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サマー・HSS・マタステイシス  作者: 川上アオイ
第2章 女子高校生とマタステイシス
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第15節 アンダルシア王国2

 馬車の荷台に乗っていると、地面のゴツゴツ感がお尻に伝わって気持ち悪い。

 別の意味で、気分が悪いままの奴が、目の前にひとりいる。


「はぁ…」

 アミは、頭を下げて両手で支えるみたいに、手を当てている。

「はぁ…」

「ため息多いって」

「だってさぁ」

「アミが悪いでしょ」


 アミとセシルはまだ完璧な仲直りできていなかった。互いにしようとしてプライドか恥ずかしさで、謝ることができていないらしい。


「くっそ、3日近く会えないんだぜ? これで、さらに謝りにくくなったらさぁ」

「いっそのこと自然に仲直りしちゃえば? 業務連絡だけど話し合えてるし」

「なんだよ、バイト先で別れたカップルみたいな関係はよぉ」

 私は笑った。


「ナミタは、セシルから何か聞いてない?」

 私達があげたノートとシャーペンで黙々と、絵を描いている。シャッシャ、とシャーペンがノートの上をなぞられる音が聞こえる。

こいつシカトこいてやがる…。

「マッキーとかシャーペンもう貸さないから」

 ナミタは、首を一気に私の方に向けて、目がピクピクと痙攣(けいれん)していて、怯えているのがわかった。

「…セシルもそいつみたいに、謝れないこと気にしてる」

「だよねぇ」

 まぁ、とナミタは言葉を続けた。

「セシルはガンコだから、しかたないわ。わたしもなんどかケンカしたけど、謝っても許してくれないことだって、あったんだから。あんたはマシよ」


 ほんとマシだ…、と相槌(あいづち)をうつ。

「クロノさんあなたの娘さんですけど、どうしますかー?」

 荷台の外で、馬車を動かしているクロノさんに声をかける。

「セシルは結構根に持つというか、自分で勝手に責任感じてひきずっちやうからなぁ」


「どうにかしてくださいよぉ」

「まぁ、時間が解決してくれるよ」

 アミの肩を叩き

「結局は、時間が解決してくれるから、帰ったら普通に話かけて、ふとしたときに『あの時は、ごめん』って謝ってあげなよね」

 クロノさんが「それ僕の言葉だよね?!」、と大声で言ったけど、もう私の言葉でもあるので、無視した。


「そうかぁ。そういえば、ナミタは何描いてんの?」

「そこの奴に依頼された絵よ」

 ナミタは私のことをあごで、指した。

「校章とかあったらっぽくない?」

「それな。じゃあ、うちもデザイン考えよー」

「そうだった。アミ以外からデザイン案聞いてたんだよね」

「なんで、うちハブってんだよ!」


 アミは私の首を十字固めで、絞めてきた。

「だ。だって、セシルの件で手一杯だと思ったからさ」

「クソがぁ。ナミタ今のところどんな感じなんだよ?」

 アミは片手で、ナミタが描いた絵を受けとり私の前で見た。


 ナミタが描いた校章のデザインは、ほとんど完成している。私がだした案のイムル村の表記や如月がだしたクルザス山やアンダル川を模倣した絵を取りいれていた。


「結構完成してんだな」

「まぁ結構前から聞いていたし、たまたま暇だったからやってあげただけ」

 私がニタニタしながら、「ツンデレだぁ」、と笑っていると。「うっさい!」、と私のスネを蹴ってきた。

「痛っ!」この女、ゴリラとヤンキー混ぜた性根してやがる。


「なんか失礼なこと思ったでしょ」

 ナミタが強く私をにらんできた。

「別に~」

「絶対思ったでしょ!」

 ナミタは席を立ちあがって、飛びかかってきた。私とナミタは互いに掴みあって暴れる。


「お前ら暴れんなって。きもちわるくな」

 アミが発言の途中で、口元に手を当てた。

──リバースしようとしてやがる!


「アミ、外出てって!」

「馬鹿! 髪引っ張るなって! おぇ」

「あんた汚い! 出てけ!」

「君たち! 静かにしたまえ」

 クロノさんが大きな声が聞こえた。


「もう着くよ。あれがアンダルシア王国だ」


 荷台の通気口となる布をめくって、外をのぞくと、目の前に大きな城、大きな塀が見えた。漫画や想像通りの王国って感じだった。

「すごい」

 私の横から、顔を出してこの風景を見たナミタが呟いた。


「すごいね」、と相槌をうつ。

「わたし本当にあそこで、絵を描くんだ」

 ナミタはほれぼれとした口調で言った。

 初めてナミタのこんな表情を見た。普段は怒るか、むすっとした表情だけど、子どもらしい期待に満ちた表情だ。


「おぇええ」

 アミが荷台の中で、吐いた!

「ぎゃっ!! 汚い!」

 ナミタは潰れた猫みたいな声をだした。

「アミぃ!」

 王国に着くまでの間、荷台の中はゲロの匂いを耐えるしかなかった。


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