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女性、生きる、異世界、何で?  作者: かっちゃん
第一章 転生
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二話

目を覚ますと、知らない木々が私を取り囲んでいた。

…二度目だな、この感じ。目が覚めたら知らない天井があった、みたいな。

今からこれを「知らない天井現象」と名付けることとしよう。


「ぅあ…」


「うおっ…!」とか言おうとしたのだが、うまく言葉が出ない。

体とか手とか見てみれば、私の体がひどく縮んでいた。どうやら本当に赤ん坊になっているらしい。

元の体(前世の体)は豊満なボディとは程遠い貧弱なものだったけれど、いざ子供の体になってみると中々どうしてほのかな悲しみを感じる。

確か、自分をかたどるものは「魂」なのか「身体」なのかという議論があったな。転生なんてものが可能なんだったら自分とは魂であるという言が正しいということになるのだろうか。なんてことを思ってみる。

ただ、長年連れ添ってきた自分の身体だ。いなくなると胸にポッカリ穴が空いた気分になってしまう。


「…ぁあぅ。ぅえ…!」


「これからよろしくね。私の新しい体!」と言ったつもりだったが、やっぱり言葉を発することはできなかった。赤ん坊というのはとても不便なものらしい。予想はしていたけれども。


とにかく転生してしまった者はしょうがない。不便ではあるが、この感じで一生を全うしなければならないのだ。後々困ることのないよう、この世界のこと、少なくともここら周辺のことについて知識をつけなければならないみたいだ。


仰向けからうつ伏せへ、よっこらせと体を反転させる。あ痛!…なんだ?頭がうまく操れない。地面に顔を勢いよくぶつけてしまった。

ああ、そうか。首が座っていないのだ。え、そこらへんどの塩梅、もうちょっと都合してくれないの?

というか、首に限らず、この体全く動かすことができない。今体を反転できたけれど、結構頑張ってようやく回転できた感じだ。

…そうか。つまりそういうことか。


どうやら私は、しばらくの間この場所でじっとしていなければならないらしい。

「じっと」とは、文字通りじぃっとすること。全く体を動かすことなく、運動といえば両手足をバタバタさせるくらいで、何週間か只々寝ていなければならないと言うことだ。

虫が来ても獣が来ても、火事が起こっても大嵐が発生しても。絶対に動いてはならない。

動けないのだからしょうがない。


退屈よりも先に恐怖がやってくる。ただただ息をすることしかできない時間。

小学生の頃、死後の世界はただ真っ暗闇の場所で、永遠に覚醒していなければならないのではないかと考えていた時期があった。その考えに酷く怯えて、二、三日眠ることすらできなくなったものだ。

今私の目の間には森林と青空が広がっているけれど、そんなもの瑣末な違いにすぎない。

要するに、私は今、想像する上で最悪に近い『死後』を体験しているようだ。

…まあ、永遠に地獄の窯で焚かれるよりかは幾分もマシかもしれないが。


いずれにせよ、神様というものはとんだサディストらしい。


ーーーーーーーーーーーーーー


ここでこの世界についておさらいをしておこう。マルなんたらのおっさんは転生の仕組みとか以外にもいろいろと説明してくれていた。かなり重要そうな情報である。忘れてはならない。

どうせ何をするでもない時間ができたのだ。頭の中を整理するに越したことはないだろう。

そういえば、前世ではやけに瞑想がブームになっていた。私は流行に乗らないことを心情としているゆえに瞑想などやったことはなかったが、確かに何もしないでじっとしていると、頭の中のごちゃごちゃを整理するのに都合が良い。瞑想の効果というのは、つまりこういうことだったのだろうか。やっておけばよかったかもしれない。


話を戻そう。

この世界の名前は『エリシア』。勿論、方言とか宗教の違いでいくつか他の名前もあるが、広く一般に、そして世界中で使われている名前がこれだ。大陸は三つあって、左から「バリ大陸」「グライス大陸」「ユーフレオン・シリエンス大陸」と呼ばれている。大きさは、ユーフレオン・シリエンス大陸、バリ大陸、グライス大陸の順で大きい。


この世界の人間は、前世と同様に弱肉強食のトップに君臨している。ただ、亜人種というものがあり、それらも人間と同様似弱肉強食のトップにある。

人間と亜人との違いをわかりやすく言うのなら、前世で言う所の人種間の違い程度らしい。もっとも、この世界で暮らす人間たちがどう思っているかは知らないけれど。

それ以上のことは教えてくれなかった。あとは自分の目で見て考えろということだろう。


この世界には超能力みたいな力がある。

炎を操れる、雷を落とせる、水を温めることができる等々、サイキックなことができるスーパーパワーだ。

誰でも使える力というわけではなく、100人に一人とか10人に一人とか、そういう割合で自分に固有の能力が発現するらしい。いわゆる「固有スキル」と言った方が分かり易いか。

固有スキルを持つのは人間、亜人に限られない。一定の知能を有する個体ならば、動物でも虫でも、果ては菌種にさえも発現するものがあるらしい。菌種は知能など通常持たないが、『物に知能を与える固有スキル』があれば、理論上は菌種の固有スキルの発現もあり得るという。

中々難しい世界だ。生きていく中で慣れていくしかないだろう。


マルなんたらのおっさんに教えてもらった情報はこれくらいである。

本当に大まかに、世界のこととか人種のこととかを教わった程度だ。

あとは、前世では見たことがない程大きな生物がいるとか、不思議な現象とかがたくさんあるから気をつけるようにと言っていたくらいか。

基本スタンスは飽くまでも「自分自身で感じ、考えろ」ということらしい。難しい注文をなさる。

もうちょっと過保護になってくれても良いと思うのだが、これが異世界という物か。世知辛いのはどの世界も同じらしい。


あと、なんかステータス画面みたいな物を渡された。

いるかいらないか聞いてきたから、一応いりますと答えておいたのだ。転生ものでよくあるやつだし。単純に貰える物はなんでも貰っておきたいし。

ただの目安にすぎないけれど、安全に生きる場合には重宝すると言っていた。

確か、なんて言ったっけ。

ああ、そうだ。「ステータス」って呟けば画面が現れるんだった。

試してみよう。


「ぅえ…あう!」


無理だった。しょうがねぇだろ。だって赤ちゃんなんだから。


と思ったら、目の前にブォン!と電子画面?みたいなものが浮かび上がってきた。

「ステータス」と言ったつもりになっていればなんでも良いらしい。


どれどれ、一体私の身体能力はいかがなものなのだろうか。


ーーーーーーーーーーーーーーー

<ステータス>

名:なし

性:女

種族:不明

身体能力

 握力:0.1kg未満 ゴミ

 100m走:1時間以上 ゴミ

 5km走:1日以上 ゴミ

 立ち幅跳び:ゴミ

 反復横とび:ゴミ

 砲丸投げ:ゴミ 砲丸に潰されるレベル

 (以下省略。何か3、4桁個以上項目があった。検索機能つき。なお全部ゴミだった模様)

固有スキル:贖罪

加護:マルシャの加護

キル数:なし

取得資格:なし

取得段位:なし

称号:返事がない。ただの赤ん坊のようだ。

ーーーーーーーーーーーーーーー


…んー。

なんていうか、あれだね。


ひでぇ。


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