第2節 ヌイ族
歌川視点
「アミは…?」
横で立っているセシルに声をかける。
まだ眠気で、頭がぼーっとする。
セシルは私を見下ろして
「アミさんは、もういません」
「だよね」
体を両手でなんとか起こす。腰と手で支えないと横になってしまう。
「私アミ追いかけるよ」
「ダメに決まってるじゃないですか!」
セシルは驚いた表情をしている。私の体をベッドに優しく倒した。
「今追いかければ、間に合うよ」
「間に合うかもしれませんが、山道が危険です」
「私達が村に帰ってくる時に、部族の子と仲良くなったからその子に頼んで行くよ」
「アミさんが、その子と行動している可能性が高い…可能性があると思います」
セシルは、目をそらして言い直した。
「そうかもしれないけど」
「自分達にできることはないですよ。兵士に任せましょう」
「兵士だって、如月探すので手一杯でしょ」
セシルは、ため息をついた。
「わかりました。歌川さんは、如月さんを探してください」
「なんで」
「アミさんは、私が村長代理として周辺の部族に協力を要請して探します。如月さんは、たぶんコネ族が浚ったのでしょう?」
「うん、たぶんそうだと思う」
「なら、居場所がわかる如月さんをお願いします」
「ありがとう!」
セシルに抱きついく。
恥ずかしそうに、私をはがして
「まず、王国に行って事態を国王に知らしてください。力になってくれるはずです」
「わかった!」
「アミさんと如月さんが無事だといいですね」
悲しそうにセシルは微笑えんだ。
「クロノさんも探すから。あの人強いから逃げて生き延びてるよ」
「ありがとうございます。気を使ってくださり」
私をそっと抱いてくれた。
「急ごしらえですけど、食事と着替えです」
馬車の荷台に乗ろうとしたら、セシルは両手で大きな茶色の年季が入ったかばんを持っている。
後ろから視線を感じ背中越しに見ると、重そうな荷物を持った兵士ににらまれた。乗り降り場の付近で、邪魔になっている。
この場を離れて、荷物を受け取った。
「ありがとう。行ってくるね」
「はい、お気をつけて。自分もやることが終わったら後を追います」
セシルと抱きあって、馬車の荷台に乗りこんだ。
* * * * *
アミ視点
体を起こすと体中が痛くなった。
うちの上にかかっていた毛布がずれ落ちると、下着以外の服が脱がされている。
「なんだこれ」
腕や足の周りに緑色のジャムみたいなのが塗られている。
手で拭って、ベッドに塗りたくる。
周りを見ると、壁の布にミミズ文字みたいな刺繡がされている。
「もしかして、部族の村か?」
毛布を羽織って外に出る。
外に出ると、テントが何個も乱雑に置かれている。どのテントの外にもミミズ文字みたいな刺繡がされている。
空を見ると、綺麗な星が輝いている。
──日をまたいで、寝てたのか。
「 」
喉太い声が後ろからして、振り返ると男が立っていた。
薄暗くて、表情がわからない。
「あ?」
──なに言っているか、わかんねぇ。
「 !」
うちの腕を握ってきた。
「何触ってんだよ!金取るぞ!」
男を掴んで、|大外刈りをする。
地面にドタン、と音をたてた。
「 」
「 」
ぞろぞろと、人が集まってきた。何を言っているかわからないけど、ざわついている。
「なんだテメェら」
「すまないな、オレらのダチがビックリさせちまって」
松明を持った男が集団の中から、歩いてきた。
火で照らされた顔つきから、うちと同じくらいの年齢だと思う。二重がパッチリと開いていて、顔つきが整っている。
「お前が頭か」
「ああ、ヌイ族の今のところ長だな」
「うちの服を脱がして何しようとしてたんだよ」
松明を持った男は、地面に松明をさして倒れた男を起こして「ちゃんと女性に頼んだぜ」、と言った。
「とりあえず、夜は遅いから朝話さねぇえか?」
「わかった、何もすんなよ」
「しない…と思う」
「しないってちゃんと言えや!」
「わかった! やらない!」
「急に元気いいな…」
「あそこのでけぇ家で寝てるから、何かあったらあそこに来てくれ」
男が指さした方には、他の家よりデカいテントがあった。
「おっけ。じゃあ、おやすみ」
「おやすみ」
うちは、テントに戻って自分が寝てたベッドに横たわる。
「ギャア!」
「どうかしたか?」
すぐに、さっきの男と大勢の男がテントを開けた。
「ベッドに、ジャム塗ってたんだった…」
傷口がヒリヒリする…。
「オレのベッド貸すぞ?」
「頼むわ…」




