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サマー・HSS・マタステイシス  作者: 川上アオイ
最終章 サマー・HSS・マタステイシス
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第4節 花火


アミ視点

【10:20 a.m】



部族の大群が豆粒みたいに広場に広がっていた。広場は野球場みたいに大きい。コネ族はそうとう敷地を持っているんだな、と素直に関心できた。


「江藤さんよ」

「んだよ」

 うちの肩をチョチョン、と瀬尾が突っついてきた。レディの体を突っつくなんて無礼者だな。

「俺が言ったこと覚えているか?」

「あ? なんだっけ」


「俺らが合図したら、お前はあそこのでけぇ二人のとこ行けって行ったじゃねぇか」

「ああー」

 そんなこと言っていた気もしなくもない。とりあえず、こいつらが部族の気を引くからそのうちに如月と話して止めさせろってことだったな。

「ぜってー覚えてないだろ」

 瀬尾がうちのことをジトって見つめてきた。

「ある程度覚えていたって」

「そうか、頼むぞ。俺らは誰も戦いたくねぇえんだ」

「そうなのか? だって、部族が勝てばお前らの待遇良くなるんだぞ」


 ヌイ族は王国と貿易関係で仲が良いって瀬尾から聞いていた。王国からの報酬金は妥当って感じらしいが、この戦争に勝てば王国の言葉や文化を知っているこいつらは、部族の中でもそうとう優位に立てるだろう。

「それは、わかっているぜ? でもな、金や地位よりも大切なもんがあるだろうがよ」

「なんかかっけぇーこと言うな」

 うちが肩を肘で突っつくと、恥ずかしそうに笑った。

「あと俺と同じくヌイ族は女が大好きだから、今ヌイ族の長である俺がお前と夫婦ってことは、女のために動くのが筋ってもんらしいぜ」

「へぇ。お前ここで暮らしてけば?」


「考えたけどよ。やっぱ元の世界に戻りたいって」

 考えたのかよ。瀬尾は続けて話した。

「親とかダチに会いたいだろ。ここでの生活も新鮮で楽しいけど、やっぱ見知った生活のほうがいいな」

 週一くらいでこっちに戻って生活したい、と笑った。こいつはここでの生活がそうとう気にいったみたいだな。まぁうちもここの生活は楽しかったから週一なら来てもいいけど。

「みんな帰りたいよなぁ。如月は帰りたくないんかな」


「それを今から聞けよ、しっかり時間作ってやるからよ」

 拳を突き出して、言ってくれた。拳を合わせる。

──この世界に来なきゃこいつと会えなかっただろうな。



 高台から3人の上半身が見えた。見下ろしてきた。その中に如月がいた。

「よく集まってくれた」

 如月がイキった表情で言って、おかしくて笑うのをこらえる。あいつ普段あんな話し方しないだろうが。

「今からアンダルシア王国と衝突する。今奴らは我々におののいて動き出せずにいるようだ」

──既定の時刻からすぎているってことは、向こうで何かあったのか。


 歌川の顔が思い浮かんだ。まさか、あいつが止めたのか? だとしたら、上出来だ。あいつが頑張ったんだから、うちも頑張らないとな。

 如月はダラダラと意思表明をしている。あんなの如月じゃない。堂々と誰かを指示して傷つけることなんて絶対考えない。ミレットが考えたんだろうな。あいつはもっとビビりで、他人のことを思いやって良い奴なんだ。

「江藤」

「なんだよ」

 改まった表情で瀬尾に言われた。顔つきからしてこれから作戦を決行するのがわかった。うちはうなずいた。

「がんばろう。後で会おうぜ」


「おう。これが終わったらインスタでもラインでも交換してやるよ」

 瀬尾に続いて何人かが大きな筒を持って人混みをかき分けて進む。

不思議そうにあいつらを見つめる奴らがいた。うちはそれを横目に後ろにいた。ヌイ族のマッチョ二人に話かけて、自分のすることをする。

「やぁやぁ! 俺はヌイ族の長、瀬尾累! 尾崎如月。お前と同じ日本出身で、転移者だ」

 瀬尾が大きな声で話している声が聞こえる。あいつ何をするんだ。

「そうなんだ。よろしく」

 如月は素っ気なく答えた。


「俺らはこの集いを盛り上げたい!だから、極大の花火をあげる! 久しぶりに見たくないか?」

 ざわざわと広場は騒がしくなった。花火をあげるってだけで胸が高なっているんだろうな。うちは群団の後ろに立ち、いつでもできることを合図する。

「花火いいな! 見せてくれよ!」、と叫ぶ。

「見たいよな! じゃあ、あげさせてもらう!」

 大声で返答が返ってきた。あっちも準備できたみたいだ。マッチョ二人の肩を掴む。

「今ではなく、この戦いが終わってからでもいいだろう」

 憎たらしい声が聞こえた。あのクソいたのかよ。


「それでもいいが、今あげた方が景気づけになるだろ? お前らも見たいだろ?」

 見たい、という声が多く聞こえた。それに続いて手を掲げるものがいる。この流れなら、ミレットだって反対できないだろ。

「この場を敵に知らせるようなものだ。あとでにしてくれないか」

 ミレットの言う通りと思ったのか、うちの前にいた部族の男は手を下げた。戦争するんだから、冷静な意見言われたら困るな。


「なんだ? ビビってるのか。部族は余裕ってのを相手に見せつける機会になるだろ?」

 瀬尾の上手い切り返しで、周囲の部族が躍起になって「花火をあげろ」「俺らなら余裕だ」という声をあげている。

「仕方ない。すればいい」

 ミレットの悔しがっている顔見れなくて残念だけど、今は如月を説得するのが先だ。マッチョに持ち上げてもらい、体制を低くする。

「それじゃあ、花火を打ち上げるぞ!」


 瀬尾の合図と共に、花火が打ち上げられた。とても綺麗だ。見とれている場合じゃないとマッチョに肩を叩かれ、うなずく。マッチョの腕に体を乗せて一気に上に飛ばしてもらう。

みんな上を見ているし、花火に夢中だから足元を一直線に吹っ飛んでいる人なんて気づいているわけが無い。着地に失敗して高台の柱に激突して大きな音をたてても誰も来る様子すらない。

急いで立ち上がって、如月がいる高台を登る。


「お前何者だ!」

猫耳の男が2人階段の踊り場で立っていたけど、飛び蹴りで1人の顔面にくらわせて、流れでもう1人の横顔を蹴り飛ばして階段から落とす。

うちは急いでるんだ。許してくれ。

花火に夢中になっているからか警備も上ばっか見てるから、すぐに対処して行動しやすい。瀬尾が考えた作戦は、よく立てられてるな。うちはそこらへんの頭ないから、助かる。

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