第22節 トガウ
アミが私達の前に立った。
「お前追手か」
「オマエラ、道ワカルカ?」
「めちゃくちゃカタコトじゃん」、とアミが笑った。
「部族は言語が違うから」
そう言うと、ナミタは私の後ろに隠れた。
「どこに行く道がわかるんですか?」
「オマエラさっきのバクハツ音。オソワレタ」私達を指さした後に、マントは自分に指をさした「アンナイする」
「下山のルート案内してくれるの?」
「ソウ。その代わりに、カエッタら。金か食べ物オゴレ」
「いいよ」
「なに言ってんの? 部族だよ? 襲った仲間かもしれないのに」
ナミタは、私の服を強く引っ張った。
「だとしても、山の中を安全に帰れる保障がないよ。ここは、頼らせてもらおう」
「答えはデタ。ツイテコイ」
マントの子は、走りだした。
「ついていくしかないよ」
私達もついていくことにした。
「ねぇ、なんであなたはここにいたの?」
「ナカマ、チカクニ住んでる。カリしにきた」
背中には、籠を背負っていて野菜と動物が見えた。
「お前の名前なんだよ」
「オマエ、人のことオマエっていうのシツレイ」
「お前もお前っていうなよ」
「ふたりして、お前って言ってる時点で、終わってるって…」
咳払いして
「名前はなんて言うんですか?
私は歌川優花です。こっちは、お前って失礼な態度したのが、江藤アミ。私の後ろにいるのは、ナミタね」
「トガウだ」
「よろしく、トガウ」
*****
「ウタガワ、もうすぐデツク」
「もうすぐ?」
トガウは立ち止まって、指をさした。
「ココまっすぐ、オリル。そしたら、イムル村チカイとこツク」
「は? 最後まで案内しろよ」
アミが怒ると、トガウはにらんだ。
「部族は、アンダルシア王国と仲がいい村に、業務以外で近づいたら条約違反になるの」
ナミタが答えると、アミが首を横に傾げた。
「へぇ、じゃあ。こいつどうやってお礼の品もらうんだよ」
「ココらへんイル。サケベ」
「わかった。ここまでありがとう」
*****
トガウと、別れて言われた通りにまっすぐ進む。
雨がいつの間にか止んだ。周囲は草木が生い茂ているが下山できたのかもしれない。
「見えてきた」
木と木の間に、村の周辺にあった廃墟が見えてきた。
「あと少しだからね」
自分にも言い聞かせるように、2人にも言った。
「おい、村から煙出てねぇか」
「え?」
私は立ち止まって、村の方向を見る。
アミが言う通り尋常じゃないほどの煙が出ている。それに付随して火の粉もチラホラ舞い上がっている。
「もしかして、火事?」
ナミタが、怯えた声で言った。
ナミタの濡れた手を握る。
「とりあえず、行ってみよう」
廃墟がたくさんある地帯を、抜けようとしていて地面がところどころ掘り起こされている。どれもこれも爆発したあとみたいに、土が弾けているか、雑に掘り起こしたみたい。
「アミ、周囲警戒しといて」
──トーテムが掘り起こされてる。誰かが侵入したのかも。
「わかった」
アミは私の意図が伝わったのか、力強くうなずいた。
裾を引っ張られて、その先を見ると、ナミタが心配そうな顔をしていた。
「何かあったの?」
「…たぶん」
伝えない方がいいと思ったけど、彼女はそれなりに大人に近い。だから、伝えた方がこの後の光景でショックを受けにくいと思った。
「そんな…なんで」
「ナミタ、まだ何が起きたかわからないんだから、行こう」
──最悪な事態が起きてなければいいけど。
廃墟地帯を抜けると、村は火で燃え盛っていた。ここがどこかもわからない。ただ誰かが、住んでいたかもしれない家が燃えている。その近くで、服が燃えている。
ナミタがしゃがんで、肩を揺らして苦しそうにその場でゲロを吐いた。
「大丈夫だよ、たぶん誰も死んでないから」
ナミタの背中をさする。彼女の背中は小刻みに震えていて、手に辛さが伝わってくる。
「うち、ちょっと様子見に行こうか」
「いや、一緒に行動しよう」
「わかった」
──自分が住んでた場所が二回もこんなことになるなんて、可哀想に。
ナミタの背中をさするしか私にできることはなかった。




