#25 旅行②
お昼ご飯を食べ車で走ること約1時間、目当ての大規模ショッピングモールに着いた。ここは4月に新しく出来たばかりで半年経った今でも多くの人で賑わっている。
ここでは遠足用の服や帽子、あとは日用品や雑貨を買いに来た。
ここには沢山の店が入っており、様々な店や娯楽施設が充実している。例えば映画館やゲームセンター、大人気チェーン店が数多く入っている。
俺たちは最初に服を見ることになった。
「二人とも好きに見に行って良いよ。そのかわりこのお店からは出ない事、知らない人について行かない事!これをちゃんと守るんだよ」
「「はーい!」」
二人がとても良い返事をする。
「結衣、これ持っていきな。お守り」
防犯面を考えて昨日作っておいたお守り(GPS内蔵)を渡す。二人とも美少女だからな、誘拐に合うかもしれないから当然の対策だよな!……まあ今の時代誘拐なんて起きないと思うけどな、どっかの国じゃあるまいし。ただの保険だ。
「わ〜ありがとう!お姉ちゃん!」
「楽しんでな〜」
そう言うと二人で服を見始めた。
さてと、俺たちも服見るか〜
「それじゃあ私たちも行きましょうか」
「そうですね」
ちなみにこの旅行は俺と紅葉さんとの初デートでもある。元々二人だけで出かけようと話し合いはしていたんだけど子供だけを残して行く訳には行かないからずっと後回しになっていた。
けど先日紅葉さんが旅行券を当ててちょうどいいと思い決行になった。旅行なら子供たちと一緒に行けるし、今回みたいに子供だけでも楽しめる場所があるから俺たち大人も安心できる。
いや〜それにしてもデートなんて高校生以来だなぁ。あの時は見た目だけ“女”だったからよく嫉妬の目があったな〜まあ仲は結構良かったから男子たちからよく橋渡しとか頼まれたなぁ、懐かしい。
そういえば仲の良かった友達(女子)から
「女子より女子すんな」
なんて言われたなー
「葵さん、まずどこ見ます?」
おっと、いけないいけない。今日は紅葉さんがいるから昔の事を思い出してるのはダメだな。
「ん〜まずコートが見たいです」
「それじゃあ行きましょうか♪」
そしてデートが始まった。
◇
「楽しかったですね」
「はい!それにお金出して頂いてありがとうございます♪」
デートを始めて一時間が経った。必要な物は買い終わって今は結衣達との待ち合わせ場所で休憩をしている。今回はコート、手袋、靴など色々買った。もちろんお金は全部俺が払った。デートで男がお金を払うのは当たり前だよな〜。
それにしても二人とも遅いなぁ、もう約束の時間を結構過ぎてるんだけどな。楽しくなちゃって時間を忘れてるのかな。
「楓達遅いですね」
あまりにも来ないため紅葉さんも心配そうに言う。
「そうですね。少し前にGPSを見た時は近くに居たはずなんですけど……って…え……」
「葵さん?どうかしましたか?」
スマホの画面を見て硬直する俺を見て、紅葉さんは俺のスマホの画面を覗き込む。
「え……」
俺と同じく紅葉さんも固まる。
それもそうだ。結衣の現在位置はこの場所から遠く離れた場所にあったのだ。
これが意味するのは……誘拐…か。
それに気付いた紅葉さんが気を取り乱す。
「どうしましょう!楓が!!」
「紅葉さん、今すぐ警察に電話してください。あと車の鍵も貸して頂けますか?」
俺は落ち着いて指示を出す。
「わかりました!」
紅葉さんが俺に鍵を渡して直ぐに電話をし始めた。
「紅葉さん、これ俺のスペアです。警察が到着したらすぐに追ってください」
「葵さんは?」
「追いかけます!」
俺はスマホのスペアにGPSの画面を出してすぐに渡す。そしてすぐに車に走った。紅葉さんが何か言っていたような気がしたが、結衣が誘拐された怒りで聞こえなかった。
「結衣!絶対に助けてやるからな!!」
車にエンジンをかけると法定速度ギリギリの速度で車を飛ばす。
幸いまだGPSは動き続けている。まだ着いていないようだ。
絶対に許さねぇからなぁ!!!
◇
【結衣視点】
私達は今目隠しと手足を縛られて車に乗せられてる。
楓ちゃんと洋服とかを見てたら急に3人くらいの男の人達が来て首にナイフをあてられた。
走って逃げようと思ったけど運動が苦手な私が走っても逃げられる訳がない。そうなると選択肢は1つだった。
「ねぇ君たち名前なんて言うの?」
「ゆ、結衣です」「…楓です」
「へぇ、結衣ちゃんに楓ちゃんか〜。君達は幸せだよ!」
急に男の人は私達を幸運だと言い始めた。幸せになれる?
「君達はこれから海外のお金持ちの家に行くんだ。良かったじゃん、これからは貧乏な暮らしをしなくても済むよ?」
親と離れ離れになるのが幸せ?何を言ってるの。
「お母さんと離れるなんてイヤ!下ろして!」
楓ちゃんがそう言うと隣から〈パァン〉という痛そうな音が聞こえてきた。
「うるせぇなガキが。お前らはこれから金持ちの物になんだよ!怪我させちまったら価値が下がっちまうじゃねえか!静かに大人しくしてろ」
「うぅぅ……」
楓ちゃんが泣き出してしまった。けど、私は何にもしてあげれない。ごめん……
「ったく、うるせえなぁ。宮下早くしろ!」
「は、はい!」
少しして車が止まった。
「おい、降りろ」
言われた通りに降りるとそのまま階段を登らされ部屋に入れられた。
「ここで大人しくしてろ」
そう言うと男達がどこかに行った。
「楓ちゃん、だいじょうぶ?」
「う、うん」
「だいじょうぶ、お姉ちゃん達が絶対助けに来てくれるから」
自分にも言い聞かせるように言う。じゃないと……泣きそうになっちゃうから。
◇
車で走り続けること30分GPSが止まった建物の前まで着いた。着いた場所は町外れの廃ビルだった。
「ここか……絶対●す」
バッグから自撮り棒を取り出す。コ●ン君によると自撮り棒も十分な凶器になるらしい。これで結衣を攫った塵供と鉢合わせても何とかなる、いや何とかする。
この建物は4階建てらしい。アニメとかだと大抵最上階に居るはず。
気配を消して階段を登っていると数人の男の話し声が聞こえてきた。
「……それにしても良い拾い物したよな、あんなガキだけで歩いてるなんてな!」
「ほんとほんと、俺たちはノーリスクで大金持ちになれるなんてな」
こいつら……待て、落ち着け。今は結衣達を保護するのが先だ。今は3階、ここに結衣たちのいる感じはしない、なら4階にいるのか?
ならこっそり上がっていけば……〈カツン〉………やったわこれ。
「誰だ!!」
……これは覚悟を決めるしかないな。
「おい、木下お前見に行ってこい」
「え〜しゃあねえな〜」
お、一人ずつ来てくれんのは助かる。
俺はドアのすぐそばに身を屈める。
そして塵の一人がドアを開け体を出した瞬間に鳩尾を殴る。そしてそいつの頭が下がったところに頚椎を目掛けて自撮り棒を振りかざす。
「うっ…」
塵は呻き声を上げて倒れる。
「おい、木下!何やってやがる」
先程この塵に指示を出した男がこっちに向かってくる。こいつら馬鹿だろ。
この塵も同じように殴り倒す。
……あとは一人か。
「お、お前、よくも兄貴達を……」
……下っ端か。
「おい糞ガキ。お前らが誘拐した子はどこだ?言わなかったら……わかるよな?」
自撮り棒を振りかざしながら言う。すると塵は完全に震え上がっていてすぐに吐いた。
「う、上にいます!だから、い、命だけは!」
あ?俺がこの塵どもを殺したら俺が犯罪者になっちまうじゃねえか。こいつらには気絶して貰っただけだ。
「そうか、なら許してやる」
だがここはあえて後ろを向き油断させる。こうなったらあの塵は…
「はっ油断したなぁ!」
まぁ襲い掛かってくるよな。わかってるよ〜
足音から大体の位置を予測して振り向きざまに下顎に遠心力の乗った拳を振りかざす。
するとその拳は綺麗にヒットして男は倒れた。いや〜綺麗に入ったなぁ。
よし、お掃除は終わったし迎えに行くか!
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