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飯を食わせにきました。

 ここからはわりと作業です。クーラーボックスは無敵すぎるので時々退屈な展開もありますよ。



 これからどうするかなーとぼんやりメアリーの尻尾をもふっているとリッタ王子がうらやましそうな顔でこちらを見ている。メアリーはなんか顔真っ赤でよだれ垂らして目がイッちゃってるけど、これうらやましいの?


「僕もユーミさんにもふられる耳とかあれば……」


「さらっと危険な発言してる?!」


 いや、やることは多いんだよ? その髪はもふりた、じゃなくて小角湿原開拓なんてまだ10%も終わってないしね。最後まで開拓しても小角族の数が多いから労働力は十分にある。そもそも小角族の性質として小角グリグリしあえば疲れないで労働し続けられるっていうブラック社畜も真っ青な能力があるからね。ガソリン(お酒)だけ補給しておけば壊れないで働き続けるとか、小角族の種族的価値がヤバいんだけど。狙われる種族じゃなければもっと繁栄したのかもしれないね。


 まあ小角族は野心的なものは少ないんだよ。新しいもの好きとかはあるんだけど征服欲はないね。生活と治水に追われているのかな。それもこれまでだ!


 今までは嵐のたびにテントを失って移住して建て直してって生活だったんだろうけど、もう治水工事は私がやりまくってるからね。畑用の水路と氾濫時の水を逃がすための堀と防水用の城壁、山盛り作ったからね。


 畑ではもう収穫が始まってるし輸出ができるほどになってる。食料は魚がものすごく増えてるよ。釣りでカツオノさんが本当に漁師かというくらい楽しんでるからね。楽しむ、これ大事。うちは楽しくない仕事禁止だからね。それは小角族にも広まりつつある新しい文化だ。この飢えの時代にあって小角族に飢えてる人はもうほとんどいない。ホバシラとかチャバシラとかの小さい集落まで食べ物は届けられてる。魚や貝の加工品も海草も小角族の体にはあっているようで、山の方の小角族がワカメサラダを頬張っていたりする。なんか小角族は草食に近い雑食みたいだね。肉は湿原の陸鮫とかがよく食べられてる。


 試しに陸鮫を釣ってみた。フロッグ(蛙型ルアー)で探ってみたら芦のような植物の周りでどかんどかん釣れた。ビックリだわ。そういえばこの辺りの魚ってぜんぜんスレてないんだった。トップルアー(水面に浮かぶルアー)は釣りにくいんだけどね。


 トップだと魚は水を割ってバチャン、とか跳ねて食らいついてくる。その生き物が生き物を食らうシーンって本当に美しいんだよね。生きてる感じがする。


 魚が体を振りながら水飛沫(みずしぶき)を撒き散らしながら宙を舞うんだよ。すごいよ?


 難しい釣りを制した感動もあるしね。


 おっと、仕事しないで釣りしてるんだけど、これが私の仕事だ! と、開き直ってるからか誰も何も言わないね。


 それで今日はユーミ暦30日になった。釣りの合間にメアリーをもふっているわけです。モフモフ。やってたらリッタ王子が話しかけてきた。


「食料が魚中心に増えてるわけだけど、これを、マーティス領に売りにいけませんか?」


「なんでマーティス? 確かリートと敵対してる伯爵だよね?」


「いろいろ理由があるけど、ひとつにマーティスは山間だから塩の価値が高まってる。リートからは売り渋られてるしね」


「なるほど、敵に塩を送るんだね」


「そうそう」


 また信玄公の話してるけど、山間の武田は塩の価値が高くなって、上杉はそこを狙って塩を売りさばいた。塩がないと人は生きていけないからすごく喜ばれたみたいな美談にされてるけど単に相場の問題なんだよね、あれ。上杉は高値で塩売ってガッポガッポ儲かったって話なのだ。


「もうひとつが大事なんですけど、現在のマーティス伯爵はカリン・マーティス女伯爵なんですけど、穏健派で狡猾、仲間にできるならしておきたいんです」


「ほうほう。やっぱり女の子だから戦争嫌いなのかな?」


「いや、普通に有能な人なんですよ。戦争しても勝てないのは知ってるんですね。質素倹約を旨として自領で採れる芋ばかりを食べてて、地元では尊敬の意味を込めて芋女伯って呼ばれてるんです」


「それ尊敬されてる?!」


「いや、普通に貴族にそんな悪口いったら首をはねられますよ? それだけ温厚な人と(した)われてるんです」


「そういわれてみるとそうなの?」


 でも領民と同じものを食べてるっていうのは少し信頼が置けそうだ。ラグラを挟んだリートと積極的に対立してるわけでもないのなら、輸出ぐらいはいいのかも。海老とか蟹を収納して売りにいこうかな。


「マーティスってお金になる資源はあるの? 売りにいくにしても買うものがないんじゃダメだよね」


「有名な産物は銀、芋、リンゴ、梨、葡萄、そこから焼酎にシードルや白ワインなんかの果実酒も有名ですよ。収穫量が少な目だけど……こっそり開拓するのはどうですか?」


「取引するならありかな。注意点は?」


「嫡男のパリツは貴族らしい貴族ですよ。女癖が悪くて金遣いが荒い。まあ一部の領民には金蔓として好かれてますけどね」


「まあお金を使わない貴族より使う貴族の方が経済的にはいいのかな?」


「一概に悪いといえないのが困るんですけどね」


 まあお金を使うのはいいことだ。それがどこに流れるかが問題なんで。賭け事にお金を使うと闇の方にお金が巡ってしまうからいいことない。


 物の売れない国より物の売れる国の方がいい商人もたくさん入ってくる。当然そっちの方が国は潤う。だからよほどひどいお金の使い方をしない限りカリン女伯爵も放置してるのか。なるほどなあ。


 自分は芋を食べて息子に贅沢させるって、実はいいお母さんなんじゃ……ツンデレ?


「お前がいうなコン」


「メアリーが突然よみがえった!」


「じっと聞いてたコン。いい作戦コンね」


「なにか付け加えることは?」


「今は実権を握らせるのはカリンがいいコン」


「僕もそう思うよ」


「そこで塩をはじめとした食料を送るコンね。陛下、この王子様腹黒いコン」


「だね」


「そ、そんなに黒いかなぁ……」


「お腹出さない! てか色白いね!」


 なにやってるんだろうこの二人。まあ大きな流れとしてはカリン女伯爵に取引を持ちかけて資源はこちらで探り、経済をマーティス伯爵領から回復させるのね。北の辺境伯や公爵家じゃないのはなんか理由あるのかな。まあラグラはないけど。


「公爵家は自力でどうとでもできるし、北の辺境伯家に(くみ)するとそのあとのノーゼリアとの関係が面倒くさいです。伯爵は力を持てば周囲に十分な影響力を持つでしょう」


「間接的に敵国を攻められるからあとの交渉がやり易いコンね。ノーゼリアもただ敵と断じるのはもったいないコン」


「さすが狐獣人は老獪だね」


「老獪じゃなくて狡知に長けるというコン」


「メアリーって若いの?」


「……」


 うわ、ものすごい目でにらまれた。女性の年齢はどの世界でも禁忌だったよ。


「イケメンのくせにときおりデリカシーないコン」


「わざとでしょ。この女皇帝そういうとこありますよね」


「はあ、実は一番腹黒くないコン?」


「私のお腹は真っ白だよー。美白してる」


「そういうとこが腹黒いコン」


 まあでもそういうわけで、私はマーティス伯爵家を訪れた。飯を食わせにきました!






モヒート「くあっ?! くあー!!」


マーベル「この鳥たまに変な興奮するよな!」


メイレン「陛下に(もてあそ)ばれるのが癖になった」


マーベル「なんだ、ただの変態か」


ルル「変態代表がこちらです」


ハーチア「陛下! 私の方が美味しいですよ!!」


ネイコ「……病気なの?」




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