シーサーペント料理。
さて、クーラーで捌けば一瞬だけど血抜きだけしてあとは解体ショーにしよう。肉が厚くて少し筋があるからミンチにしてミートボールやハンバーグにしてもよさそう。
小角首長国側のドワーフ、ドロタさんやうちの怪力ドワーフ、バーリ、巨人のブリックが巨大なシーサーペントの首をゆっくり落としていく。皮も使えるので剥いでいく。鱗は小さいな。鰻みたいな見た目だ。7トンもあるだけあって意外と太い。魚みたいな見た目だ。
肉も大きいので削ぎとった塊がデカい。刺身とか食べられるのか? 一応血抜きのさいに熟成もしてある。菌や毒性はないし、火を通さなくても消化できないということもないようだ。ならやってみるか。
冊をひとつ、刺身にしてみる。大きいので膨大な量だ。どんな味だろう? ちなみに鶏のササミを刺身で食べたことはある。なかなか甘いが噛みきるのが困難だった。小さく切って食べたけど。まあ牛肉と鶏肉はいいんだが、豚肉は危ないらしいので刺身はやめようね。
シーサーペントの寄生虫とか貝とか着いてたのは全部剥がしている。皮がポツポツ白いので鯨に近いように見えるな。それでは実食。みんながひどく怯えた目で私を見ているのは気のせいだと思いたい。男連中さえ、お前、それいくのか、みたいな目をしている。いや、やるでしょ普通。やらないの? サバイバルだと火が起こせないから生で魚の腹を歯で引きちぎって味付けは海水で食べたり……え、しない?
あ、普通に美味しいわこれ。サクサクした意外と柔らかい噛みごたえ。肉というより魚に近いのは海の生物だからかな?
私がなんともなく食べてるのを見てからようやく数人が手をだしはじめる。おい、私女皇帝なんだけどなんで毒見させられてるみたいになってんのよ? 勝手に食べたって? 興味わくじゃん?
「女皇帝すげー。いうだけあるよな」
「カツオノくん、ユーミグリグリはお好きかな?」
「頭が砕けるからやめて!」
ユーミグリグリは頭の骨が軋まない程度にこめかみをグリグリします。小角族に大不人気。
「やっぱり焼きからかな? 塩とタレでまず焼いてみて。焼き肉みたいに漬け焼きしてみようかな」
「それは美味そう」
「刺身も美味いよアジさん?」
「それはいや……」
「僕は食べてみようかな?」
「なんで王子が毒見にチャレンジするんだよ! しかたねえ、オレが食うか……」
嫌々ながら王子の付き人だからとエシルさんから食べ始めた。そうするとようやくみんな刺身に手を出したね。
「ライムの酒くれ、あれがあうわ」
「はい」
エシルさんはなんで私の出す酒を把握してるの? 飲んだっけ? 晩餐とかで出したか。まあライムチューハイあうよね。脂がまあまあある。海の生物だから固まりにくい脂だろうか? 鯨とかは恒温動物なのに脂は固まらないんだろうか? シーサーペントは変温動物だろうか? 恐竜は恒温動物だという説があるけどね。
それにしてもシーサーペントか。前世の世界にいたら絶対に食べられなかったよね。なんか50メートルあるアナコンダがいるとかいう伝説は聞いたことがある。巨大生物はロマンだね。
アナコンダは臭そうだから食べられなくてもいいや。この世界だとワニとかよく食べるらしいけど、私はまだ食べたことは……あるのかな? わからない。なんでも気にしないでいくからね。
「女皇帝ってか蛮族じゃねえか」
「失礼だねエシル君。さすがに人は食べないよ?」
「そりゃどうも」
人間食べた人も人食い人種もいたわけだけども、私がやるかって言われたらやらないよ。蛇とか蛙なら食べるけど。ヤモリの黒焼きは食べてみたかったけど食べたことないなあ。
「美味しいもの食べましょう」
「そうだねリッタ様。じゃあこのシーサーペントの肝を野菜炒めにしてみようかな」
「肝って……なぜ内臓系いくのよ」
「リンヤさん、肉食動物は内臓から食べるんだよ。なぜならそこに栄養があるから」
ビタミン系は肉食動物は草食動物の腸からとってるんだよね。栄養が豊富だから肉食より草食動物の方が美味しいんだよ。雑食動物は毒性が高いし不味いんだよ。
火を加えたらなくなる毒ばかりじゃないし蓄積される毒は高等な生物にほど溜まりやすい。高等な生物は食べちゃ駄目だ。だから魚が動物では一番健康にいい。草食動物のモツもいいけどね。
シーサーペントは魚を食べてたからそんなに臭みもないね。食物連鎖はスズキとおんなじ位置かな。そう不味いはずがないよね。
こうやって食べたことのないものの味もある程度予測できてしまうんだな、これが。
「はい、シーサーペントの肝炒め」
「おう、毒見するわ。なんか蛇の肝って毒がありそう」
「その可能性は忘れてた」
「やっぱりお前から食え!」
大丈夫、インフォさんから警告ないし。蛇の毒は酵素だから焼くと壊れるよ。毒蛇食べる話なんてよく聞くでしょ? キングコブラとか美味しいらしいし。食べてみたかったな~。
ん、普通に鶏の肝の味だわ。少しさっぱりしてるから鶏の方が好きな人は好きかも。ちょっと焦がしてそれでソース作って混ぜたらなお美味しくなりそう。やってみるかな。
「……思ったんだけどお前、料理は上手いよな」
「料理は、ってなんだよ。は、って。裁縫もできるよ? 繕うだけだけど」
ぬいぐるみくらいは作れる。靴下のやつとか。女の子だからな! がるるるるっ。
あと洗濯もできるし最近の趣味は建築です。適当にやるのがとても楽しいです。ガチなもの作ろうといきなりしなかったらわりとなんでも作れるんだよね。最初に作るかどうかが大事なんだよ。料理だって最初は焼き飯でいい。難しいの作ろうとしないで鰹節と醤油だけとかね。
んで、適当に作って美味しかったらちょっと工夫してみればいい。最初はレシピを見てどれがどう味に影響するか考えて、失敗もしてみるのは勉強になるんだよね。人に食べさせたら駄目だけど。
さて、肉の方はわりとスジは柔らかくて噛みきれたのでステーキ焼いてみる。フライパンでコールドスタート。炭火だから少し熱量を落とすためにしばらくはフライパンを宙に浮かしておく。ガスなら楽なんだけどなー。炭火だから遠火でも火は入るけど、じっくり中まで火を入れないとね。
ステーキのレアって中まで火が通ってないと駄目で、うっすらピンク色のがレアなんだよね。中が赤いのはブルーとかブルーレアというらしい。私は生焼けは食べないけど好きな人はいるよね。でも火が入ってないと生血をすすることになるんだけどな。あんまり体によくなさそう。動物によるけど、血が火を入れないと毒になる生物もいるんだよ。ウナギとか。
初見の生物はだから火を入れて食べようね。
「お前は生でいっただろ!」
「自己責任だよ自己責任。サバイバルだよ。楽しいよね」
あれ、みんなため息ついてどうしたの? 幸せ逃げるよ?
ちなみにフグとか火を入れてもダメなやつはいるよね。私の婆ちゃんは塩漬けしたらだいたいイケるとか言ってたよ。婆ちゃんはそれで死んだから真似しちゃダメだよ?