#114 プール③
「あ〜楽しかった!」
「ねっ!」
流れるプールを何周もして十分満喫した所で私たちは流れるプールを離れて次にスライダーに向かった。流石に朝ほどは並んではなかったけど、やっぱりまだまだ沢山の人が並んでた。そして、スライダーの列の最後尾に着くと係の人が列の整理をしていた。
「結衣ちゃん、身長足りる?」
楓ちゃんがスライダーの列の所に置いてある身長を測るやつの前に立ってニヤニヤしながら聞いてくる。ここのスライダーはどうやら身長120cm以下の子供は乗れないらしい。
「もうっ!そんなにちっちゃくないもん!」
「え〜ほんと〜?測ってみようよ♪」
そう言うと楓ちゃんは私に手招きをしてくる。あの顔は……………測らないと次に行けそうにない顔をしてるなぁ。しょうがない、付き合ってあげるか。そして、私は身長を測る板の前に立つ。もちろん私は120cmよりも大きいから問題はなかった。
「お〜案外余裕あるね」
「だから言ったじゃん!」
「えへへ、じゃあ並ぼっ!!」
「うん!」
そして、スライダー専用の浮き輪(二人用)を持って列に並び始めた。ここのスライダーは日本でも有名なスライダーで長さ、最高時速、時間、全てが日本一の凄いスライダーらしい。
「スライダーって途中で振り落とされたりしないよね?」
「しないしない♪ それに、そんなことになる前に私が助けてあげるからね!!」
「え〜楓ちゃんにそんな事出来るの〜?」
「ふふん、これでも毎日すごく重いランドセルを持って全力疾走してるんだよ!」
「……………」
それは楓ちゃんが毎日寝坊しかけて学校に遅刻しそうになるからでしょ……………
「何その目、ベッドが私を離してくれないんだもんしょうがないじゃん」
「ちゃんと私みたく早く起きればゆっくり出来るのに」
「も〜うるさいうるさい!今がよければそれで良いの!!」
「それ………やめた方がいいよ?」
「ふん!いいもん!」
そんなこんな話していると私達の番が来た。
「お二人さんですね、では浮き輪に乗って準備して下さい」
私たちの番が来て係のお姉さんが準備を手伝ってくれる。お姉さんに浮き輪を渡して私達はどっちが前に乗るかの話し合いになった。
「ねぇねぇどっちが前に乗る?」
「ん〜結衣ちゃん前でいいよ♪」
「えー!?楓ちゃんが前行きなよ!」
「いやいや、結衣ちゃんの方が………」
「いやいやいや、楓ちゃんが………」
私たちがワーワー話しているのを係のお姉さんたちは微笑ましい笑顔で眺めていた。
そして…………
「じゃあ前お願いね………結衣ちゃん♪」
「うぅ………こんなはずじゃ…………」
結局話し合いじゃ決まらなくてじゃんけんで決めることになった。私が前に座るっていう事は私がじゃんけんに負けたことを意味する。
「では、準備はいいですか? いってらっしゃ〜い!」
そしてスライダーの入り口のゲートが開いて水の力によって浮き輪が流れ始めた。
浮き輪がスピードに乗ってきた、案外怖くないと思ってた。けどそれは最初だからだったのをすぐに思い知ることになる。スライダーのスピードに慣れ始めた頃急に体に浮遊感が生まれた…………………うん?浮遊感?
「結衣ちゃん来るよー!」
「え?……………いや、いや………いやぁぁああああああ!!!!」
◇ ◇ ◇
「結衣ちゃん………大丈夫?」
「もうやだ、ぜったい乗んない…………」
私は浮き輪からでて号泣していた。
やだ、怖かった。何が大丈夫なんだよ!途中から落下して進んで、落下して進んで、落下して進んで……………死ぬかと思った。もう二度と乗んない。
「楓、結衣ちゃん、スライダーどうだった?…………って聞く必要もないわね」
泣いている私を見つけた紅葉さんがそばにやってくる。
紅葉さんは私の頭を優しく撫でてくれた。その手はいつも私を優しく包み込んでくれるお姉ちゃんの手みたいに暖かかった。
「じゃあ、ちょっと早いけど気分転換にお昼にしよっか♪」
そう言うと紅葉さんは私の手を握って歩き始めた。
その頃には流石の私も泣き止んでしっかり前を向いていた。けど、目に周りは涙のせいで赤くなっていた。




