#33
午前の競技が終わってお昼休憩になった。俺は結衣のダンスを見て号泣していた。
「お姉ちゃーん!」
お昼休憩になったから結衣と楓ちゃんが走ってきた。そして結衣は俺にダイブしてくる。
「見て見て!金メダル!」
そう言いながら結衣は100メートル走でとった金メダルを見せてくる。良いなぁ、俺こういうの一回も取った時ないからな〜
「結衣凄かったなー!それにダンスもすごく可愛かったぞ」
「えへへ〜ちょっと恥ずかしいなぁ〜」
そう言って顔を赤らめる結衣。
〈ぐ〜〜〉
「「……」」
結衣からお腹の音が聞こえてきた。
「ははっお腹すいたよな。早くご飯にしよっか」
「む〜」
結衣は恥ずかしそうにしている。
俺は持ってきたお弁当箱を取り出して並べる。今回はめっちゃ頑張ったからな、それに結衣も手伝ってくれたし、きっといつも以上に美味しいだろうな!
「わ〜!美味しそう!お姉ちゃん食べていい!?」
「ああいいぞ。その前に手を拭いからな」
俺はそう言って持ってきていたおしぼりを結衣に渡す。結衣はおしぼりを受け取って手を拭き始めた。俺はその間にお皿とかコップとかを用意する。
「いただきます!」
結衣は最初に春巻きを食べ始めた。やっぱり最初は自分が作ったやつ食べたいよな。
「どう、自分で作ったのは美味しい?」
「うん!」
「結衣ちゃん自分で作ったの?」
隣でお昼ご飯を食べていた紅葉さんが聞いてきた。
「はい!お姉ちゃんのお手伝いしたくて」
「だって楓〜結衣ちゃんはお弁当作り手伝ってたのに、楓は何してたのかな〜?」
紅葉さんはそう言って楓ちゃんに圧をかける
「え〜じゃあ来年手伝うよ〜」
「楓?それ去年も言ってたわよ」
「……」
楓ちゃん前科有りだったわ。
◇
お昼ご飯を食べ終えて結衣たちは戻って行った。結衣は「最初に借り物競争あるから」って言ってあまりご飯を食べなかった。けど楓ちゃんはめっちゃ食べてた。
運動会が再開した。最初に赤組と白組の点数差が発表された。午前中は赤組が勝っていたけど午後にはリレーもあるし、結衣は出ないけど騎馬戦もある。だからまだまだわからない。けどこのままいけば結衣達の赤組が勝ちそうだ。
そして競技が再開した。最初は言った通り借り物競走だった、結衣は1番最後らしい。借り物競争って俺らの時もあったけど……昔とは変わってるのかな?
そんな事を考えてると競技が始まった。子供たちは少し走って置いてあるカードを拾う、そこに書いてある物や人を借りてゴールを目指す。
今最初の組がスタートした……おい誰だ、カードに自転車って書いたやつ、明らかにハズレじゃねえか。(駐輪場は正門付近にある。ちなみに正門は校庭の反対側にある)かわいそうに、今自転車のカードを引いたであろう子が校庭を全力疾走で駆けて行った。
その子が見えなくなる頃にはもう1位でゴールしてる人がいた。そして二人以外はゴールをした。一人は自転車の子、何もう一人はどうしたって?それはな〜その子が引いたカードが……下駄だったんだ。
……誰が履いてるんだ!?この時代に!!いやもしかしたらおじさんとかが履いてるかもしれないけど……いないだろ。誰がこれ作ったんだよ。
そして自転者の子がゴールした時点で1組目が終わった。
それからも「これ絶対無理だろ」っていうカードが時々入っていて会場が大盛り上がりする。あまりにも見つからないと放送委員会の手助けが入ってアナウンスしてくれる。
1番びっくりしたのは…あれだな、“1億円”だったな。1億円なんて持ってくる奴いないだろ、って全員が思ったよ。けどいたんだ、1億円持ってきてた奴が。ある企業の社長のお爺ちゃんがなぜか持ってきていたのだ。あれには会場が騒ついたわ。
そして結衣の番が来た。いや〜結衣は何を引くのかな?
〈パーン!〉
始まった!一番最初に結衣がカードを引く。そしてカードを引いた結衣が固まった、どうしたの!結衣!!なんかヤバい物だったの?そう思ってると結衣はこっちに向かって走ってきた。そして俺たちの所まで来て、
「お姉ちゃん来て!!」
「へっ!?」
そう言って俺の手を差し出してきた。俺は意味がわからなかったけど取り敢えず結衣の手を取るそしたら
「お姉ちゃん行くよ!」
そう言って走り出した。そう言われた瞬間俺の脳内CPUがフル回転して今の状況が整理された。きっとおそらく結衣は“家族”のカードを引いたんだ、だから俺のところに来たんだ!これまでにも何回か家族を連れてきた子がいたからな!いやー完璧だろ!!
そして結衣に手を引かれながらゴールを目指す。幸いまだゴールできてる子はいないこれなら1位行けるかも!?
ゴールまであとちょっと、けどここで……結衣が転んでしまった!?
「結衣大丈夫!?」
俺は結衣にそう聞くが膝からは血が出ていた。
「お姉ちゃん早く行こ!1位になれるよ!!」
そう言って走り出そうとするけど結衣は足を動かせていなかった。やっぱり痛いんだ……後ろからは子供たちが来てる……こうなったら!
「ひゃっ!?お、お姉ちゃん!?」
「結衣ごめん、恥ずかしいと思うけど我慢して!」
俺はそう言って結衣をお姫様抱っこする。これが結衣と1位になるのに1番良かったからな。そして俺は今までで一番早く走った、そして俺は1位でゴールした。俺がゴールした瞬間に会場から拍手が鳴り響いた。なんかすごく恥ずかしい。
ていうか、俺があんなに早く走れるとは…子供のためだったら普段以上の力が出るってほんとだったんだな。
俺たちがゴールしたら先生方が寄ってきて結衣は保健室に運ばれていった。俺も一応保護者ということで同行する事になった。結衣は保健室に運ばれて膝の怪我を処置された。
「結衣大丈夫?痛くない?」
「うん!もうだいじょぶだよ!」
そう言って結衣はぴょんぴょんとジャンプする。
「もう大丈夫そうね。それじゃあ結衣ちゃん戻っても良いわよ。お母様も戻って大丈夫です」
そう言われて俺たちは保健室を出た。
そして保健室を出ると楓ちゃんが出口で待っていた。
「結衣ちゃんだいじょうぶ?」
「うん、だいじょうぶ」
「それじゃあ戻ろ!」
「うん!じゃあねお姉ちゃん!」
そして結衣は楓ちゃんと戻っていった。
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