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サマー・HSS・マタステイシス  作者: 川上アオイ
第1章 転移・イムル村
28/98

終節 ハイスクール・スクール・スチューデント

歌川視点



「これ見てよ!」

 私と如月、クレアくんの三人で昼ご飯の準備をしていたらアミが大きな物音と大きな声でリビングに入ってきた。


 ロングヘアーから、アフロヘアーから変わり、今はショートヘアーになっているから、一瞬戸惑(とまど)う。


「ほんっと騒がしい奴ね」

 ニンジンを切りながら如月が悪態をつく。

「どうしたのー」


 アミは教科書をペラペラめくり、私達にページを見せてきた。


「青空教室次作らない?」ふふん、と鼻息をたてて自慢気にしていた。

「これなんて書いてあるの?」

 クレアくんは背伸びして教科書をのぞきこんでいた。

「戦争の後に使われたとか紹介文だねー。これは日本語っていう私達の国の言葉だよ」

「かっこいい」


 クレアくんは『後』という字を指さして目を(かがや)かせて呟いた。

「でしょー、今度漢字教えてあげよっか」


 やっぱり他の国(異世界でもなのかもしれない)の人から見たら、日本語はかっこよく見えるのか。私からしたら画数が多くてだるいだけなんだけど。


「青空教室ねー、また掃除するよか楽そうだしいいんじゃない?」

「よし! めんどくさい如月がオッケーだしたし、青空教室やるか! 学校跡地を教室とする」

「めんどくさいって何!? 学校跡地にしたらまだガレキだったり炭とかあるんだから、また掃除することになるじゃない」


「よし、今から掃除しに行こう」

「行くとしますかね」


 食器を、机の上に置いてアミの後ろについて行く。

「食事の準備手伝いなさいよ」

 バレたか…。

 

*****


「ここの生活にも慣れたものね」

 魚をさばきながら如月が微笑む。

「そうだねー、意外と機械がなくても人間って生活できるのかもしれないね」

 私はポテトサラダを作るために、ジャガイモを磨り潰し(す つぶ)ながら答える。

「ここに来てからあたし料理上手くなったかも」


 如月は普段から料理をしないらしくて、初めは包丁の握り方が人を殺めるんじゃないかってくらい強く握っていて危なっかしかった。

 私も、料理は多少できる方だったけど、ここに来て料理のレパートリーだったり、手際がよくなっていたりして、最初の時よりかマシになっていると思う。


「そうだね」

 料理を失敗してばっかの頃の、如月を思い出して笑いながら言う。

「ちょっと笑わないでよ、絶対初めの頃のこと思い出して笑ったでしょ」


「そんなに酷かったの?」クレアくんは不思議そうに聞く。

「酷かったよ、私達の中で如月が一番ダメだったと思う」

「ここに来て、良かったべ」

 アミは包丁を私達に向けながら、悪そうな顔をしながら笑う。


「包丁をこっちに向けんな」

 如月が指摘するとアミは包丁を戻して、トマトを切るのを再開する。


「うちが二人の足を掴んで(おぼ)れさせてなかったら、この世界に来れなかったんだからさ。ほんっと感謝して欲しいもんよ」

「「は?」」


 如月と腑抜けた声が一緒に出てしまった。

「ちょっと、それどういう意味?」

 如月は包丁をアミに向けながら言う。

「如月落ち着いて、人に包丁は向けちゃダメだよ」

 如月を後ろに引っ張る。


「いやいやいや、だってワンチャンあたし達死んでたかもしれないだよ?!」

「生きてたんだし良かったじゃん、ワンチャン超えて生きてたんだしいいじゃん?」

 両手を組んで右頬にくっつけて、アミは甘えた声を出す。

 漫画だったら、お願いって効果音が周りについてそう。


「絶対殺す!」

 如月は私の拘束を解いて、アミを追いかけ回す。

「ごめんって」

 アミは笑いながらリビングを駆け回る。

「クレアくんセシル呼んできて! アミ達危ないって」

 


 これは私達が高校3年生の夏に体験した不思議な異世界生活だ。


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