#128 雑談
「頑張ってね、行ってらっしゃい」
結衣をいつもより早めの時間に送り出した。今日は幼稚園の子達が来て学校案内をする日らしくて前から結衣がずっとテーブルで予定表を作ってたから上手くいくと良いな、なんて思いながら結衣が見えなくなるまで外に出ていた。
結衣を送り出していつも通り部屋の掃除を始めた。今日は午後から高校の時の同級生が来るからいつも以上に綺麗にしないといけないし、その子は結婚して娘ちゃんもいるからその子用のジュース、お菓子も買わないといけないから今日は大忙しなんだよね。
「さっ頑張るぞー!」
◇ ◇ ◇
「もうこんな時間!?早くお昼食べないと!」
お掃除、お買い物、を終わらせるとすっかりお昼の時間になっていた。
同級生の子は2時くらいに来るって言ってたからもう食べないと間に合わない!
急いでお昼ご飯(焼きそば)の準備をする。今日スーパーにお買い物に行った時に人参とかキャベツが安かったし、最近は麺類が無かったからちょうど良いなと思ったからちょっと面倒くさいけどお昼は焼きそばにした。
そしてお昼ご飯を食べ終えてお皿を洗ってテーブルの準備をする。
買ってきたお菓子、ジュース(同級生の子は子供舌)を用意して机に並べて準備万端にする。同級生の娘ちゃんの好みがわかんなかったからお菓子とかジュースを2、3種類買ってきたんだけど、大丈夫かな?
そして…………
〈ピンポーン〉
「はーい!」
約束の時間の数分前になった所でインターホンが鳴った。そして玄関のドアを開けると若い女性とその女性の手をぎゅっと繋いでいる女の子が立っていた。
「久しぶり〜!葵、元気にしてた?」
「うん、元気だったよ。栞も元気そうで良かったよ、じゃ入って」
「お邪魔しま〜す、ほら奈那も」
栞は手を繋いでいた女の子、奈那ちゃんにもそう言って部屋に入った。
「ほら、お姉さんにご挨拶は?」
「か、かぶらき奈那です!」
奈那ちゃんはそう言うと両手を自分の前に合わせてペコっとお辞儀をした。その姿は……………小さな天使のようだった。結衣とはまた違った可愛らしさがあって日々の疲れが癒やされるような気がした。
「よろしくね奈那ちゃん。机の上にあるお菓子とかジュースいっぱい食べて良いからね」
「ほんとっ?やったー!」
そう言うと奈那ちゃんはさっそく椅子に座ってテーブルの上に置いてあった小さなお煎餅をとって食べ始めた。
そこに少し遅れて私達も椅子に座った。
「ごめんねあーちゃん、お菓子とが全部任せちゃって」
「いやいや、準備するの楽しかったししーちゃんも子育てとか家事で大変だろうからこういうのはやるよ」
「けどそんな事言ったらあーちゃんも小学生の子、それも女の子の親になったんでしょ?大変じゃない?」
栞ことしーちゃんは私の中でもかなり付き合いの長い大親友で、高校卒業後も結構な頻度で遊んだり情報交換をする仲で結婚式にも呼ばれるくらい仲はいい。私の性別が変わった事を家族以外で最初に伝える位には信頼もしている。
「う〜ん…………結衣は結構なんでも自分で出来るし、手間も掛からないから大変だとかは思わないけど、ちょっと甘えん坊なところがあって頭を抱えることはあるけどね」
「ふふっ子供なんてそんなもんだよ。うちの奈那だってもう半年後には小学生になるのにまだ一緒に寝ようとするし、お風呂だって一緒だよ?ねー奈那ちゃん」
「んー?ママ何か言ったぁ?」
「なんでもないよ♪けど、あんまりお菓子食べすぎちゃうと夜ご飯美味しく食べられなくなっちゃうよ」
…………2人のそんな可愛らしい会話が聞こえてくるけど私の脳内はそれどころじゃなかった。
幼稚園児ですらもう一緒にお風呂に入ったり寝たりしない?じゃあ今でも一緒に入ったり寝たりしてる私と結衣は…………考えないようにしよう。
「結衣ちゃんは今小学5年生なんだっけ?」
「そうだよ〜」
「じゃあ大変な時期になってくるね」
しーちゃんが同情の眼差しを向けながら言う。
「うん?なんで?」
「だってもうすぐで思春期になるんだよ?それに女の子だと生理とか胸とか親に色々相談しづらい事とかあるじゃん?」
「あ〜…………」
そういえばそうだなぁ。私からしたらそういう経験が無かったからまったく考えてなかったけど、もうすぐでそんな年頃になっちゃうのか。だとしたらちゃんと勉強しておかないとなぁ。
「まあそういう時は私を頼って良いからね、あーちゃんからだったらいくらでも相談に乗るからね!」
「あぁ、頼むよ」
やっぱり本物の女の人の手助けがあるのと無いのとじゃ全然違うだろうし、本だけじゃわかんない事もあるだろうから助かるなぁ〜。
「そういえば思ったてたんだけどさ」
「何が?」
「なんで性別変えようと思ったの?」
「あ〜、聞く?」
まぁそりゃそうだよね、今まで男(中身は)だったのに急に女になったなんて言われたら困惑するよね。けど伝えた時はしーちゃん特に驚いたり引いたりしなかったんだけど、急にどうしたんだろう。
「ん〜……………いいや、あーちゃんが言わないって事はあんまり言いたくないって事でしょ?別に私としては男の子のあーちゃんでも女の子のあーちゃんでも特に変わらないしね」
そう言うしーちゃんは笑顔でその笑った顔は高校のから全く変わってなくて元気で可愛い子のままだった。
「ありがと、けどほんとにいいの?聞かなくて」
「いいよ、そんな事よりさっ結衣ちゃんとかの話聞かせてよ♪」
「おっいいよ〜長くなるけど覚悟してね〜」
そして私は今までの結衣との思い出をこれでもかという程しーちゃんに話をした。
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