コント『漫才がやりたい』
(帰りのホームルームが終わり、騒がしくなった教室の片隅に学ラン姿の男子高校生二人が集まる)
ボケ「なあなあ」
ツッコミ「なんや」
ボケ「俺な、漫才やってみたいねん」
ツッコミ「ええやん。相方は?」
ボケ「ペットのインコ」
ツッコミ「ペットに何やらせるんやお前ぇ!」
ボケ「いやでも『なんでやねん』って覚えさせたから」
ツッコミ「その一言で乗り切れる分けないやろがい!」
ボケ「そうか……」
ツッコミ「そやで」
ボケ「じゃあインコいっぱい飼わなあかんな」
ツッコミ「数の問題やないねんペットから離れろ!」
ボケ「えー」
ツッコミ「『えー』やないが」
ボケ「でも俺一人も友達おらんし」
ツッコミ「俺友達ちゃうの!?」
ボケ「うん?」
ツッコミ「ひどない!?」
ボケ「まあそれは置いといて」
ツッコミ「置いとくな!」
ボケ「ボケとツッコミどっちやるか、まだ悩んどるんよ」
ツッコミ「お前ツッコミできるの?」
ボケ「おうともよ!」
ツッコミ「じゃあ俺が今からなんか言うからツッコんでみぃや」
ボケ「おう!」
ツッコミ「よし……」
(ツッコミ側が姿勢を正し、一拍間を入れる)
ツッコミ「なんや、このマイク全然響かへんなあ」
ボケ「えっそうなん? 修理出す?」
ツッコミ「それはツッコミやないねん!」
ボケ「えぇ? そうかぁ」
ツッコミ「普通さあ、『電源入ってないやん!』とかあるやろ!」
ボケ「えっだってこれ電源入ってるやん」
ツッコミ「ちゃうねん! そういうこっちゃないねん!」
ボケ「どういうこっちゃ」
ツッコミ「『ツッコミ』言うたら相方のおとぼけを指摘するもんやろ、同調したまんまやあかんねん!」
ボケ「そっか、まあええわ」
ツッコミ「よくない!」
ボケ「俺なぁ、ボケはあんまやりとうないんよ」
ツッコミ「そりゃまたなんでや」
ボケ「だって叩かれたら怪我するやん」
ツッコミ「そんな強く叩かへんやろ!」
ボケ「いやいや、絶対一回やったら頭から血ダラダラ流すことになるやんか」
ツッコミ「お前何想像してんの?」
ボケ「居眠りしたときの先生の一撃」
ツッコミ「ツッコミで出席簿の角は使わへんから!」
ボケ「いや先生よくツッコミやっとるやん」
ツッコミ「あれは漫才やのうて注意や!」
ボケ「その違いがわからへん」
ツッコミ「そんなことあるぅ!?」
ボケ「でも、インコ叩いたらあかんしなぁ」
ツッコミ「ペットから離れろ!」
(一拍入れて、ツッコミ側が呆れた表情でボケ側を見る)
ツッコミ「もう面倒くせぇ、とりあえずお前ボケも試してみいや」
ボケ「うんわかった」
ツッコミ「待ってろ……この紙でええか」
(ツッコミ側がズボンの裏ポケットから紙のハリセンを取り出す)
ボケ「うわぁ弱そう」
ツッコミ「ツッコミに攻撃力を求めるな!」
(ツッコミ側がハリセンで叩く)
ボケ「痛いっ! お、お前暴力はあかんて」
ツッコミ「痛くないやろ嘘つくな!」
(ツッコミ側が叩くそぶりを見せ、ボケ側は頭を手で抑えて軽く縮こまる)
ボケ「痛い、痛いねんて!」
ツッコミ「叩いとらんわ!」
ボケ「嘘はあかんよ兄さん」
ツッコミ「俺はお前の兄じゃねえっ! どっちか言うたらお前の方が年上やろ!」
ボケ「そんなん気にするこっちゃないやろ、難しいやっちゃな」
ツッコミ「お前がボケてっからツッコんでるんやろが!」
(ツッコミ側が話している最中にボケ側がツッコミの肩越しに奥を見て、怯えた顔をして一歩後ずさる)
ツッコミ「なにやっとるんや」
ボケ「先生が来た、晴れ時々広辞苑〜!」
ツッコミ「ええっ!?」
(ボケ側が叫ぶのに合わせて、ツッコミ側は頭を抑えてかがみ込む。ボケ側はハリセンをひったくり、ツッコミ側の頭目掛けて思い切り振りかぶる。)
ボケ「隙あり、もらったあっ!」
(ボケ側がツッコミ側の頭をハリセンを使って全力で叩く。)
ツッコミ「痛ああっ!? お前手加減せえやバカヤローッ!」