第16節 野望
デロル視点
「とてもお似合いです」
ムルラックくんが僕の服を見て言いました。彼が選んだので、特に不安はありませんでしたが、言われると嬉しいものですね。
「そうですか、ありがとうございます」
彼は表情をガラリと変えて
「明日コネ族を本当に襲うのですか?」
不安に思う気持ちは、僕にもわかります。僕を含めて隊としては、10人にも満たないのですから。
「大丈夫です。恐らく王国の兵や江藤アミらがコネ族を止めるために動きます。それに乗じれば人数が少ないこちらでも正気は全くもってあります」
ムルラックくんは安心したのか、柔らかい表情になりました。
「なら、大丈夫そうですね。コネ族を襲って勝ったらどうする予定ですか?」
「僕が国王になります」
「え?」
戸惑った表情をしました。
空気も止まった気がします。
部族が使っていた虫時計なるものが、うるさく動いています。その周りに散らばっている部族の死体に群がるコバエの羽音も微かに聞こえてきました。
「冗談ではありませんよ?」
「いえ。はい。表情や話からで決してふざけているわけではないのはわかりますが、理由がわかりません。国に普通に戻れると思いますよ」
「僕もそれは思いました。ですが、あの国は部族の力を借りるという愚かな思想があります。それを根本から変えなければ意味がありません」
「ですが」
ムルラックくんはそこで言葉を止めました。彼なりに思い悩んでいるのかもしれません。
「いいですよ。反対の意見も聞きます。なんなら、これを聞いて作戦に参加するのはやめるといっても構いません」
「そういうわけではないです。ただそこまでして、なぜ部族を憎むのかが気になりました」
「家族が殺されました。この世界ではよくあることです。ただそれだけのことです」
「それはわかりますが、転移者までも憎む意味も部族全員が悪というわけではないのでしょうか」
彼も家族が部族に殺されて、一時期部族というだけで憎んでいました。そんな彼がここまで言うということはそれほど、心配してくれているのかもしれません。
「見た目が違うというのが、必ず争いと差別の種になります。ならば、ここでそれを閉ざさなければ、永遠に人が死に続けます」
「それじゃあ、デロル様が悪役ではありませんか…」
ムルラックくんは顔を床に向けて、悲しそうな表情が前髪越しから見えました。
「それでいいです。なので、あなたさえよければ一緒に世界を変えてくれませんか?」
「はい!」
私が差し出した手を握ってくれました。
「ありがとうございます。それでは明日コネ族を襲うときは背中を任せましたよ」




