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サマー・HSS・マタステイシス  作者: 川上アオイ
第1章 転移・イムル村
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第3.5節

 今日やることが終わり私達は夕方に作ったカレーを囲んで食べる(この世界にもカレーはあるのかと驚いた!)。

 私は夕飯を食べ終えて、暇になり如月からこの村のマップをもらい散歩に出ることにした。昨晩来たときと同様に日本と違ってネオンなんて1つもなく、静かだった。

 無駄な明かりがなく、静かなおかげか私が住んでいた東京と違って星空は綺麗で蛍が飛んでいて田舎にきた気分だ。


 如月からもらったマップはセシルが絵を描いて、それに如月が私達でもわかりやすくするために絵にそれぞれ名称を書いた簡単なものだ(セシルの絵は下手だから名称を振ることになったらしい)。


 マップを見るとすぐに目がつくのは、マップの左上に描かれたクルガス山と右下にあるアンダル川が占めていて、アンダル川近くにある上流側にある建物が私達が泊っているセシルの家があって、下流にあるのは私達に翻訳のトーテムを渡してくれた倉庫が描かれている。


 山と山の下にいくつもの家みたいな建物で描かれている商店街は、セシルが暇な時に行って欲しいらしく、服やご飯を食べてと聞いた。そして、クルガス山には展望台があり景色が良いと聞いた。

 

 セシルがご飯の時に鮎が美味しいと言っていたから今度食べてみたいな、と思いながら左手に流れるアンダル川を見つめながら思った。


 セシルが私達に翻訳のトーテムを渡してくれた倉庫の前を通ると、カチン、カチンっと固いもの同士がぶつかり合う音が聞こえた。

 その音が聞こえる方向に進んでいくと子どもがご飯を食べていた。


「君どうしたの?」私はその子に近づいて声をかける。

 その子は黙ったままご飯を食べ続ける。

 近づいてわかったが、金と黒の髪をまばらに混ぜた髪をしている男の子だった。まるで、虎みたい、と思った。


「ご飯美味しい?」

 私はその子の隣に座る。

 また黙ったままだった。黙っているというより無視しているほうが正しいかもしれない。

 話しかけても無視されるので、私は家に戻り正方形の紙をできるだけ多く取ってきた。松明を地面に突き刺して、紙を折りたたんでいく。

 男の子は私がやっていることを不思議そうに見ている。ある程度の形ができてきて最後に、紙に息を吹きかけ膨らませる。

「できた! じゃじゃーん」

 男の子は不思議そうな目をしていた。


「これなんだと思う?」

 男の子は首を横に振る。

「鶴だよー、鳥さんです」ドヤ顔で見せる。

「他には何ができるの?」

 男の子は初めて口を開いた。声はハスキーな声だった。

「えっと他には……鶴が折れます」


 如月だったらいっぱい折り紙折れるから聞いておこう。

「同じだよ」

「これ以外に折れないと思う」

 折れそうなのを思い出すけど、簡単なコップとおにぎりと完成しかけの手裏剣しか折れなかった。それでも男の子は新鮮な反応を示す。

 途中から男の子に折り方を教えながら一緒に折り紙を折る。


「結構折ったねー」

 地面にはたくさん折られた鶴やおにぎりなどが、散らばっている。

 私が立って背伸びすると、男の子も続いて背伸びする。ずっと同じ体制で疲れたのか男の子はフラフラしながら立っている。

 男の子が松明を蹴ってしまい松明が倒れる。


「危ない」男の子の身体を持ち上げて火から遠ざける。

 松明は倒れ、折り紙は燃え上がっていた。

「ケガはない?」

 男の子は私から暴れるようにして降りて、どこかに行ってしまった。

「ちょっと!どこ行くの!? あと皿置いていってるよー」

 呼びかけてもこちらを振り向かず立ち止まらずに行ってしまった。

 びっくりさせてしまっただろうか。また今度会ったら新しい折り紙の折り方教えてあげて励まそう。


 置いて行かれた食べかけのカレー皿とスプーンを見つめながら皿をセシルの家に、持っていくか悩んだけど、結局家に皿を持って家に戻った。


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