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サマー・HSS・マタステイシス  作者: 川上アオイ
第3章  ハイジャック・サマー
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第7節  ヤクソク


セシル視点



 如月さん達が村から出ていってから、2日近く経ちました。

 村には、兵士が出入りしなくなり住人だけで火事の後始末をするよう、指示されました。

 あの頃と違って、村に活気はなく皆さんなあなあで、燃えた家財を整理しているようでした。


「セシルさん」

 私より年上のお兄さんが言いました。彼は困った表情をしていました。


 自分は今は父の代わりに村長として務めています。

 お父さんの生死が不明なため、みんなは村長代理に仕事を任せていましたがこんな現状を1人で賄いきれるわけもなく、心身の疲労は目に見えました。そこで、私が名乗りをあげて、村長の業務を手伝うことになりました。


「歌川さんと、江藤さんとナミタを探しているという人物が」

「2人に何かあったのですか?」

 自分が食い気味に言うと、お兄さんはどもった。

「いや、借りがあるから。呼べと部族が」


 お兄さんに案内されて、移動すると人だかりができていました。怒っている方、困惑している方が両極端にいました。


「どうかしましたか」

 集団に声をかけると、波が引くみたいに道ができてその先には、薄汚れたマントを羽織った子どもがいました。

「歌川、江藤、ナミタ、ヤクソク。金と食事ヨコス」


 声色は、高くざらついていた。声からして女の子だとわかりました。

 彼女は革製のカバンから、何かを探しています。カバンから手を出すと、書類を握っていました。


「ヤクソクした。歌川ゼッタイ渡す」


 彼女から渡された書類を見ると、『トガウに金か食べ物を渡します。数日経っても来なかったら、イムル村のセシルに私達の名前を伝えてください』と子どもが書く字体で書かれていました。


「もしかして、あなたが優花さんをここまで案内してくれた部族ですか?」

彼女はうなづいた。

「そんな恩人に、失礼ですし狭いところですが、室内で話しましょう」


*  *  *  *  *


 集会所の村長室に、彼女を招きいれてお茶と菓子を出しました。非常食や毛布で溢れかえっていますが、ここくらいしか静かに話せる場所がありません。


「すみません、こんなところで」

「イイ。村タイヘンだったんダロ」

「ええ、そうです」

「そういえば、挨拶がまだでしたね。私はセシル・マルクヴィーです」

「トガウだ。ギサウ族のシュッシンだ」


 互いに黙っていると、部屋の扉が叩かれました。

 どうぞ、と声をかけると開かれてナミタがいました。

「お前あの時の」

 開口一番に、トガウを嫌そうな目で見つめて言いました。トガウは、気にしていない様子でした。

「ヤクソク守れ。金と食事ダセ」

「私じゃなくて、セシルに言ってよ」


 自分の隣の席に座って、ナミタはため息をつきました。

 トガウは、自分を見つめてきました。

「申し訳ありませんが、金銭の(たぐい)は今全くないのです…。もちろん、後日出しますけど」

 トガウは、舌打ちをした。


「アイツラどこ?」

「村を出て、友達を探しに行きました」

  言ってたな、とカタコトながらも彼女は言いました。そして、立ち上がりました。

「もう行くのですか」

「ココジャナニモナイ。アイツラ追う。責任トッテもらう」

「どこにいるかわかるんですか?」

「ココラノ山は誰よりもクワシイ。誰がドコなのかワカル」


 ナミタは、机から身を乗り出して

「じゃあ、赤髪の女もわかるってこと?」

「ワカル。トクチョウと匂いガアル物ダセ」

「わかった」、とナミタは席から立ち上がりました。

 彼女の手を掴んで

「まさか彼女に任せるつもりですか?これ以上はさすがに申し訳ないですよ」

「もしかしたら、クロノさんも見つけてくれるかもよ」


 ナミタの言う通りもしかしたら、お父さんを見つけてくれるかもしれません。

「ですが…」

「手がかりになるのは、これしかないじゃない。行こうよ」

 ナミタは私の手を触れて、見つめてきました。


「申し訳ありませんが、自分の父と友人を探してもらうのを手伝ってもらえませんか?」

 頭を下げて、トガウに心の底からお願いをしました。


──お父さんを見つけられなかったとしても、せめて友達である如月さん達だけでも、無事見つけて元の世界に返してあげたい。

「ワカッタ。見つけられないトシテモ報酬出す。ヤクソク」

 トガウさんがの口元が上がったのが見えた。

「はい…」

 自分は書面に、彼女との約束を書いて渡しました。


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