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サマー・HSS・マタステイシス  作者: 川上アオイ
第3章  ハイジャック・サマー
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第6節 銃


歌川視点



「ダメってどういうことですか?」

 アンダルシア王は、王座に座って、前回と同様に座っている。

 肘置きに肘を置いて、手で顔を固定して

「助力してやりたいが、今は無理だ」

「理由をお聞きしてもよろしいでしょうか」

「部族の動きが最近活発なのだ。人員を割こうにも足りない」

「そんな」


──そんなことより、勝手に私達を連れて来たんだからどうにかしてください。

 そう言おうとしたが、あごに力を入れて押し殺す。


「コネ族が襲ったらしいので、それを建前に潰しにいくのは、どうですか」

 私の横で、膝をついているジェームスが提言した。

「それも一興だな」

「平和的解決を望みます!」

 食い気味に言った。言ってから、自分がしたことに驚いた。でも、後悔はしていない。


 アンダルシア国王の顔を恐る恐る見ると、目を見開いてから見知らぬ箱の中を開けるみたいに、私を見つめて

「ほう?」

「向こうも急に来訪したというのはありますが、最初は話し合いだけだったらしいです。なので、彼らも争う気はなかったと思います」

其方(そなた)の友人をさらったのにか。優しいのだなぁ」

 私は答えに戸惑った。国王が言うことはごもっともだし、実際人を浚ったのはほとんど確定なのだから、戦争する理由にはなる。


「歌川なら、平和に解決できる」

 クレアくんが言った。彼はすぐさまに「できます」、と付け足した。

「その根拠を述べよ」

 王様は、事務的に言っているように思えた。

「できると思うからです」

「それは、なんの根拠でもないのだぞ」


 ため息をついて

「女子であり、転移前は普通の学生だったのだろう。ここに来て、何かしたのか? 戦争を止めたのか? 結果を残していないのなら力添えする気にもならんぞ」

 クレアくんは黙っていた。悔しそうに、目に涙を浮かべている。

「ありがとうね」、と小さな声で伝えた。


「王様なら」、とクレアくんが呟いた。

「王様なら、女の子1人、2人でもいいから助けてよ」

 激しく貧乏ゆすりをしながら、王様はクレアくんを見つめている。

 クレアくんの背に手をおいて

「いいの」

 と、首を振って言った。


「アンダルシア王失礼しま」

「何故、女子如きに人員を割かねばならん」

 私が謝罪しようとしたら、()ねた子どもみたいに割りこんで、王様は言った。。

「それにしても、今回の転移人は失敗だな。計4人いたとして、全員が学生で、有意義な結果を残せるほどの技術はないのかね。100年前ならば、刀や建物の技術を教わったから、今はどのようになっているかと思ったら…」

 私を横目に王様、オッサンはため息をついた。


──こいつ、嫌みったらしいな。

「誘拐されたから助けるのは、まだわかる。仲間を連れ戻しに行って」鼻で笑って「行方不明とは。自業自得にもほどがあるだろうに」、と言った。


「勝手に、転移させたんだからそっちの責任ですよね? こっちだって、学校がまだあったんだ。ましてや、夏休みに突入するところだったのに。

それで、技術を教えてもらえなきゃ失敗って、転移ガチャどぶったくらいで言わないでくださいよ。王様なら自国の技術開発している人達を支援してください」

 オッサンの勝手な言い分にイラだっていた。期待にそえなかったのは、申し訳ないけど、人のことを勝手に転移させて、友達のことを馬鹿にするのが許せなかった。

 

 オッサンは、椅子を倒して立ち上がって

「貴様! この場で殺してやってもいいんだぞ!」

 兵士が剣を持って、私の周りに立った。

 立ち上がって、王様をにらみつける。


「私のこと殺してもいいです。その代わりにアミ達を救ってくださいよ」

「歌川のことは、殺させない」

 クレアくんが私の前に出て、両手を広げた。

「もういい。貴様ら2人殺す。転移人2人は知らぬ、勝手に死ねばいい」

 オッサンは、ため息をついて手を下げる。

 兵士が一斉に、私達に剣を振り下ろした。



 銃声──。

「技術が欲しいんですよね。なら、こいつを殺さない代わりに俺らの世界にある兵器について、教えてあげます」

 銃声の方向を見ると、ジェームスが拳銃を片手に天井へ銃口を向けている。

「な、なんだそれは」

「これは…ミサイルです」

「いや、違います。拳銃です」

 ジェームスの虚言を、即座に訂正する。

「どっちなのだ。殺さないでおくから、その技術を教えろ」


「おいおい。立場をわきまえてくれよ」

 銃口をオッサンに向けて、ジェームスは(いや)らしく笑った。

「貴様、反旗を(ひるがえ)すのか!」

「ああ。だって、この国の技術は俺らの世界より全然遅れているからな。魔法だって、俺らの世界にあるし、このちっぽけな銃より凄いのがある」

──魔法なんてないでしょ!


 私の表情の変化を見たのか、ジェームスはにらんできた

「貴様騙していたのかっ。魔法なんてないはずでは、ないのか」

「相手の手の内を見ておきたかったからな。こいつも銃を持ってるぜ」

 私をあごで指して、笑いかける。

──そのはったり乗ってあげる。


「それ言っちゃダメでしょ。オウサマがビビっちゃうよ」

 前髪をかきあげて、オッサンに微笑(ほほえ)みかける。

「貴様らァ!」

 王様の表情が強張った。

 私は右手の人指し指で、オッサンを指して親指で標準を合わせる。


「これが私の銃」

「ヒィ!」

 オッサンが頭を抱えてしゃがんだ。それを囲うように、兵士が集まっている。

「あまり調子にのるなよ」

 ジェームスが小耳に挟んだ。

「おもしろいから悩むなぁ」


 もう一度、手の銃を見せるとオッサン達がひるんだ。

「BANG! BANG!」

「やめてくれ!」

 何度も銃を打った振りをすると、大声を出している。おもしろいなぁ。

「それそれ。BANG、BANG!」

「何もおきていない…?」

 誰かが言った。

──まずい。


「次動いたら、本当におきるよ」

「ほう? なら、心臓を撃ち抜いてみせろ」

 オッサンが立ち上がって、両手を広げた。

「え?」

「撃たないのか? いや、撃てないのか」

──噓だってばれてる。

「いや、あの…」

 手を下げる。


「俺のは、本物だ。こいつが調子にのったことは謝るが、殺さないでやってくれ」

 ジェームスが銃をチラかせて、(ささや)いた。

「調子にのるなって言っただろうが」

 王様は、席を立て戻し座って

「わかった。其方には、何かと世話になったからなぁ。だが、用済みになった時覚えていろ」


 兵士に向かって「あの小娘と小僧を独房に連れてけ」、と言った。彼らは指示通り私の周りに来て、腕を掴んだ。クレアくんも捕まっている。

 王様をにらみつけて

「アミ達のこと、絶対に助けなさいよ」

「貴様が謝れば、してやらんこともない」、と鼻で笑った。


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