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サマー・HSS・マタステイシス  作者: 川上アオイ
第3章  ハイジャック・サマー
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第2節 ヌイ族


歌川視点



「アミは…?」

 横で立っているセシルに声をかける。

 まだ眠気で、頭がぼーっとする。

 セシルは私を見下ろして

「アミさんは、もういません」

「だよね」


 体を両手でなんとか起こす。腰と手で支えないと横になってしまう。

「私アミ追いかけるよ」

「ダメに決まってるじゃないですか!」

 セシルは驚いた表情をしている。私の体をベッドに優しく倒した。

「今追いかければ、間に合うよ」


「間に合うかもしれませんが、山道が危険です」

「私達が村に帰ってくる時に、部族の子と仲良くなったからその子に頼んで行くよ」

「アミさんが、その子と行動している可能性が高い…可能性があると思います」

 セシルは、目をそらして言い直した。


「そうかもしれないけど」

「自分達にできることはないですよ。兵士に任せましょう」

「兵士だって、如月探すので手一杯でしょ」


 セシルは、ため息をついた。

「わかりました。歌川さんは、如月さんを探してください」

「なんで」


「アミさんは、私が村長代理として周辺の部族に協力を要請(ようせい)して探します。如月さんは、たぶんコネ族が(さら)ったのでしょう?」

「うん、たぶんそうだと思う」

「なら、居場所がわかる如月さんをお願いします」


「ありがとう!」

 セシルに抱きついく。

 恥ずかしそうに、私をはがして

「まず、王国に行って事態を国王に知らしてください。力になってくれるはずです」


「わかった!」

「アミさんと如月さんが無事だといいですね」

 悲しそうにセシルは微笑(ほほえ)えんだ。

「クロノさんも探すから。あの人強いから逃げて生き延びてるよ」

「ありがとうございます。気を使ってくださり」

 私をそっと抱いてくれた。



「急ごしらえですけど、食事と着替えです」

 馬車の荷台に乗ろうとしたら、セシルは両手で大きな茶色の年季が入ったかばんを持っている。

 後ろから視線を感じ背中越しに見ると、重そうな荷物を持った兵士ににらまれた。乗り降り場の付近で、邪魔になっている。

 この場を離れて、荷物を受け取った。

「ありがとう。行ってくるね」

「はい、お気をつけて。自分もやることが終わったら後を追います」

 セシルと抱きあって、馬車の荷台に乗りこんだ。


*  *  *  *  *


アミ視点



 体を起こすと体中が痛くなった。

 うちの上にかかっていた毛布がずれ落ちると、下着以外の服が脱がされている。


「なんだこれ」

 腕や足の周りに緑色のジャムみたいなのが塗られている。


 手で拭って、ベッドに塗りたくる。

 周りを見ると、壁の布にミミズ文字みたいな刺繡(ししゅう)がされている。

「もしかして、部族の村か?」


 毛布を羽織(はお)って外に出る。

 外に出ると、テントが何個も乱雑(らんざつ)に置かれている。どのテントの外にもミミズ文字みたいな刺繡がされている。

 空を見ると、綺麗(きれい)な星が輝いている。


──日をまたいで、寝てたのか。

「   」

 喉太い声が後ろからして、振り返ると男が立っていた。

 薄暗くて、表情がわからない。

「あ?」

──なに言っているか、わかんねぇ。


「    !」

 うちの腕を握ってきた。

「何触ってんだよ!金取るぞ!」

 男を掴んで、|大外刈(おおそとが)りをする。

 地面にドタン、と音をたてた。


「   」

「     」

 ぞろぞろと、人が集まってきた。何を言っているかわからないけど、ざわついている。


「なんだテメェら」

「すまないな、オレらのダチがビックリさせちまって」

 松明(たいまつ)を持った男が集団の中から、歩いてきた。

 火で照らされた顔つきから、うちと同じくらいの年齢だと思う。二重がパッチリと開いていて、顔つきが整っている。


「お前が頭か」

「ああ、ヌイ族の今のところ(おさ)だな」

「うちの服を脱がして何しようとしてたんだよ」

 松明を持った男は、地面に松明をさして倒れた男を起こして「ちゃんと女性に頼んだぜ」、と言った。


「とりあえず、夜は遅いから朝話さねぇえか?」

「わかった、何もすんなよ」

「しない…と思う」

「しないってちゃんと言えや!」


「わかった! やらない!」

「急に元気いいな…」

「あそこのでけぇ家で寝てるから、何かあったらあそこに来てくれ」

 男が指さした方には、他の家よりデカいテントがあった。


「おっけ。じゃあ、おやすみ」

「おやすみ」

 うちは、テントに戻って自分が寝てたベッドに横たわる。

「ギャア!」

「どうかしたか?」

 すぐに、さっきの男と大勢の男がテントを開けた。

「ベッドに、ジャム塗ってたんだった…」

 傷口がヒリヒリする…。

「オレのベッド貸すぞ?」

「頼むわ…」

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