#107 家庭訪問
掃除を終わらせた次の日、私は久しぶりにお化粧をして人に見られても大丈夫な服装で緊張しながらお昼ご飯を食べていた。
結衣の学校も家庭訪問があるからか半日授業で午前中に帰ってきて一緒にお昼ご飯を食べている。私はめっちゃ緊張してるのに、当の本人はいつも通りのほほ〜んとしててあまり緊張はしていない。
「なんでお姉ちゃんが結衣よりそんなに緊張してるの?」
ガチガチに緊張している私に結衣が呆れながらも緊張をほぐすように笑いながら聞いてくる。
「だ、だって…………ちゃんと受け答えができるかわかんないし、結衣に恥ずかしい思いさせちゃったらどうしようとか、変なこと言っちゃったらどうしようとかいっぱい出てくるんだよ!?」
時間が経つにつれてどんどん不安要素が沸いて出てくる。
「も〜大丈夫だって♪ いざとなったら結衣がカバーしてあげるから!」
「うぅ………それはそれで自分の子供に尻拭いをさせてるみたいでヤダなぁ」
「じゃあ頑張るしかないよ!」
結衣が私を励ますように背中をポンポンと叩いてくれる。
「あぁ………こんなんなら代わりに姉ちゃんを呼べば良かった…………」
「もう! お姉ちゃん弱音吐くの禁止!そんなんじゃ結衣だって緊張しちゃうでしょ!!」
「あぅ…………ごめん……」
すると結衣はいきなり立ち上がると私の背中側に立って
「お姉ちゃんがず〜っと緊張してると良くないから結衣が和ませてあげるね!」
と言って私に後ろから抱きついてきた。
あぁ、あったかい、結衣の体温がリラックスするには一番良い。
家庭訪問中もずっとこうして背中にいてくれないかなぁ。
結衣が背中にくっついてから5分くらい経った。
「お姉ちゃん、落ち着いた?」
「………ちょっとだけね」
「良かった♪」
これなら大丈夫かな………………たぶん。
◇ ◇ ◇
そしてそれから数時間経って、先生が来る時間になった。
〈ピンポーン〉
つ、遂に来た! 大丈夫、大丈夫いっぱい練習したし、結衣とも打ち合わせもした。失敗するなんてないはず!自信を持っていけば大丈夫だって姉ちゃんも言ってたし、自信を持っていこう!
「少しお待ちくださ〜い」
玄関を開けて結衣の担任の先生である咲先生をリビングに案内して家庭訪問もとい三者面談が始まった。
「咲先生、お茶です!」
結衣が三人分の麦茶をトレーに乗せてテーブルに運んできてくれた。それは私の役目だったんだけどなぁ、まあいっか。
「ありがとう、結衣ちゃん。じゃあお話をしましょうか」
「お願いします」
「では、まず結衣さんの成績の話ですね。現時点では結衣さんはかなり優秀な成績でしてこのまま行けば良い中学校に進めますね」
「そうなんですか〜」
「はい、それに結衣さんはクラスの人達からの信頼も厚く、結衣さんはいつも女の子グループの中心にいて楽しそうに生活できてますよ」
「………凄いですねぇ〜」
あぁ、私とは違うんだなぁ。
「それにですね、先日行った4年生の確認テストでは全教科100点で学年で1番だったんですよ〜」
「えっそうなの!? 結衣なんで教えてくれなかったの!?」
確認テストがあるなんて結衣から聞いてないし、ましてやそれで一位を取ったなんて一切知らされてない。教えてくれたらお祝いしてあげたのに。結衣は学校で楽しかった事とか学校での出来事はよく話してくれるんだけど、こういうテスト関係は全然話してくれないんだよね。
「だって、テストは簡単だったし取れて当たり前だと思ったんだもん」
「「…………」」
あぁ……………結衣は頭が良いと思ってたけど、まさかそこまで頭が良いとは。全教科100点なんていくら小学生の問題だからって絶対難しいに決まってる。それなのに結衣は、『取れて当たり前』……………レベルが違う。
「あの〜咲先生、そのテストってどれくらい難しかったんですか?」
「ええと、塾などのレベルの問題を中心に出していて私たち教師としては6割取れていれば充分だと思って問題を作っていました」
先生としては6割取れれば充分、それなのにも関わらず結衣は全教科満点………………そりゃ良い中学校に行けるって言うわ。
それにしても、結衣は塾に行かせてないのになんでそんなに点数が取れるんだろう?よくいる点数を取る子って家に帰ってから塾に行ったり、家に帰ってからも頑張って勉強したりしてるはずなんだけど…………それに比べて結衣は
①家に帰ってきたらまずおやつを食べる
②お気に入りの本(最近の結衣のお気に入りは百合小説・漫画らしい)を読む。
③私のお手伝いをする。
④●outubeを見る。
という勉強とはかけ離れた生活をしている。なのにも関わらず結衣はテストで満点をとっている。いやはや、結衣はいったいいつ勉強をしてるのやら………
「もうっ!そんな事はどうでもいいから違う話しようよ!」
「え〜先生はもう少しお話しした方がいいと思うんだけどなぁ〜」
「お姉ちゃんもそう思うけど………」
「いいの! ほら次の話しよ!!」
なんでそんなに勉強の話を逸らそうとするんだろう、普通の子だったら勉強ができたらいっぱいその話をすると思うんだけど…………結衣はやっぱり他の子とは違うんだなぁ。
「う〜ん、結衣ちゃんもご機嫌斜めになってしまいましたし、違う話をしましょうか」
「そうですね」
「では次は……………」
◇ ◇ ◇
それから一時間が経った。
私たちが最後の家だったらしく結構話し込んでしまった。最初はしっかり話していたけど途中からは世間話をするようになってしまって暇になった結衣は部屋に戻って本を読み始めた。
「すみません、こんなに長居してしまって………」
「いえいえ、私も楽しかったですし大丈夫ですよ」
「結衣ちゃん、これからもお勉強頑張ってね!」
「は、はい………」
は、はは、結衣は勉強してないから「勉強がんばってね」って言われても困るよね。
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