終節 覚悟
如月視点
「なんであんなことしたの?」
「なんのことだい?」
ミレットは髪をいじりながら、答えた。
しらばっくれているな。
「とぼけないで。アミのことあそこまで乱暴にしてたじゃない」
「ああ。そのことか」
髪をいじるのをやめて、左上を向いてからこっちに微笑みかけた。まるで、今思い出したみたいに答えているみたいで、癪に障った。
「次アミとか、あたしの友達知り合いに酷いことしたらあなたとの関係は取り消すよ」
「それは困る。君ならやりかねないから、気をつけておくよ」
テントの中に置かれた焚き火が、大きな音をたてた。木が弾けた音だろう。
「本当に覚悟はあるのかい?」
「ある。変えるために来たんでしょう」
何が面白いのかわからないが、ミレットは口元に腕を当てて笑いをこらえていた。
「なに? なにか変なことでも言った」
失礼、と彼女は真剣な顔つきで答え続けて話す。
「君も変わったな、と思ってさ」
「そうね。今までのあたしとは違う。変わらないとこんなことできない」
「そうだよ。君は変わったんだ。これから大勢の人間は死ぬ代わりに、君はこの世界を変える、革命児となるんだ」
またミレットは笑っている。薄気味悪い奴だと思った。
「本当に成し遂げれば、元の世界に帰れるんだよね」(てんをうつ)
「ああ、本当だ。今は王様に転移の主導権がある。殺せば、僕が転移の魔法で君たちを安全に帰らせてあげるよ」
彼女の言っていることは、全部信用できるわけではないけど筋が通っているところもあった。
王様がただで帰らせてくれるわけがないというのには、少し理解できた。もしかしたら、監禁されて有意義な情報を言うまで、拷問されるかもしれない。
そこであたしは、なら安全に帰る方法を選び、この世界を良くして帰る。
ジュ、と音がした。その方向を見るとミレットが焚き火に水をかけていた。
「もう寝よう。明日から大変になる」
「おやすみ」




