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最終的に書きたいものの一部

短編 三日月・道路・時効

作者: 間の開く男

三日月・道路・時効

を使ってなにか制作します。


ランダムテーマジェネレータ:http://therianthrope.lv9.org/dai_gene/

トータル十万文字まで諦めたくないシリーズ。

 雪の降り積もりつつある道を、飛ばす。舗装はされているもののあまり整備されていない道がタイヤを押し返す。あんな事が起きた直後なのだから、今日ぐらいは何事もなく帰して貰えないだろうか。

 ダッシュボードのスマホが跳ねる。ドリンクホルダーに差し直せばいいものの、そんな事を気にしている場合ではない。先程の――学園内で起きた怪現象に震えた事を、忘れるようにアクセルを踏み直す。住宅街を抜けた先の一軒家、自宅に逃げ込めばなんとかなると信じているのか、そう思わざるを得ないのか。怪物や怨霊が居るのであれば壁なんて気にもせず貫通してくるんじゃないか、と実に合理的でない思考をまとめる。


 雲の上の三日月が薄白く車道を照らし、それをヘッドライトが上書きする。この下らない思考も何かでオーバーライトするべきなのだ。さっさと酒を飲んで寝よう、来年の業務開始までは何もないのだから。住宅街をもうそろそろ抜けよう、というところでそれは現れた。


 車道の中央に、まるでここは通さないと意思表示するかのように立つ見慣れた学生服。雪の降る中でコートも手袋もしていないその外見に違和感を覚える。慌ててブレーキを踏みクラクションを鳴らすと、運がいいことに思ったより滑らず、少女の約十五メートル前方へと停車した。そんな所に立っていたとしても、スピードがスピードだけに洒落にならない。ひとまずは止まってくれた、聞き分けの良い車のハンドルを撫でてやる。


「おい! そこで何をしているんだ。」

 ウィンドウを下ろし少女へと叫んだが、反応が無い。

 少女は身じろぎ一つしない。自分が轢かれるかも知れないというのに回避行動を取らないのはなぜだ。轢かれるはずが無い、若しくは轢かれても問題ないという絶対の自信があるのか。どちらにせよ、そこに立たれていては通れない。車道両端のラインを越えれば水の入っていない水田へと落ちてしまうからだ。


 確認の意味と意思の疎通が可能であることを祈りながら、もう一度クラクションを鳴らす。どうやら退くつもりは無いようだ。仕方なくドアを開けての対話を試みることとする。


「ああ、うちの学園の生徒か。どこの組? 退いて欲しいんだが。」

 ヘッドライトに照らされる少女へと近づく。一歩ごとに車道へ映る自分自身の影が段々と小さくなり、通行の邪魔をする者が大きくなる。見たことの無い顔の生徒はこちらへと一礼すると、元の状態に戻る。


「退いて欲しいというのが聞こえていないのかね。」

 反応は無い。短い舌打ちと共にどうするべきか思案する。迂回するにしても遠回りだし、退いてくれればいいだけの話。力づくで退かそうものならPTAが黙っていないだろうし、そもそも何の理由で退かないのかも理解出来ない。面倒な老人に絡まれた時の感覚に非常に似ていた。


 肩口にゆっくりと降る雪を見て車内に戻る事を決めた。このままでは埒が明かない上に、寒い。年明け最初の授業で話すべき話題としても良いかも知れない。長い溜息と同時に両腰へと手をやる。横へと足を開き、ざくと湿った音を立てる雪を見る。もし何らかの事情で耳が聞こえていないとしても、このポーズから困っている事ぐらいは汲んでくれるのではないだろうか。


 何も反応を返さない少女を背に自分の車へと乗り込む。最後の交差点までは数十メートル程度で済む。車通りも全く無いこの時間帯ならなんとか後進出来るはずだ。ギアを変え後部座席越しに車道を見ようとした時、バックミラーに何かが写り込んでいた。

ミラーと前方に居る少女、どちらも私を見ている気がした。なぜこんな時間帯に二人も生徒が車道に突っ立っているのだ。


 その時、前方で動きがあった。少女がこちらに歩み寄ってくる。中央のライン上を綱渡りするかのようにゆっくりと向かってくるその姿に異質なものを感じる。これは普通ではない、逃げた方が良いと警鐘を鳴らす脳に、何も危害を加えようとしている訳ではないだろうと歯止めをかける理性。どちらにせよ、下手に車を動かすと轢いてしまう可能性がある。私はそのまま成り行きを見守る事にした。

 運転席側の窓の横へと近寄ると、こちらを覗き込む。ドアに触れさえしないものの割ろうと思えば出来る距離まで近づかれてしまった。今なら巻き込む事もなく前進出来るが、轢かれそうになりましたなんて話が出回ったら面倒なことになる。

 ノックするかと思いきや、そのままの姿勢で何かを呟いている。


「この人、どうするの?」

「残念だけれどそのページは汚れすぎているし、加えたくも見たくもない。」

「で、誰がやる?」

「こんなのほっといても問題ないし、時間のムダムダ。」

 まるで複数人と会話しているような独り言。あえて聞かせているのだと言わんばかりの声量に、何の意図が隠されているのかも分からない。サイドミラーの中の少女が十分に離れている事を確認すると、ようやく開けた前方へと急発進した


 もっとも、ここまでの道中に法定速度を守っていたかは疑問であるし、急発進は私に責があることを示すだろう。ドライブレコーダーが一部始終を見守ってくれていて、もし法廷に立つとしても味方で有ってくれるよう祈る。自宅のガレージへと車を停め家の中へ飛び込んだ。もうこれ以上何事も起きないでくれ、罪に問われないとしても十分に反省もした。こうやって後悔もしているではないか。


 窓・ドアに鍵のかかっていることを念入りにチェックし、居間のソファーへと腰を下ろす。ようやく終わったという安堵感が指先まで染み渡る。

 あの液晶に表示したのが何者で、先程の少女たちが何の目的であの場所に立っていたか。時効が成立してもう二年も経っているというのに責め続けられなければならないのか。答えが出るはずも無い自問自答を繰り返し、いつしか意識はソファーへと沈み込んでいた。

出来るだけアイデアを早く出しつつ書いてみる、という点に注意したものの、やはりまだまだ未熟であると痛感した。

これはどうあるべきか、どう書くべきかの経験が足りていないという事なのだろう。

まだ続けます。

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