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サマー・HSS・マタステイシス  作者: 川上アオイ
第3章  ハイジャック・サマー
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第5節 遠吠え


アミ視点



 布団をはがされて、日光が顔にあたる。まぶたを光を目に入れまいと強く閉じた。

「おはよ」

 ヌイ族の長を名乗る、男が立っていた。眠そうに、まぶたをこすっている。

「よう」


「お前いびきすごかったぞ…」

「わりぃ。まぁ、女の子と一緒に寝れて良かったな」

「うるさすぎて、ダチのテントで寝たわ」、とあくびをして言った。

──失礼な奴だな。


 自己紹介をしてないと思って、ベッドであぐらをかいて

「うちは、江藤アミ。イムル村から来た」

「まじか、まじか! まじかよ!」

 男が大声を出して、うちの肩を掴んだ。

「なんだよ、急に大声出して気持ち悪ぃな」

「驚くに決まってんだろ! だって、同じ日本人がいるんだから」

「は?」


 男は、服から首にぶら下げたトーテムを取り出して見せた。

 うちらが持っているのとは、違う字で書かれている。

「これ、ヌイ族用のトーテムなんだけど、ヌイ族の言語しか翻訳されないんだ。でも、俺らは今こうして会話できてる!」

「噓だろ?」

「ホントだって」

 男は、トーテムを床に置いて

「ほらな。話通じるだろ?」

「え? バーカ、アーホ」

「通じてるからな?!」


「ほんとじゃん!じゃあ、お前日本人なの?」

 男は、トーテムを首にかけ直して

「おう。瀬尾累だ!よろしくな」

 手をさしだしてきた。男の手を取り

「よろしく!」

「飯食いに行こうぜ」


 瀬尾は腰に入れたポーチから、カチューシャを取り出して頭につけた。こいつと同じ茶色のカチューシャで、垂れた犬耳が付いている。

「お前、犬耳のカチューシャつけて気持ち悪」

「ヌイ族は、犬耳みんなついてるからな」

 うちの分を取り出して、金色の犬耳のカチューシャを渡された。

「は? どういうこと?」

「外に出れば、わかるよ」


 瀬尾と一緒に外に出て、ヌイ族の集落を歩く。こいつの言う通り、みんな犬の耳が付いていた。垂れた耳、突っ張った耳、三角形の耳があって、色々な毛色だ。


「まじかよ…」

「だよなー!俺も最初に来た時驚いたぜ」

「あと、ここでは俺の女な?」

「あ?」

「なんおってこと」

 うちの腰に手をまわしてきた。手首を掴んで

「死にてぇのか?」

 にらみつける。


「ごめんって!でも、そういう設定にしないとめんどくさいんだよ」

「どういうことだよ」

 手首を離して、瀬尾の顔を見る。

「お前が倒れてるところを、俺の仲間が見つけたんだけど殺そうとしてたんだ。それを! 俺が俺の女だって言って助けたの」

「はぁ!? ふざけんなし」

 救ってもらったのは感謝するけど、彼女扱いされるのはちげぇだろ。


「耳付いてないと、耳なしの無能。普通の人間と間違われるんだ」

「部族と人間は仲悪いってやつか。耳ついてないと、殺されるんだろ」

 ナミタやデロルみたいに、部族を憎む奴がいるんだから、耳なしを嫌う奴もいると、考えた。

「いや、みんながお前にかまってほしくて、遊び疲れて死ぬぞ」

「どゆこと?」

「そのまんまの意味だって! 俺ここに来た時に、子どもに遊び付き合わされて、四六時中遊ばされて死ぬかと思ったんだぜ」

 瀬尾は、笑いながら苦労話を言った。


「部族と人間が仲いいなんて、珍しいな。うちがいた村、部族嫌ってる奴がいっぱいいたからさ」

「部族といえど、人間と仲良いからな。条約?っ てやつを結んでるらしい」

どんな条約か気にならんから「へぇ」、と適当に相槌(あいづち)をうつ。


なんだか、美味しい匂いがする。

「なんか良い匂いするな」

「もう飯ができてるからな。ほら、アソコ」

瀬尾が指さしたところで、地面に座ってご飯を食べてる人が何十人もいる。

「あんな大勢で食べるんだな」


「びっくりするよな。地べたで食べるし、手でとって食べるんだぜ」

「まじかよ、衛生観念どうにかしてる…」

 食事を出してるおかあさんから、変な練り物と野菜を細かく刻んだソースみたいなのと、肉がドロっと入ったスープを受け取る。

 瀬尾が適当に座ったところに、向かい合うかたちで座る。


「なんかみんなで食べるのと、地べたで食べるのは意味があるらしいぜ」

「イムル村でも、食事は大切にしてたな。家独自かもだけど」

「食事はどこでも、大切にするもんだな」


 それで、とベージュ色の練り物を口に入れて続ける。

「みんなで食べるのは、魔よけ? らしいし、地べたで食べるのは、食べ物を育ててくれた大地への感謝ってことらしい。ほら、あそこで残ったもん地面に入れてんだろ」

後ろを振り返ると、残ったもん練り物を地面に埋めていた。


「おもしれぇな」

「だろ。俺もここに来た時前の長、おじいちゃんから教わったんだけど先生の授業聞くよりおもろかったわ」

 瀬尾は口にご飯を続々と入れながら話している。

「食べないのか? 美味しいのに」

「見たことないのだから、ちょっとな…」


 ベージュの練り物を指して「これはキャパ。ジャガイモの練り物な」野菜を細かく刻んだソースを指して「ルブタジベのソースな。サ〇ゼの野菜ペーストに近いかな」肉のスープを指して「チアカマンテのスープ。ミネストローネに牛肉ぶちこんで、トロミを効かせたスープだと思え」

「説明センキュ」

「美味ぇから、食べてみろって」

 うちにキャパと呼ばれたジャガイモの練りものを手渡してきた。


「お、おう。いただきます」

 キャパをちぎって、チアカマンテのスープを付けて恐る恐る口に入れる。

「ん?」

 最初は肉の臭さがあったけど、トマトの風味が臭みを消して、キャパの優しい甘さがしょっぱい味付けをまろやかにしてくれる。

「美味しい…」


 口にまた、同じ組み合わせを入れる。

「うめぇな! この野菜のペーストもうめぇ! サイ〇じゃん!」

「だろ?」


 うちがバクバクと、食べてると瀬尾も続いて食べる。こいつの喉仏(のどぼとけ)が上下してから、聞かれた。

「俺さ、この世界のことなんも知らねぇんだけどなんか知ってる?」

俺のところより文明進んでそうだし、と付け足して口にキャパを入れた。

「お前より結構知ってると思うわ」


 うちは、この世界に来てからのことを説明した。うち以外に2人友達と一緒に転移したこと、イムル村での出来事、王様から言われたこと、ジェームスっていうもう1人の転移者のこと。ありとあらゆることを言った。


「まじか! まじかよ! 知らないことばっかじゃねぇか!」

 瀬尾がどんどん大きな声で叫んだ。うるせぇやつだ。

 周りの人がうちらを見ている。

「如月っていう。さっき言ったうちと一緒に転移した背がこのくらいの、赤髪の女見なかったか?」

「見てねぇなー。俺があった人間は兵士くらいだし」


 瀬尾は笑みを浮かべながら、立ち上がった。

「そいつを助けたら、俺と付き合わねぇか?」

「は?」

「なんかの縁だしさ、どこの高校出身よ? 日本だから会えなくねぇだろ。俺東京の高校だし」

──出会い目的かよ。東京の高校なら、尚更会う確率高いから言わんとこ。

「付き合うのは嫌だわ、タイプじゃない。如月を助けたらインスタ交換するならいいけどな」

「まじ?」

「まじ、まじ」しねぇけど


「よっしゃ! みんな!」

 瀬尾が大きな声で周りにいる人を見渡して言った。

「今から俺は江藤の友達を助ける! 江藤は俺の大切なガールフレンドだ! みんなの力を貸してほしい」

 犬耳をつけた老若男女が集まってきて、遠吠えをした。

「アウゥー!」

瀬尾もそれに続いて、空に向かって遠吠えをした。


「え? 何やってんの?」

「意思表明みたいなもんだよ、こいつらもお前の友達探してくれるってさ」

「まじ?!」

うちもこいつらに続いて

「アウゥー!」

と、叫ぶ。


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