第9節 指合わせ
歌川視点
クレアくんと退屈凌ぎに、『指合わせ』をやっている。
このゲームは、両手の親指をどちらが先に下げるかというゲームだ。攻め手がゲームに参加している両手の親指分の数、数字を宣言できる。
今の場合だと、2人だから0~4まで宣言できる。
宣言時に攻め手守り手、両方とも任意に親指を立てる。数字の数分、親指が立っていたら手をさげてる。宣言した数字と数が合わなければ、相手に攻め手が変わる。両手を先に下した方が勝ちだ。
「いっせーの、せ。2」、と私が宣言した。
私は両手の親指を立てているが、クレアくんは両方とも下げている。
この場合は、不成立で何も起きずに相手の番だ。
「いっせーの、せ。1」
クレアくんが指を立てていない。でも、私は片方上げていた。
宣言した数字分、指が上がっていたため、このセットはクレアくんの勝ちだ。
「やった」
クレアくんは、片手を膝の上に置いた。
「まじか! いっせーの、せ。3!」
私は両方とも上げて、クレアくんは下げている。
「当たんないなぁ」
「いくよ。いっせーの、せ。0」
どちらとも、指を下げている。
「うわぁ。負けた! クレアくん強いね」」
「そうでもないよ」
廊下から走る音がする。反響してどんどん大きな音になっていく。
「お前ら!」
ジェームスが、牢屋の鉄格子を掴んで言った。
「すぐ戻ってきて、どうしたの? 出すつもりになった?」
「出す。それよりもヤバいことが起きた」
「なになに?」
「尾崎如月が部族と一緒に、反乱を起こした」
「え?」
ジェームスが言ったことが信じられなかった。だって、あの如月が争いの火種になるなんて思わないよ。でも、彼の顔は噓をついている様子ではなかった。
「本当なの?」
ジェームスは、うなずいて
「これを見ろ、アンダルシア王国と周辺の部族にトーテムがばらまかれた」
ポケットからトーテムを取り出した。トーテムから映像と音声が流れる。
そこには、黄金の冠をつけてイムル村の民族衣装ではなく、獣の毛皮のマントを羽織って、赤色の和服を着ている。その和服には、見たことない刺繡がされていた。
『あたし達は、アンダルシア王国を滅亡させる』
映像から如月の声ではっきりと言った。
『王国は我々部族に対して、迫害を行い、幾多者同胞を殺した。今こそ反乱の時! 我々コネ族と一緒に王国を滅亡させる同士を求めている!』
『あたしは、転移者だ! この世界を変えに来た! これから部族の世界を築く! どうかあたしに力を貸してくれ!』
彼女がそう言うと、映像越しから大勢の雄叫びが聞えた。
「如月…」
信じられなかった。私とアミが言い争っていると、すぐに止めてくれる彼女が争いを生むなんて。しっかりもので、お茶目で、生物が得意で、笑った時に皺を寄せて綺麗に歯を見せて笑うあの子が、遠くに感じた。
手を握られて、ハっとする。その手を見ると小さな手で
「大丈夫?」
と、私の顔をクレアくんがのぞきこんだ。
「大丈夫だよ。ありがとうね」
ガッシャン、と牢屋が開いた。
「今は出よう。王様がお前を呼んでいる」
「なんで?」
「お前にしかできないことがあるからだ」
ジェームスは、私に銃を渡した。




