第8節 証明
歌川視点
「クレアくん、痛いところない?」
「うん」
クレアくんは、牢屋の壁に寄りかかって体育座りをしている。
私も足を胸に寄せて座る。岩が枠目状に壁に貼られていて、寄りかかると背中が痛い。
「ありがとうね、私のために言ってくれて」
クレアくんは一瞬目を大きく開けて、その後に目を逸らした。
「でも、尾崎達を探すための兵士集めてもらえなかった…」
「ううん、そんなことないよ。すごく嬉しかった!」
立ち上がって、頭を撫でる。
目に光が当たって、その方向を見る。
通気口のためか空いた四角い穴には『#』の字に鉄格子が設置されている。
「ここから出れるかな?」
「僕でも無理だよ」
鉄格子を掴んで、体重をかけて外そうとするがビクともしない。
「無理だね…」
「お前ら何してんだ?」
ジェームスが牢屋と廊下を繋ぐ、鉄格子から見つめてきた。
「ここから出ようとしてんの」
「お前ら終身刑だぞ」
「ジェームスどうにかしてよ!」
鉄格子から手を出して、服を掴もうとしたら後ろに逃げられた。
「噓だ。明日まで監禁する約束になってんだ」
「なんで?」
「あの王様の面目を保つためだ」
「ええ…。銃あるんだから、どうにかしてよ」
「これは、本当は帰る時に使おうとしてたんだぞ。逆に、感謝してほしいくらいだな」
「帰る時に使うの?」
ジェームスは、銃を取り出して手で傷を確認するみたいに見ている。
「ここに居られる期限は、わかっても帰る方法までは教えてもらってないんだ。だから、帰る時に魔法を使うんじゃないかってにらんでる」
「脅すために使うんだ…。怖い怖い」
「なのに、お前らときたら」、とため息をついた
「申し訳ないっす」
「思ってんのか? ここで、撃ってもいいんだぞ?」
ジェームスが銃口を向けてきた。
「思ってるって!」
彼は、馬鹿にした感じで笑って、鉄格子から離れていく。
「もう行くの?」
「ああ、長いできないからな」
手を振る姿を見ながら、私はご飯とかオモチャ持って来い、と内心悪態をついた。
* * * * *
セシル視点
お父さんの服を入れた箱から、寝間着を取り出してトガウさんが待っている待合室に持っていきました。トガウさんは、自分が出したお茶と菓子を美味しそうに食べています。
「キタカ」
「すみません、お待たせしました」
ナミタも後から、部屋に入ってきて如月さんとアミさんの服を、鼻をつまみながら持ってきました。
「なんかいい匂いすぎてはらたつ」
「彼女らは、元の世界のスプレェ? で服に匂いつけてるらしいですよ」
「なるほどね」
席に座り、お父さんの服と如月さん達の服を、トガウさんに渡します。
それぞれの匂いを、クンクンと音を立てながら嗅いでます。
「わかりますか?」
マントの下から、赤い目と目が合いました。宝石みたいでキラキラしています。
「オンナの匂いスゴイからワカル。でも、オトコわからない」
「そうですか…。とりあえず、アミさん達の捜索をお願いします」
トガウさんは、手を出しました。
「はい?」
「前払い。ご飯ヨコセ」
「わかりました…」
トガウさんに、食料品や村で使っていた服を渡して、またしている間に自分は村長代理となる方に、趣旨を説明しました。潔く承諾してくださり、とても助かりました。早くお父さん達を見つけて戻らないといけないです。
馬車に軽い食料品と服を乗せて、今すぐにでも出られるようにしました。
「セシル」
トガウさんが、大きな荷物を背に話しかけてきました。彼女の表情は、マントの影でよく見えません。
「どうかしましたか?」
「マズ、オレの家に向かう」
「なんでですか?」
家(彼女の村かもしれません)に向かう必要性を感じませんでした。もしかしたら、自分達を襲うつもりかもしれないです。
「家をヤスム場所にして、ススム。馬がツカレル。オマエラもツカレル。何もシナイ」
「本当に言ってるの?」
ナミタが、荷台から降りてトガウさんの前に立ちました。2人の身長はそこまで変わらないのに、ナミタが高圧的な態度をとっているからか大きく見えます。
「ホントウダ」
「なら、証拠見せて。契約してもいいし、あんたの大切なものを人質にさせてよ」
トガウさんは、マントをとり自分達に素顔を見せました。彼女の素顔は童顔で、部族の特徴である人間にはない耳が頭部付近にあります。その耳は長く伸びていて、彼女の髪色の白と同じ色の毛でした。
「なによ」
ナミタは、少し驚いている様子でした。
トガウさんは、背に背負っていた荷物を降ろして、中を漁っています。漁っている間も耳がピクピクと動いています。
何か見つけたのか耳の動きと手の動きが止まり、荷物からナイフを取り出しました。
「襲うつもりなの? 自分の要望が通らなかったからって」
耳を上に引っ張り、トガウさんは自分の右耳を切り落としました。
「な、なにやってんのよ!」
「トガウさん!」
急いで耳に治癒魔法をかけると、出血は止まりましたが彼女が左手で持っている耳は元に戻りはしないことがすぐにわかりました。自分の能力とこの世界の医療では、彼女の耳をくっつけることはできません。
「これが、ショウメイだ」
トガウさんは、涙を流しながら言いました。痛そうに呻き声をあげています。
「そこまでしなくても…。適当に契約書に書けばいいのに」
ナミタの言う通りだと思いました。ですが、トガウさんは発言に対して首を横に振りました。
「オマエラとオレの関係サイアク。ココマデしないと信用ナイ」
「確かにそうだな。これからは、お前のこと少しだけ信用してやるよ」
ナミタは手を差しだすと、トガウさんは握りました。
「ナラ、早くイコウ」、と笑いました。




