#20
叙●苑での昼食が終わって帰路を辿っている。社長との昼食中結衣はずっと緊張していてあまり食べられていなさそうだった。見知らぬ大人とはまだ警戒心があるのか?今日会ったアイナとはすぐに仲が良くなってたし。
「結衣、お昼美味しかった?」
「美味しかったよ!お肉がね……」
お昼を美味しく食べれていてよかった。
「アイナちゃんとはどうだった?」
「アイナちゃんねすっごく優しかったの!わからない事教えてくれたりね、一緒に遊んでくれたの!」
「へえ〜。また会いたい?」
「うん!」
一応去り際にアイナちゃんのLI●Eを交換しておいたから呼ぼうと思えばいつでも呼べる。アイナちゃんも結衣のこと気に入ってそうだったし、機会があれば一緒に遊んでもらおうかな。
◇
「あっそういえばお姉ちゃん、今月末に授業参観あるよ」
家に着きくつろいでいると結衣がプリントを見せながら言ってきた。親としては何としてでも見に行かないとな。自分の子供がいつもどんな風に授業を受けてるのか確かめないといけないからな!
「そうなの?ちゃんと見に行かなきゃ。何の授業をやるの?」
「えっとね〜『自分の家族』っていう作文を読むの!」
「え…」
「どうしたの?」
「いや、何でもないよ」
『自分の家族』か……結衣はどんな事を書いたのかな。前までの家族か、今の家族か。けど俺とはまだ会って数週間くらいしか経ってないしそんなに書くことも無いから前の家族の事を書くのかな。けど……ちょっと悲しいなぁ。自分の思ってる事がおかしいのは分かってるけど……なんか心のどこかで『きっと俺の事を書いてくれる』って思ってる。
「結衣の作文、楽しみにしてるね」
そして頭を撫でてあげる。「えへへ〜」と嬉しそうにする結衣。………
「うん!泣いても良いようにハンカチちゃんと持ってきてね♪」
「お姉ちゃん涙脆いからもう泣きそうだよ〜」
そうふざけて言うと結衣が急に俺に抱き着いてきた。そして俺の頭をポンポンとしながら
「いつでも結衣ちゃんを頼っていいんだよ〜結衣ちゃんは〜いつまでもお姉ちゃんの味方だからね♡」
「結衣〜可愛いなぁ。お姉ちゃんもいつまでも結衣の味方だからね」
そうだ、俺には結衣を守る責務があるんだ。それを忘れちゃいけないな。
結衣が俺を離れてランドセルから作文用紙を取り出し書き始める。しかし名前と題名を書いてその手が止まった。どうしたのかなって思ってると
「お姉ちゃん、作文ってどんな風に書けばいいの?」
と聞いてきた。今まで書いた事無かったのか?それとも今まではこんな感じじゃなかったのか?まあどっちでも良いか。お姉ちゃんとしてしっかりと娘を導いてあげないとな。
「まずはどんな話にしたいかを考えるんだ。そしてそれが決まったらどんな風にその話をそれに繋げるかを考える。後はそれを書くだけだ」
「……何言ってるかわかんない」
「大丈夫、お姉ちゃんも何言ってるか分かんないから。まぁ取り敢えず伝えたい事を書けば良いと思うよ、結衣の考えるようにね」
「わかった!」
そして少しずつ描き始めた。もちろん俺はそれが見えないようにした。だって今見たら勿体ないじゃん?
それにしても授業参観か〜懐かしいなぁ、俺が小学生の時以来だもんなぁ。いや〜あの時は親にいつもの自分が見られるのが凄い嫌だったからなんとかして来させないようにしてたな〜。今思えばもっとちゃんと見て貰えば良かったな、だってそれが思い出になるんだし。
けど、あの時の「お母さんなんて嫌いだから来ないで!」って言った時の母さんの悲しそうな顔はもう見たくなかったな。俺が大学に落ちた時よりも悲しそうな顔をしてたからな。
「お姉ちゃん、『家族』ってなんだろうね?」
昔のことを思い出しているとふと結衣からそんな事を聞かれた。『家族』か、確かに家族って何なんだろうな。そんな事を考えた事もなかった。夫婦や子供と暮らしていたら家族なのか?それとも一緒に暮らしたいと思う人と暮らしたら家族になるのか?
「う〜ん難しいな……結衣はどう思う?」
「え〜結衣はね、好きな人と一緒に暮らしてる人が家族なんだとおもう。だって、好きでもない人と一緒にいるのは嫌じゃん?」
「…そうだね」
好きな人と一緒にか……
「よし、お姉ちゃんはお仕事始めるから分からない事とか聞きたい事があったら聞いてね」
「うん!」
最後まで読んで頂きありがとうございます!
いいねや感想を書いていただけるとモチベに繋がるので「書いてもいいよ」という優しい読者の方は是非お願いします。ブックマークもして頂けると嬉しいです!