#104 結衣と葵ちゃん②
「どういう事ぉ!!?」
朱音さんはソファーでスヤスヤと寝ているお姉ちゃんを見て驚きの声をあげる。朱音さんがそうなるのは無理はない、だって私だって最初見た時は凄くびっくりしたもん。
「ゆ、結衣ちゃん! あの子誰なの!?」
「あの子は………葵お姉ちゃんです」
「…………結衣ちゃん、真面目に答えて………?」
葵お姉ちゃんと聞いた瞬間に朱音さんが私の肩をガシッと掴んで睨んでくる。
顔が………怖い。
「いや、ほんとですって!ちゃんと見てください!」
そう言って朱音さんの首を葵ちゃんの方へ向けさせる。
朱音さんは寝ている葵ちゃんを凝視して……
「う〜ん、確かに寝てる顔がちっちゃい頃の葵に似てるような………けど! それじゃあなんで葵はちっちゃくなってるのよ!」
「それが………」
〜〜結衣説明中〜〜
「………え〜要するに、夢未が送った若返り薬を飲んだら本当に若返ってこうなったってこと?」
「はい……」
そう言うと朱音さんは頭を抱え始めた。
「(ボソッ)葵があんな姿に…………可愛い………あれが女の子だった時のちっちゃい頃の葵?男の子の時も可愛かったけど………こっちは本物の………」
〈プシュ〜………〉
「朱音さん?」
何かボソボソと呟いていた朱音さんの頭からいきなり蒸気が吹き出したかと思ったら鼻血が滝のように流れ始めた。
「朱音さん!?」
「ははは………ユートピアはそこにあったのね…………」
「あ、朱音さん戻ってきてください!!」
〈スパァン!!〉
〜〜しばらくお待ちください〜〜
「朱音さん、大丈夫ですか?」
「えぇ、結衣ちゃんにビンタされた頬以外は大丈夫よ」
そう言う朱音さんのほっぺたには綺麗な私の手形が残されていた。まさか………ここまで綺麗に出来るなんて思いもしてなかったなぁ〜
「まあ……とりあえず薬の効力は1日だけなんだからお世話してあげたら?」
「そうですよね………私頑張ります!!」
「ガンバ! じゃあ私は帰るわね。あ〜あと服は結衣ちゃんのちっちゃい頃のお洋服を着せてあげたら?」
そっか、自分のやつを着させてあげれば良かったんだ。慌てすぎてそんな事考えもしなかったよ。
「わかりました!」
「じゃあ、頑張ってね」
そう言うと朱音さんは帰って行った。
さてと、さっそく葵ちゃん用のお洋服を探しに行かないと。けど…………私持ってたかな〜全部捨てちゃったような気もするし。まあ見る前に諦めちゃダメだし、探しに行かないと。
そして自分の部屋の隅にある段ボールの山の中から小さい頃使ってた道具やお洋服、アルバムが入ったダンボールを探して中を探ってみると…………
「あった………」
お姉ちゃんと暮らす前、自分の人生の最低期の頃の思い出が詰められた段ボールから自分が小さい頃着ていた洋服が一着だけ出てきた。それは…………家族の中で唯一の味方だったお母さんから2歳の誕生日に貰ったピンクのワンピースだった。ワンピースは綺麗にジップロックの中にしまわれていて、ジップロックには【白咲結衣】と私の前の名前が細く、綺麗な字で書かれていた。
それを見ると地獄だった暮らしの中で唯一の逃げ場だったお母さんの記憶が蘇ってくる。
「お母さん………私は………結衣は、幸せに暮らしてるよ」
私はそっと手を合わせた。
◇ ◇ ◇
ワンピースを持ってリビングに戻ると葵ちゃんはまだ眠っていた。
早く着替えさせないと風邪ひいちゃう。
「葵ちゃん、起きて〜?」
「うぅ〜ん………おはよ〜」
起こされた葵ちゃんは目を擦りながら起き上がった。
「葵ちゃんのお洋服持ってきたからお着替えしよっか♪」
「うん!」
「はい、ばんざーいってしてね〜。…………はい、出来たよ」
「ありがと!」
ワンピースに着替えてた葵ちゃんは…………天使だった。その天使のような笑みはこの世の全てを浄化してしまうんじゃないかと思うくらいには眩しかった。
「じゃあ朝ごはんにしよっか」
「あいっ!」
そしてさっき作っておいた朝ご飯をもう一度温めて遅めの朝ごはんを食べた。
葵ちゃんはちっちゃなお口でちょっとずつ食べてて…………浄化されるかと思った、マジで。
ご飯を食べ終わった葵ちゃんはお姉ちゃんだった頃の生活習慣がちょっとだけ残ってたのか、言われる前に歯磨きをしようとしてた。頑張って洗面所まで行って、歯ブラシを取ろうとしてたけど背が…………届かなくてピョンピョンとジャンプしてて…………可愛すぎた♡ 結局私が歯磨きをとってしっかり、隅々まで磨いてあげた。
「ママ! あそぼ!」
「良いですよ〜何して遊びますか〜?」
「えっとぉ………」
どんな遊びをするんだろう? 私はちっちゃい頃の記憶なんて無いし予想できない。
「葵ちゃん?」
葵ちゃんが考え始めてから動かない。もしや、と思って葵ちゃんの顔を覗き込むと…………
「ふふっ、ちっちゃい子はすぐに眠くなっちゃうんだね」
葵ちゃんは瞼を閉じて眠っていた。けど、こんなにも寝るもんなのかな?いくらちっちゃいからって少しぐらいは遊んだり、絵本を読んだりするよね?…………もしかして、薬のせいで変に体力が使われちゃってるのかな?私はちっちゃい頃のお姉ちゃんと遊んでみたかったんだけどなぁ。
「葵ちゃん、おねむならベッドでしよ?」
「うぅ〜ん………わかったぁ……」
私はそう言って葵ちゃんを抱っこしてベッドに向かう。そしてベッドに葵ちゃんを寝かせて私もベッドに入り込んだ。ふふっこうやって添い寝するのも良いよねぇ。
「ママぁ〜」
「どうしたの?」
寝てたはずの葵ちゃんが私の服の袖を引っ張っていた。
「なでなでしてぇ?」
「………良いよ♪」
そして、葵ちゃんが寝付くまでず〜っと頭をなでなでし続けた
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