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アイシテル

作者: 玖珠野

「浩幸、私はあなたを愛しています。だから私の分まで生きて・・・。」

彼女はそう言って少し笑って俺の前から居なくなった・・・


「愛珂!愛珂・・・。」

俺はその場に泣き崩れた・・・


(どうして?

なんで愛珂がこんな事にならなくてはいけないのだろう・・・

ほんとは愛珂じゃなく俺が死んでたかも知れないのに・・・

なんで俺が死ななかったんだ!なんで愛華なんだ!俺が・・・俺が愛珂を殺したんだ!)


俺は酷く自分を憎んだ。どんなに憎んだって愛珂はもう戻って来ないのに・・・

でも憎むしか俺には出来ない。そんな自分の愚かさも俺は憎んだ。


そして何度も何度も手首を切った。

こんなことで死ねないことは分かっていた。

でも、俺はこの時、生きる気力さえも失っていた。

そんな俺が入院したのも言うまでもない。

原因は栄養失調と疲労、そして精神的なストレス様々なものが重なり俺の体を蝕んでいた。


(トントン)ドアをノックする音。

「はい。どうぞ。」

「こんにちは。」

そこに現れたのは愛珂の母親の馨さんだった。


「会社に行ったら浩幸さんここに入院って聞いたのんで・・・あの少し時間大丈夫ですか?」

「もちろん。どうぞ座って下さい。」

「ありがとうございます。」そう言って馨さんが椅子に腰掛ける。

「実は・・・」

「はい。なんでしょうか?」

「・・・。」

「馨さん?」

「実は・・・愛珂の部屋を掃除していたらこんな物が出てきたんです。」そう言って馨さんは俺に手紙の束を差し出した。

「これ、全部浩幸さんに宛てた手紙です。」

「え!」

「ぜひ受け取って下さい。」そう言って馨さんは俺に手紙の束を渡すと

「じゃ、私はこれで。」

「あ・・・あの、これありがとうございました。」



「それを、読んで早く元気になって下さい。でわさよなら。また来ます。」そう言って帰って行った。


俺は、手紙を一つ開けた。

そこには・・・。

浩幸へ

今日から私は病院生活に入ります。会える時間がかなり減るからほんと言うとかなり寂しいし不安です。でも、浩幸に会うと元気になるんだ。だからこの手紙でありがとうを伝えます。浩幸いつも一緒にいてくれてありがとう。これからもよれしく愛してるよ

愛珂より


他の手紙も似たよう内容だ。ほとんど日記状態だった。

でも最後に必ず愛してるそれで締めくくって終わる。それを読んでいるうちに俺は泣いていた・・・。自然に涙が出てきた。愛珂はなにを思いながら書いたのだろうか。

そう思いながら俺は最後の一枚に手をかける。

浩幸へ

この、手紙を読んでいる頃、私はもうこの世界に浩幸の側に居ないと思います。きっと今まで書いた手紙も浩幸に渡せないまま私は消えていくと思う・・・そんな勝手な私を許してね。

私、幸せだったよ。だって浩幸が居てくれたから。あの事故があった時、ほんとは私もうダメだって思ったの。私ここで死ぬんだって・・・

でも、そんな時、声が聞こえたの。浩幸の声が。

「死んじゃダメだって。生きてくれって。」浩幸の声が私を助けてくれたんだよ。だから私はいままで生きてこれたの。ほんとにありがとう。

浩幸と過ごした時間は全部私の宝物だからね。

私、浩幸のこと忘れないから浩幸も私のこと忘れないでね。

浩幸、愛してるよ

愛珂より


PS

大事なこと書くの忘れてた・・・。

浩幸、私の分まで生きて。私はここまでしか生きられないけど浩幸はまだまだ生きられるから、私の知らない未来を私の変わりに見て感じて。

決して私が死んでも自分を攻めないで、自殺なんてことも考えないでね。今、私が一番辛いのは私の死で浩幸が自分の未来を自分で潰してしまうこと・・・。

それだけは絶対止めてね。

浩幸は幸せなんだよ。私が生きたかった未来を生きてるんだから。

だから自分で自分の未来を潰すなんて悲しいこと考えないで。

ただ生きて欲しい。

それが、私の願いだよ。じゃほんとにこれが最後ばいばい。

世界一愛してるよ浩幸

世界一幸せな愛珂より


俺は何をしていたんだろうか・・・

愛珂の気持ちも考えないで・・・

ただ自分の自己満足のために自分の未来を潰すなんて・・・俺はなんてバカなことをしてしまったんだろう・・・

愛珂の俺はなんてバカなことをしてしまったんだろう・・・

愛珂の最後の願いも聞けないなんて・・・彼女は一生懸命俺に伝えていたのに、なにも分かってあげられなかった。寧ろ分かろうとしていなかった最悪だ・・・

そんな俺を彼女は許してくれるだろうか、俺に

チャンスをくれるだろうか・・・


俺はこの手紙を読んで生きなければいけないことを実感した。

俺は彼女の分まで生きる必要があるんだ。残された者として死んだ者の分まで生きていかなければならない。生きたくても生きられない人がいるのに、始めから生きようとしないことは間違いなんだ。生きる努力をしなければ行けないんだ。

愛珂ありがとう俺、分かったよ。もう逃げないから、俺は自分自身と戦う。そして愛珂の分まで生きてみせるから。

愛珂気づかせてくれてありがとう。

君が生きてる間に言えなかったのが残念だけど、今、俺から愛珂に伝えます

愛珂、アイシテルよ

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― 新着の感想 ―
[一言] とってもいい話で、思わず、涙ぐんでしまいました。
[一言] まずは、文章と字について。 初めの方の、『どうして?』から始まる4行が、どうして括弧で括られているのか、それが分かりませんでした。 そして、馨さんが帰っていく時の言葉で『でわさよなら』とあり…
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