終節 報復
アミが寝ていた部屋の扉が開いた。
あくびをしながら、アミが出てきた。私と目が合うと、不思議そうな顔をした。
「お前何してんの?」
「どうすればいいのか、わかんないんだよね」
「うちは、これから如月助けに行くけど」
アミの肩を掴んで、声の大きさを気にしながら言う。
「もう夜だから、明日の方がいいよ、私も行くから」
「お前は来なくていい」
「なんで…私も如月助けたいよ」
「お前人のこと殴れるのかよ、バットで人の頭かち割れるのかよ」
「……」
「できるわけない。お前は優しすぎるんだよ。だから、お前はここで待ってろ」
「やだよ、連れてかないなら、叫ぶよ」
急に、視界が歪んだ。体に力が入らない。アミに寄りかかり耳元で囁いた。
「ごめんな、自分勝手で。絶対に如月連れ戻すから待っててくれ
クロノさんも見つける、セシルに謝っておいて」
アミは私を床に、優しく横にしてくれた。私の前に、トーテムが一枚落ちた。
──セシルがさっきアミを眠らせたときに使ったやつか。
アミの足を掴んで
「自分で謝りなよ。クロノさんのこと、ケンカしたことも」
声を振り絞って言った。
「謝れるかな。うちらここに、居られる時間が少ないんだろ」
「絶対に謝らせるから。待ってなよ」
私の意識はそこで途切れた。
* * * * * *
錆臭さと湿った地面の匂いがする。中は自然の光が差しこまない。
松明で壁にそって設置された牢屋を照らしながら歩く。牢屋の中には、骸骨や一人で壁に頭を打ちつけて、独り言を言っている性別がわからない人物がいる。
「どこにいるんだ?」
マルクが両手を頭にまわして、退屈そうに言った。
「もうすぐのはずだ。あと服装を整えておけ」
イムル村の民族衣装を着崩しているのを、注意すると、マルクは仕方なさそうに、ため息をついて、整えた。
目的の牢屋に着いて、モザルが鍵を取り出した。彼は背が高く、天井をかがみながら牢屋を開錠した。
「来ましたか」
「お久しぶりです。デロル様」
デロル様は、下着以外剝ぎ取られていて無精ひげを生やしている。
以前の彼とは、姿は違えど立ち振る舞いや口調からして、精神には異常がなさそうで安心した。
「デロル様!お久しぶりです!」
マルクが、デロル様の手錠を鍵を差しこむ。錆びているのか、取るのに手こずっている。
要領が悪いマルクに対しても、笑顔で「元気でしたか?」、と答えた。
良い人だ。この人についていこう。
「ムルラックくん。あの村に報復しましたか?」
「はい。あの村にコネ族がたまたま来たので、そこで村に火を放ちました。そうしたら、あいつら、コネ族がやったと勘違いして」
笑いをこらえながら、説明しているとデロル様の手錠が外れた。
手首を動かしながら、デロル様は一安心したのかため息をついて
「ご苦労様です。あの村は完全に部族と手を組んでいるので、後ほど壊滅させるとしましょう。まずは」
「江藤アミ、ですよね」
「ええ。彼女を殺します」、と笑った。




