#106 お掃除
6月下旬頃、私は大急ぎで部屋の掃除をしていた。なぜって?それは…………
【数日前】
「お姉ちゃんただいまー!!」
「おかえり〜プリントとかあったら先に出してねぇ〜」
いつも通り元気いっぱいに帰ってきた結衣に渡されたプリントがないか聞く。こういうのはしっかりしないと痛い目に遭うのはよくわかってるからね!(主に母親が)
いや〜俺が小・中学校の時はまっったくと言っていい程プリントを出さないでよく怒られてたからね。結衣が来てからはプリントを見せてって言ってた母さんの気持ちがよくわかる。
「はい、これ!」
「ん、ありがとね〜」
そして結衣から渡されたプリントを見て固まった。そのプリントには【家庭訪問のご案内】と書かれていた。そっか、もうそんな季節か。確かに毎年この月は家庭訪問があるよね。私の通ってた学校もそうだったわ。ていう事は………
①先生が家に来る
②部屋は(ちょっと)汚い
③お客様(先生)が来るのに部屋が汚いのは色々とマズい
これら導き出される答えは…………
「お姉ちゃん?」
「…………お掃除しなきゃ!!!」
【回想終了】
そして今に至る。
プリントによると先生が来るのは3日後、という事はこの3日の間に部屋、廊下、玄関の掃除をしなきゃいけない。いつもだったら余裕なんだけどよりにもよってつい先週めっちゃデカい案件が来て忙しくなってきた時に家庭訪問が来たからはっきり言って掃除してる暇はない。それに、勉強とか趣味に忙しい結衣に任せるわけにもいかないし………睡眠時間を減らすしかないかなぁ。
「お姉ちゃん、お掃除何すればいいの?」
「え………手伝ってくれるの?」
結衣が天使のような笑みを浮かべながら張り切っている。
「うん!じゃあまずは玄関掃除してくるね!」
「じゃあ頼むね〜」
そう言って結衣を玄関へ見送る。
さてと、私は…………掃除機かけちゃおうかな。掃除機をかけてその後にモップがけして、棚とかの埃をとって、換気して、机の上を掃除して…………う〜ん、やる事はいっぱいだね!
【30分後】
ふぅ〜やっと掃除機かけ終わったよ。前までの家だと良い意味で狭かったからすぐ終わったけどこっちは広いからその分埃とかも溜まるし時間もかかる。まぁ、かと言って狭い方が良いってわけじゃ無いんだけどね。
それにしても30分も経ったのに結衣が玄関から戻ってこないな、どうしたんだろう。様子を見に行った方がいいかな?けど、見に行こうとした直後に結衣が戻ってこようものなら結衣から「お姉ちゃんは結衣のこと信用してないの!」って言われたりしそう。けど…………玄関はそこまで広くないし、こんなに時間がかかってるのはおかしい!やっぱり確認に行かないと!
そう思って玄関に向かうと玄関に座り込んで何かをしている結衣の姿があった。
「結衣、何してるの?」
「あっお姉ちゃん! えっとね今お姉ちゃんの靴を磨いてたの!」
え………なんで?
「え〜っと、どうして靴なんて磨いてたの?」
「うん?だって、一番最初に見えるものがその人の印象になるから最初に見ることになる靴は大事って先生が言ってた…………ような気がする」
あ〜確かにそんな事を言ってたような気もするなぁ。そんな事一切考えてなかったなぁ、確かに最初に見る物は大事だしね。さすが結衣だ。
「じゃあお姉ちゃんは結衣のお靴を磨いてあげようかな♪」
結衣が私の靴を磨いてくれるなら私は結衣の靴を磨いてあげるのが筋ってものだよね。それに結衣だけに靴磨きをさせるわけにはいかないしね!
「お姉ちゃん、負けないからね!」
「なに、お姉ちゃんに勝負を挑むの?いいわ、年上の力を見せてあげる!」
【数十分後】
「私の勝ち☆」
「お姉ちゃん…………靴磨くの早すぎ」
私は速攻で靴を磨いて結衣が一個の靴を磨き終わらせる間に二個の靴を磨き終わらせていたのだ!
「靴磨きも終わった事だし、次は………廊下のモップ掛けをしよっか」
「うん!これ使えばいいの?」
「そうそう、それにシートをつけてね」
結衣はよくあるシートをつけるだけで掃除ができる棒を持って廊下をきれいにし始める。そしてやっぱり結衣はまだまだ子供らしく、それを持ってスケートみたくスーっと滑りながらモップ掛けをする。そうやって遊んでると………
「きゃっ!」
シートで濡れた所で足を滑らせて盛大に転んでしまった。
まったく、結衣はたまに大人っぽくなるけどこういう子供っぽい所もまだまだあるのが可愛らしいな。
「結衣、大丈夫?」
「ちょっと滑っちゃっただけだからだいじょぶ!」
「危ないからそういう事はしないでね。お姉ちゃん、もし結衣が怪我しちゃったら…………」
「そんな顔しないでよ!次から気をつけるからさ!」
「約束だよ………?」
「うん!」
「じゃっ!お掃除に戻ろっか♪結衣も怪我はしてないみたいだしね!」
私はさっきの悲しそうな雰囲気から一転、いつもの何も考えてないような明るい私に戻して掃除に戻る。こんなお芝居してても時間の無駄だからね。
「お姉ちゃんのイジワル…………」
「ん〜?何がかなぁ?」
なんか結衣がお機嫌斜めになっちゃってるけど♪
「廊下が終わったらリビングもお願いねぇ〜」
「…………ふん!」
あら、これは完全に拗ねちゃったかな。
しょうがない、お掃除が終わったら何かご褒美をあげないとね。
◇ ◇ ◇
「ふぅ‥‥…終わったぁー!!」
やっと終わった。玄関、廊下、リビングのお掃除を終わらせた。やっぱり掃除は一人でやるよりも二人とか複数人でやった方が楽だし、楽しいな。
「お姉ちゃん疲れた〜」
「ふふっお疲れ様。じゃあ…………手伝ってくれたお礼に結衣にはご褒美を授けよう!」
「ほんとっ!?」
「ちょっと待っててね〜」
私はそう言って自分の部屋に向かう。そして部屋からある物を持ってきた。
「はい、ご褒美♡」
「えへへ〜なんだろう〜?」
そう言って受け取った結衣の顔から笑顔から無の表情に変わった。
「お姉ちゃん…………何これ」
「結衣のための問題集♡」
「…………お姉ちゃん嫌い!!」
そう言うと結衣はまた拗ねちゃって今度は部屋に閉じこもってしまった。
う〜ん、面白いと思ったんだけどなぁ。ちょっとふざけすぎちゃったかな?今度こそちゃんとしたご褒美あげないと。私は冷蔵庫から桃のタルトを持って結衣の部屋の前に行く。
「結衣、さっきはごめんね?お詫びと言ってはなんだけど、今度こそ結衣が好きなご褒美持ってきたから………出てきてくれる?」
「…………ヤダ」
「早く来ないと美味しく食べられないよ?」
「…………部屋の前に置いといて………」
何としてでも部屋から出てこないつもりか、いいだろう根比ね!
「お姉ちゃんは結衣と一緒に食べたいんだけどなぁ〜?」
「結衣は一人で食べたいの…………」
「ふむ…………入るよー!!」
「ちょっ!えっ!?」
私は結衣の部屋のドアを開けて入り込む。まったく、部屋に入って欲しくないなら鍵をかけないとダメだぞ☆
「ほら〜タルト持ってきてあげたよ〜、って結衣なんだ下着なの?」
何故か結衣は服を脱いで下着だけになっていた。
「だ、だって汗かいちゃったから…………着替えたくて」
「………なんか、ゴメン。タルト…………置いとくね?」
「ちょ!なんで出てくの!?」
気まずくなったから机にタルトを置いて部屋を出ようとすると結衣に腕を引っ張られた。
「一緒に食べてくれるんじゃないの?」
「う………けど、結衣が一人で食べたいって言うから」
「うぅ〜私の気持ちをわかってよ!」
えぇ〜人の気持ちを理解するとか大学に入学するよりも難しいんだけど。
「絶対に逃がさないから」
そう言うと結衣は腰にギュッと抱きついてきた。この掴み方からして絶対に離さないっていう確固たる意志を感じる。素直に甘えてくれればいいのに。
そして結衣と一緒に桃のタルトを食べた。
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