから疲れてきた。
「お姉ちゃんも一緒に行こ!」
……マジか。いや、けどここで俺が行かなかったら結衣ちゃんが悲しんじゃう。…けど疲れた。あぁ神よ、私はどちらを優先させればいいのだ。
「娘を優先させろバカ親」
急に背後から暴言を吐かれた。なんで見ず知らずの奴にそんな事言われないといけないのよ!言い返してやる!後ろを振り返るとそこには
「ね、姉ちゃん」
そこには実家にいるはずの姉が立っていた。え、なんでいるの?てかどうやってここに辿り着いたの?
「全く、スマホに位置情報を確かめるアプリ入れといてよかったわ〜。ってそんな事は置いといて一緒に行ってあげなさいよ!まさか疲れたなんて思ってないわよね?」
勝手に人のスマホにアプリ入れるなよ、だからさっき電源が入ってたのか。これだからBBAは。
「誰がババアですって?」
こいつ心読めるのかよ、妖怪ババアじゃないか。ここにいると俺の人生に幕を降ろされそうだから行くか。
「結衣ちゃん行こっか!」
「うん!」
なんとか妖怪から逃げる事に成功した。よし、妖怪のことは忘れて結衣ちゃんと楽しむか!
「結衣ちゃんこれなんてどう?」
最近小学生の子がよく着けているヘアカチューシャを渡す。これは可愛いだろうな〜
「う〜ん、あんまりこういうのは好きじゃないな〜」
「そうだったの、ごめんね」
そういえば結衣ちゃんはどういうのが好きなんだろ?あんまり聞いてなかったな。
「お姉ちゃんこれは?」
そう言った結衣ちゃんは宝石が付けられた二組のネックレスだった。流石にネックレスを学校に着けていったらヤバい…か?
「お姉ちゃんとお出かけする時にお揃いで着けたい!」
あ…俺結衣ちゃんが学校に行く時のことしか考えてなかった。けど結衣ちゃんは俺と一緒に出かける事を考えてくれてたんだ。
「いいじゃない、それにしましょ!他にはないの?」
「う〜ん今はないかなぁ」
「それじゃあこれはお姉ちゃんが出してあげるから、それはお小遣いに取っておきなさい。結衣ちゃんはお姉ちゃんのところに行ってまってて」
「わかった!」
俺と一緒にか、結衣ちゃんと暮らすようになったらそういう事も増えるのかな?
「お待たせ〜」
戻ると姉ちゃんと結衣ちゃんが楽しそうに話をしていた。いいなぁ
「お姉ちゃん!」
俺を見つけるとすぐにこっちに来て抱きついてきた。
「結衣ったらずっと葵のことを話してたのよ。あんたどんな事やってあげたの?」
俺は特に何にもしてないんだけどな。
「まあそんな事は置いといてさっさと残りの買い物を済まして帰るわよ。やらなきゃいけない事がいっぱいあるわよ」
うっ、仕事がいっぱい。まあ姉ちゃんがいれば何とかなるか。それに買い物も女の子に何を買えば良いかわからなかったしちょうど良いか。
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