第13節 天敵
アミ視点
「着いたぞ」
瀬尾に言われて、急いで荷台から降りる。
夕陽が目に当たって痛い。視線を逸らすために下を向くと吐きそうにもなる。
馬車の荷台に揺られていたから、気持ち悪い。山道だったから道が荒いから振動が、エグかった。立っているだけなのに、地面が揺れていると錯覚しちまう。
「おい。江藤大丈夫か?」
瀬尾が背中をさすりながら言った。
「大丈夫、それより如月のとこはまだ?」
「あと少しだ。今のうちにいっぱいゲロって、体調良くしとけよ。ヌコ族の長と話す機会があるから、お前はその時に尾崎を説得するんだからな」
「ああ、わーってる」
前の方には、長蛇の列ができていた。馬車と一緒にマントを羽織った人がズラッといる。
「なんで、あんなに並んでるんだ」
「全員王国を潰すために集まってるんだろうな。凄い大きな戦争になりそう」
瀬尾が悲しそうな顔で言った。
「戦わせないために、ここに来たんだっつーの」
「そうだったな! たぶん、これ結構時間かかるな。全員受付している感じだろうし」
「それじゃあ、ダメだ! 列を抜いて」
列の間を通る道も隙間道もなかった。
急ぐなら、整備されていない山道を通るしかなさそうだ。
「まさか、あの山道通るのか?絶対あぶねーからやめとけ」
「じゃあ、どうすればいいんだよ」
「あるだろ、真ん前に」
ニヤッと瀬尾は笑った。
「あ?あー、そういうことね」
「ちょっとすまねぇな」
「わり、ちょっと急いでる!」
馬車や人の頭を踏みながら、うちと瀬尾は移動している。道がないなら、作ればいいんだわ。
「人の頭乗るんじゃねぇ!」
「急いでるから! 許して!」
頭を踏むたびに、怒号が飛び交う。少しくらい許して欲しい。逆に女の子に踏まれているんだから、感謝してほしいもんだ。別に軽いだろ。
「君たち何をしている!」
列の整理をしていた男達がこっちを見て、列をかき分けながらこっちに来る。
「俺がこいつら足止めしとくから、先に行け」
「いいのか?」
「あとで、尾崎のライン教えろよ!」
瀬尾は荷台の屋根から飛び下りて男達に突っかかりに行った
「すぐ終わらせて来るからな」
列の先頭が見えてきて、荷台から降りて人の間を通って列から出る。
「まだこんなにいるのかよ」
木のゲートを抜けて、広場には隙間もないくらい大勢の人がいた。
人の間を通ると、獣臭がして鼻が痛かった。
──如月はどこだよ。
人の波にのまれながらも、周囲を見るけど如月らしい人がいない。
「如月ァ! どこだ!」
大声で叫ぶと周りの奴らが見てきた。それでも、うちは叫び続ける。
「 !」
うちより一回りも二回りもでかい男に、胸ぐらを掴まれた。
「なんって言ってるかわかんねぇよ」
頭突きをして、男から離れる。
男はマントを投げ捨てた。スキンヘッドで角が入っている。頭には切り傷がいくつもあった。
「痛そうな頭してんな、植毛失敗したのか?」
「 」
「お前もうちが言ってることわかんねぇよな」
男に突撃して、拳を当てようとした瞬間「待て」、と言われた。
手を止めて声の方を見ると、人の波が割けて1人の女が出てきた。
「お前ッ!」
赤髪の猫耳に、骨のアクセサリーを首や手首、耳からぶら下げている。この女は、嫌でも覚えている。
如月を連れ去られた張本人だ。
「久しぶりだね。江藤アミ」
「あ? お前次会ったら殺すって言ったよな」
「そんなこと言ったけ? なにせ僕の圧勝だったからさ」
「あの時は疲れてただけだ。今は体調も万全だしお前のこと殺せるぜ」
赤髪の猫耳女は、ため息をついて
「殺す、殺すって物騒だねぇ。そんなに僕とやりあいたいなら、移動しよう」
赤髪の猫耳女は、うちに背を向けて歩き出した。
その後ろをついていく。
「如月くんは元気だよ」
「見たよ、あの変な動画。お前洗脳しただろ」
「洗脳?」、と言って笑った。
「してないよ、そんなこと彼女が選んだことだ」
「そんなことねぇ。あいつと3年一緒に過ごしてきたから、あんなことしない奴だって知ってる」
「僕より知っているかもしれないね。でも、ほんの一面だけだろう? 氷山の一角に過ぎない。彼女はここに来て変わった。君も少しは変わったらどうかな」
「黙ってろよ」
後ろから、腕で首を締め上げる。
「そういうところだよ。すぐ暴力で解決しようとするところ。だから、君を選ばなかった」
「何言ってんだ。ここで殺されてぇのか?」
「ミレット様!」
うちの周りに、槍を持った人らが集まってきた。
赤髪の猫耳女は、手を挙げた。たぶん何もするなってことだろう。実際誰も襲ってきてないし。
「まぁ落ちつけよ。君は如月くんを連れ戻しにきたのだろう?なら、僕を殺したらダメだよ」
腕をどけると、首元を手で涼しい顔でさすっている。
「偉いじゃないか、あと少しで如月くんにも会えるし、僕とケンカできるよ」
「しゃべらずに、さっさと案内しろや」




