第17節 ラーメン
買い物が終わって、クロノさん達と合流するとアミは復活していた。
「お前ら、うち置いてどこ行ってたんだよ」
「買い物よ」
ナミタが買った画材を両手に持って強調するように、持ち直して答える。
「はぁ? うらやましいなぁ!」
アミは、腹をさすりながら「腹へったな」、と言った。
「ゲロした後なのに、よく腹へってんね…」
腹の中なにもないからな、と周りを見ながら返事した。
「ここらへんに何か美味しものないっすか? クロノさん」
「んー、ガリヤの串焼きかなぁ。郷土料理だから一度は食べてほしいね」
「ガリヤってなんっすか?」
「水鳥の名前さ、ここらへんはアンダル川が流れているから、ガリヤがいっぱい来るんだよ」
「じゃあ、それ食べにいくか」
私達は、馬車に乗りながら王国の敷地内を進む。
改めて路地の露店や出店を見ると、色々な料理屋があって腹がへる香りが漂っている。ただ、文字が読めないからどれも興味がそそられるけど、行く気にならない。
「何屋があるのか、わかんないね」
アミに話かけると、露店を見て
「確かになぁ。ただたまに店の外で食ってる人の料理見ると、美味しそうなとこばっかだぞ」
と、続々と指をさした。
店の外で食べている人をアミに続いて見ることにした。
「へぇ。なんかステーキ串食べているね。あと虫食べてる人いるし…」
「魚食ってる人いっぱいいんな。あれ、ピザみたいだけど全部赤いな」
「どれどれ、ホントだ。めちゃくちゃ赤い。あと、ラーメン食べてる人いるし」
「そうだな、ちゅるちゅるってラーメン食べてる人いるな」
──ラーメン?
横にいるアミを見ると、アミも私を見ていた。
「ラーメンあるじゃん!」
「なんで!? 中国ないのに!」
馬車が止まった。
「なにか食べたいのあるのかい?」
クロノさんの声が外からした。私は大声で、あれ食べたいです、と伝えた。
「あそこのラーメン食べたいです!」
「ラーメン? ああ、ラァミエンか」
「発音まで似てるし…」パクリか?
馬車を停留所に止めて、さっき見たラーメン屋に着くと、醬油ラーメンの匂いがした。動物系をベースにしたスープ独特の匂いだ。
「ラーメン? わたし食べたことない」
ナミタが鼻を塞ぎながら、言った。
「美味しいよぉ! こう、ちゅるちゅるって感じで、おもしろい食感なの」
ナミタは、興味なさそうに相槌をうった。
「それにしても、まさか異世界でラーメンを食べれるとはね。誰か異世界転移して、ラーメン屋開いた感じかな」
「漫画の読みすぎだろ」、とアミが言う。
「ラァミエンは結構昔からあるよ。やっぱり、世界は違えど人は同じこと考えるのかもね」
クロノさんは、店頭に出てきた店員に人数を伝えた。
店の外の席も、中も結構混んでいる。それなりに繫盛している店なのかもしれない。期待をしながら、店の外で待っているとすぐに、店内のテーブル席に案内された。
クロノさんが席に着くと言った。
「頼めるのは、ラァミェンとごはんものだけだよ」
「メニューはラァミェンと丼ものだけかよ」
アミが、餃子ねぇのか、と残念そうに言った。
「まぁまぁ、ラーメン食べれるだけ御の字でしょ」
私とナミタは、ラーメンを単品で頼み、アミとクロノさんは、ラーメンとチャーシュー丼を頼んだ。
「ご飯食べた後は、どうしますか?」
「城まですぐに行くよ。さきに僕の納品物預けて、その後に王様のところ行くよ」
「王様ってどういう人なんですか?」
クロノさんはあごに、手を当てて
「業務以外だと、王国を歩いてる時とか村に観光に来たときは、温厚な人だったなぁ」
「へぇ、結構良い人なんですね」
「そうだね。昔は結構気難しい人だったんだけどねぇ」
「なんかあったんですか?」
「王女が生まれてガラっと変わったよ」
私が「そうなんですね」、と相槌をうつと、店員が食事を続々と持ってきた。
ラーメンを食べると、鶏がらスープかさっぱりとしているけど、濃厚なスープがちぢれ麵に絡まって美味しい。
「そこらへんのチェーン店より美味いな」
私の隣で、アミが言った。
「うん、美味しい店で良かったね」
「明日は、ガリヤ? の串焼き食べようぜ」
クロノさんは麵をすすり終えて、から一拍空けて言った。
「明日の朝には、帰るからね」
「そんな。じゃあ食べないってことですかぁ?」
「お金がないからね」
「デロルのせいで、村が大変になったんだからお駄賃もらえばいいのに」
「彼は懲罰受けてんだから、貰うものなんてないよ」
クロノさんは麵をすすった。
デロルは、国のためにがんばったらしいけど、私達に危害を与えるために火を学校に付けたり、クレアくんを騙したりしたから、懲罰くらいの罪でちょうどいいのかもしれない。
「デロルどうしてるんですかね」
「そこまでは、わからないな。死刑とまではいかないと思うけど」
咳払い。
ナミタが私達をにらんで
「食事中なんですけど」
と、言った後に麵をすすった。
私は、ごもっともだと思ってラーメンを黙々と、食べた。




