第1節 転落
アミ視点
「くそ結構進んだのに、人の気配すらしないぜ」
独り言を呟く。
たぶん、王国から帰ってきたはずの道を歩く。
草木が目の前で邪魔をしてくる。手で払いながら進む。
──暗くて、どこを進んでいるのかもわかんねぇ。
草木が勝手に、動く音もする。もしかしたら、熊が出てくるかもしれないという恐怖。
「そういえば、あいつの名前なんだったけ」
ここまで案内してくれた部族のガキを思い出す。シルエットは思い出せるが、名前が思い出せない。
「なんだったっけー。なんちゃらガウだったんだよな。アガウ、イガウ…。わかんねぇや」
どれだけ進んでも景色が変わらない…。
「もしかして、遭難したかぁ?」
どこかいい場所で、休もうと探す。
「うおぉ!?」
草を踏んだはずの脚が、宙を浮いていた。下を見ると急傾斜になっていて、滑った大変だとすぐにわかった。
踏ん張って、近くにあった木を掴む。
「あぶねぇ…」
掴んでいた木が折れた!
「え?」
急斜面を滑りながら、大きな声を出す。
回転するのが止まったから、上を見るとうちがさっきまでいた場所は遥か遠くにあった。
「くっそ」
目の前がくらくらする。
──転んだ時に、頭を打ったのか。こんなことしてる暇なんてないのに。




