#125 学校案内③
「じゃあ校内は最後だね、一階に行こっか」
二階の案内を終わって校舎内最後の一階に向かった。一階には家庭科室、図工室、職員室、放送室、校長室がある。まぁ、一階が一番大変かな。
「まずは…………図工室だね。ここは結構使うから覚えておいた方がいいね」
「ここは何やるの?」
奈那ちゃんが図工室内に飾ってある作品を見ながら聞いてくる。
今は去年私達が作った手作りのパズルを見ている。このパズルは一枚の板を自由に切っていて世界で一つだけのパズルになっている。私は普通くらいの難易度にしたんだけどクラスの一部の男の子は「めっちゃ難くしようぜ!」って言ってピースを凄く小ちゃくしてた。
「わっこのパズル…………ちゃんと出来るの?」
奈那ちゃんがさっそく私がさっき話したパズルを見つけたらしく困惑の顔を浮かべてる。誰だってあんなの見たらそう思うよね。けど一応はちゃんと完成させることは出来たみたいで、違う先生がやってみて出来たらしい。
「一応は………出来るらしいよ?」
「やってみてもいい?」
「「それは無しで!」」
ゲキムズパズルに挑戦しようとする奈那ちゃんを止める声が重なる。流石にこのパズルをやってたら時間がなくなっちゃう。校舎外にも紹介したい所があるし、さっきの図書室で多めに時間を使っちゃったからあんまり長居はできないんだよね。
「じゃ、じゃあ次のところ行こっか………」
「やってみたかったなぁ〜ざんね〜ん」
「あはは…………それは奈那ちゃんが入学した時にやってね」
楓ちゃんが奈那ちゃんを宥めるのを横目に見ながら自分で作ったスケジュール表を見る。若干の遅れはあるけど今のところは大体予定通りに進んでる。
「次は家庭科室だね。家庭科室は4年生から使うから奈那ちゃんが使うのはもう少し先かな」
「奈那ねっお家でお母さんよくお料理するんだよ!」
「へ〜じゃあここ使うの楽しみだね!」
「うん!」
ここの家庭科室には先生の趣味なのか包丁がいっぱいあって壁に包丁が飾られてるの。で、たまに先生がその包丁を見ながらニヤニヤしてるのが目撃されて若干生徒に引かれてたのは先生には秘密だよ。あと他には合奏部のトランペットの人達が練習で放課後使ってるくらいかな。
「お姉ちゃん、次は?」
「次は職員室なんだけど…………奈那ちゃん見たい?」
はっきり言って職員室なんて見せる必要なんて無いと思うんだけど。だって先生が椅子に座りながら丸つけしたり、仕事の多さに嘆いてたり、コーヒー飲んだりしてるだけだからはっきり言って見ても何も面白くないと思う。
「う〜ん………見たい!」
「そ、そっか。じゃあ行こっか」
「あ、結衣ちゃん私トイレ行ってきて良い?」
「あっいいよ。私達は職員室行ってるね」
「ごめんね、ありがとう」
楓ちゃんをトイレに見送って私達は職員室に向かった。職員室は家庭科室のある校舎が違うから少し歩くことになるけどリフレッシュには丁度いいよね。
「ねぇねぇお姉ちゃん」
「うん?どうしたの?」
「お姉ちゃんって学校楽しい?」
職員室に向かって歩いてる最中に奈那ちゃんが話しかけてきた。
「楽しいよ」
「どんなとこ楽しいの?」
う〜ん、そう言われると難しいなぁ。私としては勉強が楽しいって思ってるタイプの人だし、楓ちゃんとかクラスの人とも仲がいいから楽しい以外の感情を感じた事はない。それに先生も優しいし面白いから毎日楽しみにしながら学校に来てる。けど何よりもお姉ちゃんがいるからかな。
「全部かなぁ…………まあ楽しみは人それぞれだから奈那ちゃんは自分だけの楽しみを見つけた方がいいよ」
「奈那ね小学生になったら友達が作れるか心配なの」
「どうして?」
「奈那、人見知りだから初めての人と話すと喋れなくなっちゃうの」
「そっか…………お姉ちゃんと同じだね!」
「そうなの?」
何を隠そう私もかなりの人見知りだからね。初めて会う人の前じゃ全然喋れなくなっちゃうし、お姉ちゃんと初めて会った時なんてなんて喋ったか覚えてない。最近は色んな人と喋る機会があったからちょっとは良くなったけどね。
「そうだよ。けどお姉ちゃんにはいっぱい友達がいるから奈那ちゃんも大丈夫だよ。それに、奈那ちゃん可愛いから!」
私はそう言って奈那ちゃんの頭を撫でる。奈那ちゃんは頭を撫でられると自分から手に頭を押し付けるように背伸びをしてきた。頭撫でられるの好きなのかな?
「着いた、入ろっか。失礼します、5年2組の神崎結衣です。学校案内で来ました」
職員室に入る時の掛け声?を言って中に入る。職員室の中は私の予想とは違って仕事をしてる人は少なくてコーヒーを飲んでいる人が多かった。けどそれよりも目立つのが四人の先生がテレビでゲームをしていた事だ。子供には学校に持ってきちゃダメって言ってるのに…………先生だけズルい。
「あら結衣ちゃん、職員室も紹介するなんて真面目ね〜」
中に入ると保健の先生が話しかけてきた。
「いえ、これが仕事ですから!」
「ふふっそっちの子は………奈那ちゃんね。良かったわねこんないい先輩に案内してもらって♪」
「はい!」
この後先生から聞いた事なんだけど、他の組は自分の好きな所だけ案内してあんまり良い内容にならなかったみたいで私達みたいに真面目に紹介した組は少なかったんだって。
「せんせー質問良いですかぁ?」
「良いわよ。何かしら?」
奈那ちゃんが保健の先生に質問しようとしていた、先生もそれに笑顔で応えようとしていた。その奈那ちゃんの質問を聞くまでは……………
「なんで学校のせんせーはゲームやってるの?」
「「「……………」」」
その質問をした瞬間に職員室内は瞬く間に極寒の空気が流れ、ゲームで熱中していた男の先生四人は固まっていた。他の先生は自分に飛び火しないように顔を俯かせていた。
奈那ちゃん、これが“大人”だよ。
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