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サマー・HSS・マタステイシス  作者: 川上アオイ
最終章 サマー・HSS・マタステイシス
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第17節 轍



歌川視点



 アンダルシア王国から移動してイムル村に着いた。私達がいない間村の方々が学校を運営してくれていたようだ。運営してくれたお礼を言ったら「なんてことない」、と逆にお礼を言われた。


「この村のために、がんばってくれてありがとうね」、と市場で料理屋を開いているお姉さんに言われた。

「戦争止めたらしいじゃないか」、と魚屋の息子さん。

「子ども達が真剣に物事を学んでいる姿見れて良かったわ」、と村の議会で学校関係の書類をまとめる女性に言われた。


 私を含め学校創設組としては途中で放り出して、村を抜け出すという蛮行(ばんこう)をしたので責められると思ったが、意外にも誰も気にしていなかった。

 クロノさんが言うには、村に部族が襲ってきて村の家財が燃えて何もできないってなった時に、青空教室というので子ども達の居場所を確保して、建物がなくても商売をして盛り上げていこうと躍起(やっき)になったからじゃないか、と推測を聞いた。

 実際のところ誰もそうは言っていないのだけれど、感謝されたのでそういうことにしておこう。


 遠くから声をかけられ振り向くと、この村に来た時から見ていたイムル村の多色幾何学模様の服を着て、下はジャージを履いていた。制服は穴だらけで誰も持っていないからジャージスタイルになる。

 村に戻ってきた感が増して、なんだか落ち着く。かくいう私も民族衣装にジャージという格好だから外見はリラックスしている。


「歌川、なんで家にいないんだよ」

「私達が村から出ていったことを謝りにね」

「うわ、確かにその間学校色々やってくれてたんだべ」

 そうそう、と相槌を打つ。

「デロル達のこと聞いたか?」

「いや、まだだけど」


 デロル達は国家反逆罪で死刑になったらしい。身柄を引き渡してすぐに死刑されたとことで、彼らにとっては最悪の結末だっただろう。

 国を反逆して自分達の思想通りの国を作ろうとしたのだから、なんとも言えない。

 でも、彼らみたいに種族といった特定のものに憎しみを抱くものを作らないようにしないといけない。また、反逆して特定の物を淘汰しようとする人達が生まれてしまう。


「デロルはなんで、国家を裏切ろうとしたんだろうな」

 今まで国のために頑張ってきて裏切る意味がわからない、とアミは小言を付け足す。

「頑張ってきたから疲れちゃったんじゃないかな、本人がもうこの世に居ないから答えは分からないけど」

「そうかもな」、と寂寥にアミは答えた。

 市場が一気に騒がしくなった。燃えた家財を移動させていた大人達はそっちのけに、人溜まりの中に入っていく。

「なんだろう」


 アミと一緒に輪の中に入っていく。輪の中心には茶髪に垂れた犬耳をつけた男が神輿に煽られて、その場の全員が騒いでいた。

「救世主だ」「部族と王国をまとめただそう」「転移者を束ねた」だの、聞こえてくる。部族とまとめたってのは、半分嘘だ。

「帰ってくんなや…」

 アミの顔は引きつっていた。

 噂をすると何やらで、瀬尾くんはこっちを見て神輿から降りて犬みたいに走ってきた。


「アミ帰ってきたぜ」

「あー、オカエリ」

 アミは舌打ちして、瀬尾くんから顔を背ける。

「おかえり、王様との交渉どうだった?」

「全然だわ。5分の1も進んでないと思うな、あ、でも部族を含めた法律の制定と部族が仲良くなりたいってことは伝えたぜ」

 半分もまとめられていなかった。彼の対応は橋渡しだけではあるけど温厚に話せたというのが、わかれば後はミレット達の問題だ。


「ご褒美として、3人のインスタとか連絡先欲しいな」

「は? 嫌なんだけど」

 すぐにアミが嫌がった。

「頼むって〜」

「私はいいよ、何かの縁だしね」


 ポケットからちり紙を取り出して、インスタとラインのIDを書いて渡す。

 瀬尾くんは受け取ると、アミを期待した目で見つめてきた。彼は相当アミが気に入ったらしい。

 アミはため息をついて、私からちり紙と筆を受け取り書いて渡す。


「センキュー!」

 ぴょんぴょん、と跳ね回りながら喜んでいた。やはり犬としか思えない。

「そこまで嬉しいことかねぇ」

 瀬尾くんはまぁまぁイケメンな方だし、女友達が多く居そうなのに、初めてクリスマスプレゼントをもらった子どもばりにはしゃいでいるのが不思議だった。

「嬉しいだろ! 女の子といつでも連絡取れるんだぜ?」

「そうなんだ~。アミたまには連絡してあげなよ」


 顔を背ける金髪シャイガールのわき腹を突っつく。

 すると、ため息をついて

「たまにはしてやるよ」

 アミはまんざらでもない表情をしていた。今までと違って、表情が柔らかい。

「ありがと!」

 瀬尾くんがアミの肩を触れようとしたら、頭を掴んで押しのけてじゃれ合う。


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