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サマー・HSS・マタステイシス  作者: 川上アオイ
最終章 サマー・HSS・マタステイシス
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第15節 終結



歌川視点

【1:24 p.m】



 ここまでエギルちゃんの馬車できたけど、森が燃えているから走ってきたらまさか炎の中心部にいるとは思わなかった。みんなを馬車に置いて単独で来て正解だった。

 この場にいるそれぞれに目を向ける。

 如月はセシルとデロルをトーテムで手当てしている。目が一瞬合うと気まずそうに目を逸らした。


 アミがわざとらしく、私が来たことを嫌そうにしている。それは置いといて

「正確には、止めたっていうか中断してる」

「どうやってだよ」

 アミが聞いてきた、このやり取りも久しぶりだな。

「私達をこの世界に召喚してくれた王女のエギルちゃんが魔力を貸してくれて、止めたの。信じてもらえないと思うけど、金色の壁を戦場に出して止めてます」


 アミがそれ使ったと反応を示した、やっぱりエギルちゃんの言う通り転移者全員に魔力が届いているのか、と内心合致する。

「それは一時的だろう? 今後はどうやって話し合いの場を取り持つのかな」、と猫耳の女の子が言った。アミが彼女の名前を教えるのを嫌そうに言う(彼女のことが嫌いだから名前を言うのが嫌なのだろう)。

「アンダルシア王と話し合ってもらうようお願いしました」

「話し合いの場を設けてくれてありがとう。どうやって解決を望んでいるのかな。オウサマは」


 そこまでは聞いていなかった。一瞬沈黙を挟み応えあぐねる。

 ミレットが呆れた様子で笑って

「どうやって解決するかは、僕達次第っていう宿題を残してくれたのも感謝しないとね」

「ドウイタシマシテ」

「君達転移者はこの世界に何も爪痕を残さずに元の世界に帰るのかい?」

「大きな爪痕は残そうとは思わないよ。目の前の身の回りの人達だけでも変えて救えたら良いなと思ってる」

 そうか、とミレットは心底どうでも良さそうに反応した。如月を見て

「僕は君とこの世界を変えられると思っていたのにな。この世界に来たばかりの君を見てとても期待した。そして約束をして嬉しかったよ」


 如月はそれを聞いて黙った。彼女なりに申し訳ないと思っているのだろう。この世界を変えるために、あまりよくない方法を考えて実行しようとしたのは如月の選択であり、共犯者のミレットという女も悪い。

 自分の思い通りにならなくなった途端に、ああだこうだ言うのは見ていて苛立たしい。

「てめぇ調子乗んなよ。如月の弱みにつけこんで利用した癖に」

 アミが今にもミレットに飛びかかりそうになる。だけど、身体に力が入らないのかその場で怒鳴る。


銃声──。

 皆が銃声がした方を見る。引き金を他でもないこの私だから、見られるのもおかしくはない。

 牢屋でジェームスから王様に銃を奪われないように預かっていたものだ。

 最初に口を開いたのは、撃たれたミレットだった。辛そうに血が流れでる右太ももを手で押えている。


「人の友達を血なまぐさいことにまきこまないでよ。世界を変えるなら手段を選んで変えて」

 ミレットはゆっくりと笑う。

「まさか君がこんなことするとはな。初めて見た時より君は変わったね、元からかな」

「知らないよ」

 銃をスカートと腰に挟む。

 気を抜くみたいに息を引き出して


「さて、ここから移動して王様と話し合おう!」

「そうだな」アミが吃りながらも答える。発砲した後にテンション上げているんだから、そりゃビビる。

「なにもしないよ〜」

両手を広げて何も持っていないことをアピールする。

「歌川って実はサイコパス?」

「如月さん? 失礼ではなくて??」


 私がアミの肩をかかえ、ナミタがセシルを抱え、ミレットがデロルを抱える。

怪我人を抱えて動き出そうとした時、火の中から人が飛び出してきた。顔が熱で爛れていて、誰だかわからないけど、声を聞いてわかった。

「江藤アミ! よくもデロル様を!」


 声でわかったムルラックくんだ。片手にナイフを握っている。

アミを離して庇う。誰かが私とムルラックの間に入った。赤髪だ。

 如月かと思ったが、赤髪には猫耳があり正体はミレットだとわかった。

 ミレットはムルラックの顔を殴る。彼は地面に倒れ込んで動かない。彼女の腹部から血が流れ出ている。

 トーテムを持っていれば止血できたかもしれない。回復魔法を使える人はこの場にいないし。


「ミレットなんで」

 アミは手でミレットの腹部に当てる。服をちぎりアミに渡して止血させるよう指示する。

「君を庇ったのではなく、歌川を庇ったんだ。君が驚く必要は無い」

「明らかにうちを狙おうとしてただろうが、バカが」

 アミは死なせてたまるかよ、と布を押し当て止血する。

「まさか君の顔を最後に見て死ぬなんてな」

「キモイこと言うな、今ここで人が死んだら笑い話にもならねぇだろうが」

 ミレットは何も言わずに目を閉じていく。

「おい! 起きろ!」

「ミレッ トまだ話したいことがあるの!」

 如月が目に涙を浮かべている。

「少し疲れた。眠らせてくれ」


 ミレットは一度開けた目を静かに閉じた。

 何度声をかけても、ミレットが反応しない。手首に手を当てて呼吸音を確認すると、まだ生きている。

 ミレットを光が覆い囲む。治癒魔法の光だ。


「やれやれ。君たちまた燃えている場所に入って厄介だな」


 茶髪を普段は綺麗にセットした髪が今ではボサボサで、服がどこかの文字が刺繡された民族衣装を着ている。


「クロノさん?」

「なんだい、その幽霊が現れたみたいな反応」

「てっきり死んだのかと」

「失礼だな…」

 どうやって部族に襲われた時に、生き延びたか聞くと

「逃げている時に、ギサウ族の方々に助けてもらったんだよ。今まで凄い大怪我してて君たちに会えなかったんだ」

「どうしてここにいるんだよ」、とアミ。

 クロノさんは後ろに立っている女の子を指さした。


「彼女がここまで案内してくれたんだ」

「久しぶりだな、お前ら」

 トガウが立っていた。

「感動話は後にして、まずはここから出るぞ。火の勢いが増している」

 彼女の指摘通り、ここに来た時よりも火が木々に燃え移り大きな火災になっていた。

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