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サマー・HSS・マタステイシス  作者: 川上アオイ
第3章  ハイジャック・サマー
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第9節 指合わせ


歌川視点



 クレアくんと退屈(しの)ぎに、『指合わせ』をやっている。


 このゲームは、両手の親指をどちらが先に下げるかというゲームだ。攻め手がゲームに参加している両手の親指分の数、数字を宣言できる。

 今の場合だと、2人だから0~4まで宣言できる。


 宣言時に攻め手守り手、両方とも任意に親指を立てる。数字の数分、親指が立っていたら手をさげてる。宣言した数字と数が合わなければ、相手に攻め手が変わる。両手を先に下した方が勝ちだ。


「いっせーの、せ。2」、と私が宣言した。

 私は両手の親指を立てているが、クレアくんは両方とも下げている。

 この場合は、不成立で何も起きずに相手の番だ。


「いっせーの、せ。1」

 クレアくんが指を立てていない。でも、私は片方上げていた。

 宣言した数字分、指が上がっていたため、このセットはクレアくんの勝ちだ。

「やった」

 クレアくんは、片手を膝の上に置いた。


「まじか! いっせーの、せ。3!」

 私は両方とも上げて、クレアくんは下げている。

「当たんないなぁ」

「いくよ。いっせーの、せ。0」

 どちらとも、指を下げている。


「うわぁ。負けた! クレアくん強いね」」

「そうでもないよ」

 廊下から走る音がする。反響してどんどん大きな音になっていく。

「お前ら!」

 ジェームスが、牢屋の鉄格子を掴んで言った。

「すぐ戻ってきて、どうしたの? 出すつもりになった?」

「出す。それよりもヤバいことが起きた」

「なになに?」


「尾崎如月が部族と一緒に、反乱を起こした」


「え?」

 ジェームスが言ったことが信じられなかった。だって、あの如月が争いの火種になるなんて思わないよ。でも、彼の顔は噓をついている様子ではなかった。


「本当なの?」

 ジェームスは、うなずいて

「これを見ろ、アンダルシア王国と周辺の部族にトーテムがばらまかれた」

 ポケットからトーテムを取り出した。トーテムから映像と音声が流れる。


 そこには、黄金の(かんむり)をつけてイムル村の民族衣装ではなく、獣の毛皮のマントを羽織(はお)って、赤色の和服を着ている。その和服には、見たことない刺繡(ししゅう)がされていた。


『あたし達は、アンダルシア王国を滅亡させる』

 映像から如月の声ではっきりと言った。

『王国は我々部族に対して、迫害を行い、幾多者(いくたもの)同胞を殺した。今こそ反乱の時! 我々コネ族と一緒に王国を滅亡させる同士を求めている!』


『あたしは、転移者だ! この世界を変えに来た! これから部族の世界を築く! どうかあたしに力を貸してくれ!』

 彼女がそう言うと、映像越しから大勢の雄叫びが聞えた。


「如月…」

 信じられなかった。私とアミが言い争っていると、すぐに止めてくれる彼女が争いを生むなんて。しっかりもので、お茶目で、生物が得意で、笑った時に(しわ)を寄せて綺麗に歯を見せて笑うあの子が、遠くに感じた。


 手を握られて、ハっとする。その手を見ると小さな手で

「大丈夫?」

 と、私の顔をクレアくんがのぞきこんだ。

「大丈夫だよ。ありがとうね」


 ガッシャン、と牢屋が開いた。

「今は出よう。王様がお前を呼んでいる」

「なんで?」

「お前にしかできないことがあるからだ」

 ジェームスは、私に銃を渡した。


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