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サマー・HSS・マタステイシス  作者: 川上アオイ
第1章 転移・イムル村
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第23節 アフロ

アミ視点



「アミ!」

 まぶたを上げると歌川が涙をこぼしながら、うちに抱きついた。


「ここはどこ? 私は誰?」

「ふざけないでよ! バカ!」

「痛っ!」


 歌川はうちの頭を叩き、再び抱きついた。

 天井を見ると、骨組みに布がかぶさっている。

ここはテントだと思った。

 周りにはいくつものベットが置かれているけど、兵士が暇そうに腰をかけるくらいにしか使われていない。


「デロルは」

 布団から起き上がり、周りを見渡す。

 急に起きちゃダメ、と歌川に催促され体をベッドに横になる。


「デロルは別のところに監禁されてる、あと他の兵士も」

「そうか」

 

「ふふ」

 歌川は口に手を当てて、笑いをこらえている。

「何笑ってんだよ」

「いや、だって。アミの」

 腹を抱えながら、ベッドに笑い声をうもれさせている。

 くっそ腹たつ。

「いいから! 言えって」


 わかった、と笑いながらベッドから顔を離して、テントから出た。

 再びポーチを手にテントの中に戻ってきた。ポーチから、手鏡を渡された。


「確認してみな」

「はぁ?」

 自分の面がどうせ、汚れているからだろうな。戦った後なんだから、そこらへん理解してほしいもんだ。

 手鏡に映る自分の姿に驚いた。


「うちの…うちの髪が…」

 毛先がチリチリになって、アフロみたいになってる!


「何笑ってんだよ」

「だって」

 また、ベッドに顔を当てて、笑い声を抑えている。

「殺すぞ!」



「クロノさん呼んでくるね」

 歌川はひとしきり、笑った後テントから出ていった。


 歌川が出て行ってから、入れ替わりにセシルがやってきた。


「歌川さんから目が覚めたと聞いてきました。どこか痛いところはありませんか」

「全身が痛いんだけど、あれ? 左手が治ってる」

 左手の大きな傷がなくなっている。でも、右手の骨折やところどころの細かい傷は治っていなかった。

「お父さんが治しました」


「ちゃんと治すなら全部治して欲しいんだけど、ほんとあの人オッチョコチョイなんだからー」

「それはわざとです、あとで怒られてくださいね」

「え! なんで」

 セシルはクスクスと笑いながら「さぁ」、とにごすだけだった。

「何人の髪見て笑ってんだよ」

「笑って…ません」

 セシルは小刻(こきざ)みに震えながら、うちから顔を()らした。

「くっそ腹たつ」

「明日、自分が髪切ってあげますので、許してください」

 笑いながら、言われても許す気にはならねぇだろ。


*****


「そういえば、如月は?」

「如月さんは今家で休んでいます」

「はぁ? うちが復活したというのに吞気(のんき)だなぁ」

「火事の際にナミタ達が学校にいたらしく、それを助けたので許してあげてください」

 セシルは取りつめた表情で言った。


「そうなのか、よかったー」

 デロルが言っていたことを思い出す。

「それデロルが仕組んだことらしいね」

「歌川さんから聞きました。とりあえず、ゆっくり休んでください。あとのことは自分達に任せてください」

 セシルはテントから出ていった。

 事件が解決して安心したからか、急に眠気がきた。



「起きなさい!」

「もう。なんなんだー」

 体を大きく揺さぶられて、怒鳴り声がしたので起きる。

 もっと寝たかったのに。

 クロノさんは怖い目つきだった。雰囲気もいつものふんわりとした感じではなく、カンカンに怒っているのがわかった。


「アミくんねぇ、なんで骨とか折ったり、手に穴作るの」

「骨は自分からですけど、手は」

「そんなこと聞いていないよ、もし僕が魔法を使えなかったら、君両手しばらく使えないままだったんだよ。もし、またアミくんが危ないことしてケガでもしたら、君の両親に顔を見せられないよ。あと、如月くんもなんで火事の中に突っ込むのかなぁ」


 クロノさんは今までで一番話したんじゃないかって、くらいよく口が動いた。

 それほど心配させてしまったんだな、と内心反省する。

「あ、そうだ。クロノさんうちの骨折治してよ」

 右手が利き手なのに、これじゃあご飯も食べられない、と付け足す。

 

「ダメだ! しばらくの間君のケガは治さない、反省しなさい」

 クロノさんは首を横に振った。

「そんな堪忍(かんにん)なことしないで、そうだうちのセクシーショット見せようか」

 肩を少し見せて、コンビニでよく見るグラビア本の表紙であるポーズをとる。

 クロノさんの表情はさらに怖くなっただけだった。

「反省してる?」

「してます」


 クロノさんはため息を吐いて話を続ける。

「とりあえず、しばらくの間安静(あんせい)にしときなさい。あとは大人の仕事だからさ」

「はーい」

 言われた通りうちは安静にしておこうと思い寝転ぶ。

「それじゃあね」クロノさんはテントから出ていった。

 テントの中は兵士達の与太話(よたばなし)だけ聞こえてきて、退屈でまぶたがどんどん下がってくる。

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