第6節 銃
歌川視点
「ダメってどういうことですか?」
アンダルシア王は、王座に座って、前回と同様に座っている。
肘置きに肘を置いて、手で顔を固定して
「助力してやりたいが、今は無理だ」
「理由をお聞きしてもよろしいでしょうか」
「部族の動きが最近活発なのだ。人員を割こうにも足りない」
「そんな」
──そんなことより、勝手に私達を連れて来たんだからどうにかしてください。
そう言おうとしたが、あごに力を入れて押し殺す。
「コネ族が襲ったらしいので、それを建前に潰しにいくのは、どうですか」
私の横で、膝をついているジェームスが提言した。
「それも一興だな」
「平和的解決を望みます!」
食い気味に言った。言ってから、自分がしたことに驚いた。でも、後悔はしていない。
アンダルシア国王の顔を恐る恐る見ると、目を見開いてから見知らぬ箱の中を開けるみたいに、私を見つめて
「ほう?」
「向こうも急に来訪したというのはありますが、最初は話し合いだけだったらしいです。なので、彼らも争う気はなかったと思います」
「其方の友人を浚ったのにか。優しいのだなぁ」
私は答えに戸惑った。国王が言うことはごもっともだし、実際人を浚ったのはほとんど確定なのだから、戦争する理由にはなる。
「歌川なら、平和に解決できる」
クレアくんが言った。彼はすぐさまに「できます」、と付け足した。
「その根拠を述べよ」
王様は、事務的に言っているように思えた。
「できると思うからです」
「それは、なんの根拠でもないのだぞ」
ため息をついて
「女子であり、転移前は普通の学生だったのだろう。ここに来て、何かしたのか? 戦争を止めたのか? 結果を残していないのなら力添えする気にもならんぞ」
クレアくんは黙っていた。悔しそうに、目に涙を浮かべている。
「ありがとうね」、と小さな声で伝えた。
「王様なら」、とクレアくんが呟いた。
「王様なら、女の子1人、2人でもいいから助けてよ」
激しく貧乏ゆすりをしながら、王様はクレアくんを見つめている。
クレアくんの背に手をおいて
「いいの」
と、首を振って言った。
「アンダルシア王失礼しま」
「何故、女子如きに人員を割かねばならん」
私が謝罪しようとしたら、拗ねた子どもみたいに割りこんで、王様は言った。。
「それにしても、今回の転移人は失敗だな。計4人いたとして、全員が学生で、有意義な結果を残せるほどの技術はないのかね。100年前ならば、刀や建物の技術を教わったから、今はどのようになっているかと思ったら…」
私を横目に王様、オッサンはため息をついた。
──こいつ、嫌みったらしいな。
「誘拐されたから助けるのは、まだわかる。仲間を連れ戻しに行って」鼻で笑って「行方不明とは。自業自得にもほどがあるだろうに」、と言った。
「勝手に、転移させたんだからそっちの責任ですよね? こっちだって、学校がまだあったんだ。ましてや、夏休みに突入するところだったのに。
それで、技術を教えてもらえなきゃ失敗って、転移ガチャどぶったくらいで言わないでくださいよ。王様なら自国の技術開発している人達を支援してください」
オッサンの勝手な言い分にイラだっていた。期待にそえなかったのは、申し訳ないけど、人のことを勝手に転移させて、友達のことを馬鹿にするのが許せなかった。
オッサンは、椅子を倒して立ち上がって
「貴様! この場で殺してやってもいいんだぞ!」
兵士が剣を持って、私の周りに立った。
立ち上がって、王様をにらみつける。
「私のこと殺してもいいです。その代わりにアミ達を救ってくださいよ」
「歌川のことは、殺させない」
クレアくんが私の前に出て、両手を広げた。
「もういい。貴様ら2人殺す。転移人2人は知らぬ、勝手に死ねばいい」
オッサンは、ため息をついて手を下げる。
兵士が一斉に、私達に剣を振り下ろした。
銃声──。
「技術が欲しいんですよね。なら、こいつを殺さない代わりに俺らの世界にある兵器について、教えてあげます」
銃声の方向を見ると、ジェームスが拳銃を片手に天井へ銃口を向けている。
「な、なんだそれは」
「これは…ミサイルです」
「いや、違います。拳銃です」
ジェームスの虚言を、即座に訂正する。
「どっちなのだ。殺さないでおくから、その技術を教えろ」
「おいおい。立場をわきまえてくれよ」
銃口をオッサンに向けて、ジェームスは厭らしく笑った。
「貴様、反旗を翻すのか!」
「ああ。だって、この国の技術は俺らの世界より全然遅れているからな。魔法だって、俺らの世界にあるし、このちっぽけな銃より凄いのがある」
──魔法なんてないでしょ!
私の表情の変化を見たのか、ジェームスはにらんできた
「貴様騙していたのかっ。魔法なんてないはずでは、ないのか」
「相手の手の内を見ておきたかったからな。こいつも銃を持ってるぜ」
私をあごで指して、笑いかける。
──そのはったり乗ってあげる。
「それ言っちゃダメでしょ。オウサマがビビっちゃうよ」
前髪をかきあげて、オッサンに微笑みかける。
「貴様らァ!」
王様の表情が強張った。
私は右手の人指し指で、オッサンを指して親指で標準を合わせる。
「これが私の銃」
「ヒィ!」
オッサンが頭を抱えてしゃがんだ。それを囲うように、兵士が集まっている。
「あまり調子にのるなよ」
ジェームスが小耳に挟んだ。
「おもしろいから悩むなぁ」
もう一度、手の銃を見せるとオッサン達がひるんだ。
「BANG! BANG!」
「やめてくれ!」
何度も銃を打った振りをすると、大声を出している。おもしろいなぁ。
「それそれ。BANG、BANG!」
「何もおきていない…?」
誰かが言った。
──まずい。
「次動いたら、本当におきるよ」
「ほう? なら、心臓を撃ち抜いてみせろ」
オッサンが立ち上がって、両手を広げた。
「え?」
「撃たないのか? いや、撃てないのか」
──噓だってばれてる。
「いや、あの…」
手を下げる。
「俺のは、本物だ。こいつが調子にのったことは謝るが、殺さないでやってくれ」
ジェームスが銃をチラかせて、囁いた。
「調子にのるなって言っただろうが」
王様は、席を立て戻し座って
「わかった。其方には、何かと世話になったからなぁ。だが、用済みになった時覚えていろ」
兵士に向かって「あの小娘と小僧を独房に連れてけ」、と言った。彼らは指示通り私の周りに来て、腕を掴んだ。クレアくんも捕まっている。
王様をにらみつけて
「アミ達のこと、絶対に助けなさいよ」
「貴様が謝れば、してやらんこともない」、と鼻で笑った。




