第19節 内緒ごと
私達は、メイドさんの後をついていく。アミは大股に歩いていて、余裕がありそうだった。ナミタは緊張しているのか、歩幅が小さくて手を何度も握っている。
「緊張しているのかい?」
クロノさんが小さな声で言った。いつもより優しい口調だった。
「ちょっと緊張してます」
「適当に、王様が言ったことをありがとうございますって言うだけだから、そこまで気を張りつめなくていいよ」
「わ、わかりました」
何度か息を吸っては吐いてを繰り返して、気分を落ち着かせる。
「あと、あのことは僕が質問するから変に聞かなくていいからね」
「はい。すみません、お願いします」
*****
「国王と会ったら、君たちは異世界から来たことを言わない方が良い」
馬車に揺られていると、クロノさんが言った。
「部族関係で疑われるからですよね」
「まじでだりぃなぁ」
「そんなこと言わない。その場で僕達全員死刑になることもあるんだから」
ナミタが立ちあがった。
「なんで、わたしまで!」
「そりゃ、敵対関係がある人物を連れてきたらダメでしょ」
「あんたら…気をつけてよね」と、強くにらんできた。
*****
いつの間にか、大きな門の前に私達は立っていた。
静かに開けられて、中に入る。
兵士が左右に綺麗に並んでいる。その中に、ジェームスがいた。
私達は、横一列に並んで片膝をついた。
「遠くから、わざわざ済まないな」
重みがある声だった。たぶん王様だろう。
横目で見るとクロノさんは、お辞儀をして
「呼んでいただき光栄です」、と緊張した声色で言った。
「まず、其方の要件から済ますか」
国王とクロノさんは、村のことやらデロルのことを話した。
私が緊張していたってのもあるけど、話の内容は全然頭に入らないで、時間があっという間に過ぎた気がする。
「ご苦労だったな。次に、アンデレ・ナミタ。其方の絵を兵士に聞いたが上手いらしいな」
「は、はい。お褒めの言葉ありがたき、し、幸せです」
国王は笑い声をあげて
「そんな緊張するではない。ここで、其方にお願いがあるのだが、我の絵を描いてもらってもいいか?」
優しい声で言った。
「はい」
王様に言われて、ナミタは立ちあがった。
「描いている間暇だ。歌川優花と江藤アミ、話がしたい。表をあげよ」
「はい、失礼します」
おそるおそる、顔をあげると王様が私達を見下ろしていた。
王様は、王冠を被って髭を伸ばしたお爺さんだった。
背もたれが異様に、長い椅子に座っている。
「其方らは、イムル村に学校を作ったらしいな」
「はい、クロノさんに依頼されて作りました」
「若いのに、偉いな。学があるのか」
「いえ、そこまで良くないですよ。高k。イムル村の皆さんから、色々な知識を借りただけです」
──あぶねぇ!高校って言いそうになった!
「そう謙遜するでない。そこの江藤アミ、といったか。其方はデロルを倒したと聞いたが、何か魔法か武術の心得があるのか?」
「う、うっす。武術の心得があり申す」
──緊張のし過ぎで、話し方おかしくなってる…。
「ほう。何というのだ」
「空手というものでして…。部族の村を旅していて、ある部族から習いました」
「部族を旅したと、度胸があるな」、と国王は笑った。
──うまい!よくその設定ここでだしたな。
「其方らは、出身はどこだ?」
「え?」
「出身だ」
私は、如月を見た後にクロノさんを見た。2人とも汗が尋常じゃないほど出ていた。
「出身は…」
──遺書書いてくれば良かった。育ててくれてありがとう。お母さん…。
「国王。失礼を承知で言わせてもらいますが、少しこっちを見てもらってもよろしいでしょうか」
ナミタが言った。
──ナイス!
感動のあまり涙が出た。
「それで、出身はどこかね」
「……」
私は、生唾を飲んで言った。
「日本です。日本の東京、玉川出身です」
「日本か、寿司というのが旨いらしいな」
「はい、とても美味しいで。え?」
「他には、日本はサムライというのがいるのだろう?」
「え? ええ?」
「どうしたのかね」
「いえ、いやだって。なんで日本知っているのですか」
「当たり前だろう。私が其方らを転移させたのだから」
私は立ちあがって
「そうなんですか?」
と、カタコトながら聞いた。
「ジャパニーズ、座った方がいいぞ」
後ろから金属が擦れる音と声がする。
振り返ると、ジェームスが立っていた。
「俺も転移者だからな」
「ちょっと待て、ちょっと待て!」
アミも立ちあがった。慌てようから見て私と同様に、今の状況についていけてないみたいだった。
「国王がうちらを呼んだとして、なんで?」
国王はあご髭を、上下にしごいて
「ジェームス、別室に案内して説明を頼む」
と、めんどくさそうに言った。




