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サマー・HSS・マタステイシス  作者: 川上アオイ
最終章 サマー・HSS・マタステイシス
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第20節 轍4



 2人を連れて家に戻ろうとしたら、パーティーは続いていた。主役の1人がいなくても盛り上がっていて複雑な気分だった。人混みをかき分けていくと酒臭さで鼻を摘まむ。

「臭い」


 後ろの2人が文句垂れる。

 急いで、家の中に入ると外と打って変わって静かだった。家の中に誰もいないのか物音がしない。

 それぞれが自分の部屋に戻る。

 私は手を洗いたくなり、洗面所に向かうと裸のオッサンが立っていた。


「うおわぁああ!」

 女の子らしからぬ声が出てしまった。

「きゃあああああ!」

「それはこっちの叫び声ですよ、クロノさん」

 手ぬぐいで、股間を隠して

「いつの間に帰ってきてたんだい」

「ついさっきです。クロノさんこそここで何してたんですか」

「久しぶりに自分の肉体美を見れたからね」

 小さな鏡の前で、ポーズを決めている。筋肉が浮き出ていて、確かに見惚れるものがあった。


「早く服着てくださいよ」

 扉を閉めて、リビングに向かう。

 お茶を入れて、待っているとすぐに服を着て出てきた。

 クロノさんは対面に座って、私が準備していたお茶を一口飲んだ。

「わざわざ準備したってことは、僕に何か話したいことがあったんだよね」

「まぁ、そうなりますね」

「畏まってどうした、どうした。お金かい」

「違いますって、通貨違いますよ」

 本題の方を促され、話す。

「ここに来てあまりかっこつかなかったんですよね。後悔といいますか」


 言いたいことが、まとまらず自己嫌悪に陥る。

 それで、と続きを催促されて話す。

「学校作りや戦争の件は、自分達で動いて結局ここにいる人達に投げやりになっていたのがとても情けなくて悔しいです」

「そうかー。別に気負わなくていいのにな」

「え」

「そりゃそうだろ。学校は僕達が頼んだことだ。建物が燃えたとしても代わりの案を出してくれただけで、大助かりだよ。戦争を止めただけでも凄いさ」


 そうは言われても、何かしたかった。学校をいなくなる最後までお世話したかった。如月の件があったとしても、本心としては思ってしまう。

 戦争があったとして、止めれたのはエギルちゃんのおかげと言ってもいいくらいだ。その後は、瀬尾くんが部族の仮代表として話をある程度まとめて進めてくれた。

 なら、私にもこの先のために動けたのではないか。

「だとしても──」

「たかが17年生きただけの子が、調子乗らない」

「痛っ」


  デコピンされた。おでこに地味だが痛みが残る。

「君達の世界だと、17歳って随分と立派なことでもしていたのかい?」

 如月のこともしかり、と付け足された。

 つまり、私達は焦りすぎだと言いたいのだろう。

「そういうわけではないですけど」

「何かできる人はたまたま、そこで結果を残せただけだよ。それで君達が焦ってできない自分を責める必要はないさ。自分ができることを1個ずつ探して試すといいさ」

「どうすればいいんですか」

「自分がしてきたことを振り返って、それからやればいい」

「そんな抽象的な…」

 クロノさんは大きく笑った。


「若者は時間がたくさんあるからね。自分で探したまえ!」

「相談したのが失敗だったかもですぅ。自分のしたことを振り返るって…」

「何を言う。君は他の人達と違って異世界に来たんだ。何かしら見つかるさ」



 クロノさんとそれから他愛もない話をして、気が安らいだところでパーティーに再び向かうことにした。

 そこら中に、酔っ払いしかいなかった。歩くだけで突っかかってきてうんざりだ。

 気分のパラメータがマイナスになる。

 仕方なく、パーティーを抜け出して適当に村を歩いていると紫色の髪の少女が一人で歩いていた。

 セシルは一人で何しているのだろう。

 彼女の後ろをついていく。急に立ち止まり、何かを見ているのか一点を見ている。見ている方角には何もない。地面に転がっているのはガレキだけだ。ガレキを見ているわけでもなさそうだ。


──学校の跡地か。

 久しぶりに跡地に来たから、すぐには思い出せなかった。ガレキはほとんど撤去されて、モニュメントみたいに少しだけ残されているから、気づけるはずもなかった。

「そこで何しているんですか」

 セシルが誰かに話しかけた。

 まさか自分ではないだろうな。

「優花さんに言っているんですよ」

「ええ!」

 バレないように後を追っていたのに、なぜバレた。


「よくわかったね。姿見えたの?」

 もう辺りは真っ暗で、星空が綺麗だ。蛍の光が川辺から見えるくらいに暗い。

「暗闇に目が慣れてきたので」

「だとしても脅威の目だね。私だとすぐに言い当てたし」

「推測しただけですよ。大人達は酔いつぶれていますし、子どもは夜道を歩きたがらないので、夜に警戒心もないのは、アミさん達くらいだと思い、あとはそれぞれが今さっきまで何していたかを振り返るだけです」

「怖いな…。名探偵みたいだ」

「なんで尾行してきたんですか」

「なんとなく? セシルこそ何していたの?」

「自分ただ…」


 セシルが言葉を濁した。いくら待ってもその先のセリフが聞けない。

「ただ?」

「歌川さん達と過ごした日々を振り返っていただけです」

「へぇ。照れるね」

「照れないでくださいよ。恥ずかしい」

 そう言う、セシルの耳は真っ赤になっていた。

「色々とあったねぇ」

「はい」

「セシル的には、何が印象に残った?」

「どれも新鮮だったので、難しいですね」

 学校作ったり、戦争を止めにいったりなんてこの世界の住人でも滅多にしない体験だろう。


「何かしたいこととかない? 将来の夢とか」

「んー」顎に指を組み「ないですね。急にどうしたんですか」

「いや、参考までに聞きたいと思って」

 思い出したように、あ、と声をあげて

「学校の先生ですかね」

「へぇ、村長になろうとか思わなかったの?」

「村長代理を少しだけ経験しましたが、大変だったので…」

 クロノさんがいなくなって、村は部族に襲われたという地獄の状況でよく一日以上耐えたものだと、素直に尊敬できる。


「タイミングが最悪だっただけだよ。でも、なんで教師?」

「色々な方の授業を聞いて、学を深めるのが面白いと思いました。子ども達と関わるのがとても楽しかったので」

「それはよかったー」

「こんな理由で志してもいいのでしょうか」

「なりたい理由なんてなんでもいいんだよ。セシルなら良い先生になれるよ」

「そうですかね」

 自信がなさそうに目を覗いてきた。

「セシルなら大丈夫」

 彼女の肩に手を置いて応える。

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