#120 お姉ちゃんになる結衣
ジョギングをした次の日、私はずっとベッドにいることになった。今まで運動していなかった反動で一気に運動したため全身筋肉痛になったのだ。
「お姉ちゃん、大丈夫?」
「あはは………ダメかも」
結衣が心配そうに覗き込んでくる。
あぁ、こういう時人がいるって良いなぁ。もし誰もいなかったらって考えると……………ゾッとするよ。
「ふふっじゃあ今日は結衣がお姉ちゃんになるね!」
「………どういう事!?」
そう言うと結衣は満面の笑みを浮かべながら部屋を出て行った。
そして結衣が出ていって少しして結衣が戻ってきた。戻ってきた結衣はパジャマから部屋着に着替えていてさらにエプロンを着ていた。
「えへへ〜今日はいつもお姉ちゃんがやってる事は結衣がやるから、お姉ちゃんはゆっくり休んでてね!」
「あ〜じゃあお願いしようかな」
「うん!任せてね!」
そう言うとさっそく結衣は掃除機を持ってきて私の部屋を掃除し始めた。最初に掃除機で大まかなゴミを吸い取ると今度はクイック◯ワイパーを持ってきて床を拭き始めた。私、クイック◯ワイパーなんて買った覚え無いんだけど………いつの間に買ってきたんだろう。
床掃除を終わらせると次に小さいモップを持ってきて机の上や本棚の掃除をし始めた。私の部屋には本とか資料がいっぱいあるから埃が溜まりやすいからモップは必需品なんだよね。
「結衣大丈夫?上まで届く?」
「う、うん………頑張れば…………」
本棚の上ら辺をぴょんぴょんとジャンプしながら掃除をしている結衣の声をかける。台とか持ってくれば良いのに………ジャンプして足を捻ったらどうするんだろう。しょうがない、持って来てあげるか。流石に椅子を持ってくるくらいは出来るでしょ。
「お、お姉ちゃん何やってるの!?」
結衣のために椅子を持ってこようとベッドから降りると結衣に止められてしまった。
「いや、結衣危なっかしいから椅子持ってきてあげようかなって」
「ダメ!その方が危ないよ!」
「いやけど、そのくらいは出来るっていうか…………」
「ダメなの!今日はお姉ちゃんベッドから出ちゃダメだからね!!」
「えぇ………」
そう言うと結衣はどこで手に入れたのか銀色に光るブレスレット(鍵穴付き)を取り出すと私の両手首にガチャンと取り付けた。
「ちょっ結衣これ何!?」
「うん〜?それはねぇお姉ちゃんの安全を守ってくれるてじょ………ブレスレットだよ♪」
「おいコラ、今手錠って言いかけたよね?」
「ふんふふ〜ん♪結衣何のことかわかんないなぁ〜」
まったく、結衣はなんとしてでも私をベッドに拘束させるつもりか。しょうがない、私が本気出せば手錠ごとき簡単に破壊できるけどここは大人しく静かにしていてやろう。
「じゃあお姉ちゃんは安静にしててね〜♪」
満足したのか結衣は本棚の掃除に戻った。
………う〜ん、やる事がない。さっきまではスマホとかいじってられたんだけど今は手錠のせいでスマホいじれないし、かと言ってやる事も無いし。やっぱり破壊しようかなぁ………
「よし!終わった〜!」
結衣が部屋の掃除をし始めて1時間、やっと掃除が終わった。いつもの私だったら30分で終わるけど、子供にしてはよく出来た方かな。それに頑張って本棚の上の方もやってくれたし感謝しかない。まぁこの手錠を取ってくれたならもっと良かったんだけどね。
「よし、次はリビングやらないと!」
「あの〜結衣さん?これ取ってくれるとお姉ちゃん嬉しいな〜なんて…………」
結衣に手錠を取るよう交渉する、しかし結衣は満面の笑みを浮かべたまま立っている。……………これは〜無理………かなぁ〜。
「ダメ♡」
「ですよねぇ〜」
しょうがない…………破壊するか!
結衣が部屋を出て行ったら引きちぎるとしよう。
「お姉ちゃん、安静にしててね?」
「はいは〜い」
結衣が部屋を出たのを確認して両腕に力を入れる。そして………
〈バキィ!!!〉
よし、外せた。
いや〜実は手錠って簡単に破壊する方法があるんだよねぇ〜。
さてと、自由になったことだし……………トイレに行こう。実はさっきから我慢してたんだよね〜流石に結衣に手伝ってもらうわけにはいかないし。
そしてトイレに行くために自分の部屋のドアを開けようとした瞬間……………
「そういえばお姉ちゃ……………」
「「………………」」
ドアを開けようとした瞬間に反対側からもドアが開けられた。
そこには笑顔の中に怒気が含まれている恐ろしい顔をしている結衣が立っていた。まずい…………俺の生命がまずい!!
「お姉ちゃん、どういう事かな?」
「えっと〜その〜」
ひぃ…………結衣が満面の笑み(般若)が完全顕現している。下手な言い訳をしたら待っているのは……………あの世だ。絶対にミスは許されない。さあ、どうする…………
「あれ〜?お姉ちゃん、手錠…………どうしたの?」
おい、もう隠す気ないぞこいつ。
「えー………………外しました……………」
「あれぇ?結衣、鍵は置いてなかったと思うんだけど………どういう事かなぁ」
「その…………引きちぎりました…………」
そう言うと結衣は驚いたような顔をした。そりゃそうか、手錠の鎖部分を引きちぎったんだからな。逆になんとも思ってなかったらそれはそれで怖いな。
「まぁいいや。ところでなんで部屋出ようとしてたの!」
「えっと………トイレに行きたくて」
そう言うと結衣は呆れたような顔をして
「じゃあ普通に言ってくれれば良かったじゃん」
「けど、そしたら結衣絶対トイレまで着いてくるでしょ?」
「もちろん♪」
結衣はなんの悪びれも無く言う。
「お姉ちゃんはそれが嫌だったの」
「…………けど今日は結衣がお姉ちゃんのお世話をするって決めてたもん!」
そう言うと結衣は涙目になってしまった。
「わかったわかった、トイレの外までは付いてきて良いから泣かないで〜」
「ほんと………?」
「うん、じゃあ付いてきてね」
「うん!!」
そして私は結衣と一緒にトイレまで行った。
そして私は今度からは筋肉痛になんて絶対にならないようにしようと決心した。
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