第24節 将来の夢
学校に行く途中の駅のコンビニで、立ち読みをしていると肩を叩かれた。
「おっす! お待たせ」
アミと如月が制服を着て立っていた。今までイムル村の民族衣装を着ていたから、新鮮に思えてしまう。
「久しぶりの学校だなー。だりぃ」
パックのレモンティーを片手に、アミが言った。
「そうは思ったけど、セシル達のこと思い出して言えなくなっちゃった」
「行けることは、恵まれてるけど怠いことは怠いだろ」
確かに。
「夏休みをどストライクに燃やされていることに、ショックなんだけど…」
如月はライブがどうとか、遊びがどうとか言っている。
夏休みは色々と予定入れていたから、ショックを受けるけど
「他の人達より長く遊べたし良くない?」
「それはそうだけど」
「セシル達元気にしてっかなー」、とアミ。
「自分は元気にしてます、とか日記に書いてそうだよね」
如月が大きな声で笑って「想像できるね」、と言う。
学校について、一緒のクラスに向かう。登校中も学校の人達に見られていたが、学校に入ると更に視線が集まっている。
「なんか注目されてね?」
アミが小声で言う。
「あたし達死んでたからでしょ」
「冥府から生還しちまったねー」
小走りで教室に入るとクラスメイトが驚いていた。
夏休み明けの全校集会で私とアミ、如月は川で遊んでいて死んだ、と明かされたらしい。その前からみんなで私達のことを探したとも聞いた。ラインの通知を見れば、心配されていたことがすぐにわかった。
「そのキーホルダー何?」
席に座ると、隣の席に座る綾香に話しかけられた。彼女が指をさしたのはイムル村の染めで幾何学模様でカラフルになった麻袋だ。
「いい匂いだよ」
鞄を持ち上げて、麻袋を手に取る。綾香はキーホルダーを嗅ぐと頬を緩めた。
「めちゃくちゃいい匂い。どこで買ったの?」
「友達からもらったの。これは大切なものなんだ」
クラスメイトや友達に謝って、ホームルームを受ける。
木原先生が壇上に立ち
「夏休み明けて、お前らが好きな受験が始まるぞー」、と軽口叩いていた。
進路。まだ私が決めていないこと。
「歌川」
先生が私の名前と他にも数名名前をあげて
「進路決まってない奴ら後でこっち来いよ」
ホームルームでざっくりと今後の流れを説明された後、言われた通り教壇に立っている先生の横に立つ。私を含めて4人いてその中にアミがいた。
「決まってなかったんだね」
「遊び惚けてただけだわ」
と、いたずらっぽく笑った。
「お前ら進路は決まったか」、と先生。
全員首を横に振った。
「放課後、面談な。出席番号順で呼ぶから教室に残ってろ」
木原先生はそう言うと、教室から出ていった。
授業中、将来について考えていた。
アミはまだ何も考えていないと言っていた。如月はもう決まっていてao入試でもう入学先は決まっている。
──やりたいことは、決まっているのだけれど。
漫画家かイラストレーター。どちらにしろ絵の仕事に興味はある。美大に行くとして、受かるだろうか、将来絵の仕事に就けたとして、食べていけるだろうか。
正直、ナミタみたいに水彩画も油絵も上手くはないから、美大ではなくてもいいのかもしれない。専門や趣味で行うのでもいい。
様々な不安が頭の中を埋め尽くす。
『自分がしてきたことを振り返って、それからやればいい』
クロノさんから言われたことが、頭によぎった。
一般的な家庭に生まれ育ち、地元玉川から離れずに高校まで進学した。目立った外見は青黒く染めた髪の毛くらい。アニメが好きなギーク(オタク)。
他の人と違って異世界に行ったからといって、何ができるだろうか。
いや、他の人と違うからあの世界で学んだことを、漫画に活かせば金に…経験になる!
──なら、やることは決まった。
放課後になり、先生に呼び出されて進路相談室に入る。
「お前将来やりたいこと決まったのか」
「漫画家になりたいです」
「お前なぁ、もう少し真面目になれよ」
「いや、マジです。自分のできることを活かせる仕事にしたいです」
「お前美術の先生とかじゃダメか?成績も悪くないし、絵に関わる仕事は他にもあるぞ」
「だとしても、絵の学校行きたいです」
木原先生はため息をついた。席から立ち横の本棚にある美術関連の大学、専門学校のパンフレットを机に置いた。
「とりあえず、わかった。美術関連の学校を志望ってことだな」
それから自分の学力でいける範囲の美術を学べる大学を粗方選定して、進路相談室を後にした。
下駄箱の前まで行くと、アミがスマホをいじって立っていた。
「待ってたの?」
「そうそう、うちもついさっき呼び出されてたからワンチャン一緒に帰ろうと思ってさ」
校門を出て駅へ向かう。アミが電車通学で向かう方角が一緒で、帰り道は進路について話す。
「進路決まった?」
「一応決まったよ、美大に行こうかなとは思ってる」
「美大? 今から間に合うのかよ」
「正直厳しいと思う… でも、やってみないとね。それか専門いこうかな」
なるほどなー、と関心した様子で頷く。
「アミは決まったの?」
「うちも決まって、看護の学校行くことにした」
「看護? ってことは、看護師になろうと思ってるの?」
「いや、保健室の先生になろうと思ってるんだ」
「知らなかったんだけど!?なんで」
「うち中学の頃荒れてて、保健室の先生に何度もお世話になってたからさ。見下したりしないで、うちとしっかり向き合ってくれたのが嬉しくて」
アミはうなじをさすりながら、語ってくれた。
「青空教室した時に、子ども達遊んだり相談のったりするのが忘れられなくてさ。薄っすらと保健室の先生になりたいって思ってたけど、やるしかねぇと思ってさ」
「へぇ、アミも結構将来のこと考えてたんだね。私なんてざっくりだったから」
「こんなうちでも、なりたいものはあるんだよ!」
おしりを蹴ってきた。
「痛いな!」
「頑張ろうぜ」
拳と拳を合わせる。
「うん」




