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クラーケン釣り。

 さてさて、ユーミ暦46日、今日は薄曇り。雨が降りそうだよ。もう雨季は近いらしい。まあ雨収納で設定すれば濡れないけどね。跳ね返りとかも収納。泥汚れも収納。


 ちなみに祭典は続いている。お客さん多いんだよね。


 リート子爵はもちろん、ブラーム公爵とかいう大貴族さんも来てるし、東の伯爵家と呼ばれるイーモン伯爵とか、ハグリット侯爵とかいう人も来てる。まあ私は皇帝だから他国の貴族に頭を下げる必要はないとリッタ様には言われている。


 実際まだ小角首長国に外国との直接貿易をさせるのは怖いんだよね。誘拐の懸念は残るわけで。それでイストワールと貿易するにあたりイストワールの国内法の整備が整うまではエハルたち収納持ちが間を取り持って貿易することになっている。


 交渉担当としてマーベル、護衛としてハーチア、セルト、ベリーをつけて小角から、リート、マーティス、ブラーム、イーモン、ヒガンの五港との貿易をさせることにしている。


 それとメアリーとかモヒートは戦えるし、モヒートは目がいいので防衛戦力として追加した。ちなみに予想通りというか、メアリーは双剣使いでブラッディ・メアリーと呼ばれているらしい。しっぽは素晴らしいもふ加減。


 今日は珍しくジル、シロル、ルル、ネイコ、ネシアが釣りに参加している。カツオノさんとアジさんもいるぞ。ネイコは大きなぬいぐるみを釣りに使うらしい。すごいスキルだね。


 ちなみにリッタ様やホタテさんたちは外交が忙しいようだ。小角保護法を制定する方向で話を進めているらしい。


 今回の釣りはクラーケン釣りだ。烏賊釣りの方法を取るのだけどサイズが違うからね。烏賊釣りに使われるエギと呼ばれるルアーの一種を大型にして使うことにした。単純に大きくするだけだと泳ぎとか悪くなりそうだとは思うけど、竿がそもそもエギングロッドじゃないのでやってみるしかない。


 エギとは餌木と書く、海老の形に傘のような針が付いていて、海老の部分に抱きついた烏賊を掬い上げるように引っかけて釣り上げるルアーだ。アオリイカが有名だけどコウイカなんかでも釣れてくる。


 漁師町では食べられているそうだが、タコやイカは見た目から食べられないかもしれないなあ。タコには毒のあるタコもいるので気をつけよう。ヒョウモンダコは唾液にテトロドトキシンを含んでいる。ちなみにクラーケンは毒はなくて美味しいらしい。大型の魔物はこの世界だと魔力の味が乗るので美味しくなるんだよね。ヒガンではアキハル君が主導して食べてるようだ。やっぱり日本人だね。


 力が強いので9フィートロッド、ラインは5号、リールは5号150メートル巻きで釣りを始めよう。みんなには難しいと思うので近場で鯵狙いでアジングかサビキをやってもらう。


 釣っているとジルが話しかけてきた。


「ユーミ様、釣りの邪魔をして申し訳御座いません。少しよろしいでしょうか」


「いいよ、イーモン伯爵のこと?」


「お見通しでしたか」


 ジルが昔仕えていたのはそのイーモン伯爵らしい。東の伯爵家とまで言われる伯爵家が潰れる寸前まで追い詰められていたとか、きな臭すぎる。この機会にそのあたりも片付けるつもりだ。なのでイーモン伯爵の敵とみなされているハグリット侯爵も呼んだのだ。呼んだのはリッタ様だけどね。


 さて、爆弾を仕掛けたのはどちら様かな? 永遠落下スキルが唸るよ。


 まあ烏賊釣りしよ、ジルに話を聞きながら。イーモン伯爵領ってヒガンとの取引もあれば港もあるからそんなに困窮するのが考えにくいんだよねえ。


「実はイーモンにおきましてゾンビが発生したのです」


「ゾンビ?」


 ゾンビパニックってお話だと好きだけど、ヤバくない? 嫌な予感しかしない。


「それはほんの一年前のことで御座いました……」


 ……ホラー語り?! ジルの話をまとめるとこうだ。


 ある雨の日、イーモン南の町で魔人が現れた。


 この星の魔人は亜人の一種ではあるけど悪い存在ではないらしい。まあそいつは別で。


 凶悪な力をもって暴れたらしい。その魔人はイーモン南で暴れまわり、その対処に伯爵は騎士団まで出した。


 今をもって何故その魔人が暴れたのかはわかってないらしいが、騎士団にも甚大な被害が出た。そのあげくに魔人には逃げられたらしい。ここまではまだいい。ときおりドラゴンが暴れるようなことはどの地域でも起こったのである程度の余裕はイーモン伯爵領も持っていた。


 しかし、そののち、戦いから帰還した兵たちや現地の人々の間に熱病が広まった。その熱病は激しい咳や嘔吐などの症状を伴い、多くの人々に広まっていった。


 イーモン伯爵は冒険者ギルドにも依頼を出し、上位のヒーラーを呼び寄せこの病の対処に当たる。不幸なことにこの病は疲弊したヒーラーの中にも広がってしまった。最悪なのはここからだ。


 当然ヒーラーたちはこんな危険な病に二の足を踏む。必然的にイーモン伯爵はより高い報酬を冒険者に払う必要が出てきたのだ。そして三次感染が起こる。ただでさえ危険な病がさらに広がりを見せようとした、その時。


 最初に感染した者からゾンビ化する者が現れた。最初のうちは騎士団で対処できていたがその騎士の中からもゾンビが出た。あっという間に広まるゾンビ化の波。それに対処するヒーラーまでゾンビになる始末。


 そんな状況では一息に対処するしかない。しかしすでに高額で呼び寄せたヒーラーたちまでが病に冒されはじめた。救援を望むために伯爵は私財を全て吐き出さざるを得なかった。そして借金が積み重なる。


 ゾンビ化の波は南に広がったためアキハル君が出てきた。ヒガンまでゾンビが広がっては困る。イーモン伯爵もアキハル君に救援を求めたが他国の重鎮であるアキハル君に救援を求めるのにタダとはいかない。アキハル君の方はどうでも良かったらしいが、さすがにタダで動いたら他がうるさい。莫大な借入をして救援を取り付けた。


 ゾンビパニックは落ち着いたが冒険者たちへの補償などもあり、積み重なった借金でイーモン伯爵は首が回らなくなった。その結果ジルが自ら身売りする流れとなったらしい。


 ……ジルの語り方が怖かった。なんなら下からライトアップされてるところを幻視した。ジルのあだ名はジュ○ジに決まりだな。まあそれはおいといて。


 うさんくさい。めっちゃうさんくさい。


 その魔人とかゾンビが誰の目論見で出てきたのか。そういう話である。単独で暴れたならなぜイーモン伯爵領でだけ暴れたのか。かなり危険な病だ。犯人はアキハル君が始末をつけるところまで読んでそうである。


 嫌な予感しかしない。……って、お?


 きたっ! 烏賊っ!!






ジル「それはある暗い雨の日のことでした……」


ルル「ひいっ!」


ネイコ「まだ怖いとこ入ってないけど?」


ルル「ジルの顔と雰囲気が怖い……」


ジル「ふふふ……怖いですなあ……」


ルル「ひいっ!」


ユーミ「ルル可愛いなー」


ルル「うっさい、黙れイケメン」


ユーミ「女の子ですうー。ブーブー」


ジル「……そして少年が扉を開くと、床一面が真っっ赤に、それはもう赤黒い血で染まっていて……」


ルル「ひいいっ!?」


ユーミ「ぶふっ……普通に怖いジル」




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