リッタとジギング。
日間転移転生のファンタジーランキングで146位に入ってました。皆様応援有り難う御座います!
ユーミ暦26日。小角族たちは龍鱗川近辺の警備に当たる。彼らとしては龍鱗川を渡った丘陵地帯で戦うのが楽ではないかと考えているらしい。
信じられないけど百年前のラグラ男爵との戦いではカツオノさんと弟のエボシさんがタッグを組んでラグラ男爵軍をめちゃくちゃに壊滅させたらしい。その戦いで肉親をカツオノさんが死なせてしまったのでそれからカツオノさんは百年ニートになったそうで。
けっこう悲しい理由だね。それでスキルがヤバイとか言ってるのか。もう立ち直ってるみたいだけどね。釣りに救われるとか、……良かったね。
私たちは引き続きイストワール王家の二人を接待だ。リッタ王子様は大使としてうちで住むことになるけど、その辺りの打ち合わせもする。
小角族の方は結局私の力なんていらなかったかもしれないね。まあ食料生産とか風土病対策とかいろいろ私の力で小角族は持ち直したとホタテさんたちには喜ばれてる。それでも助けられてるなら悪くない。恩に感じる必要はないね。私なんて良くも悪くも災害だ。私が心配なだけだからね。
私はのんびり釣りしていられたらいいや。今日こそジギングしよ。
一応小角族には打ち上げ花火を渡してたりする。何ヵ所か繋いで遠方からでもわかるようにしてる。いざとなれば飛んでいくためだ。軍隊なんて収納してしまえば終わりだ。すごいなクーラー。理不尽もいいとこだ。
「敵に回す方が悪いのかも」
「私が悪いやつだったらどうする?」
「どうもできないですし、絶望するんじゃないですか?」
それでいいのかね? まあたしかにそうするしかないや。私の場合逃げるかな。できるだけ逃げて滅びのときまで遊ぶ。
「そのときは一緒に連れていってください!」
「あはは、友達は連れてくよ。悲しいことになるかもしれないけどね」
「そのときまで幸せにすごせばいいんですよ。どうせ人もなにも世界が滅びれば滅びますし」
実際すべての物質は壊れていくんだけど、この世界には魔力があるからなあ。ひょっとしたら本物の永遠もあるかもしれない。そう思うと。
うーん、滅びないのは滅びないで不幸な気がする。今日明日滅びるとか言われたら慌てるしイヤだけど永遠も辛いよね。
なぜかリッタ様と二人で釣りだ。小角族は防衛のために湿原に帰った。うちの人たちとカンポス王子様は打ち合わせだとか。
変に気を使われるのやなんだけど。特になにかする気もないし。ぶっちゃけ私たぶん一人で生きていくわ。友達より上はいらないや。……たぶん一度死んだから、また死んだときに誰かが悲しんだら嫌なんだ。
「悲しむのは当然のようで、悲しまれる方も悲しいんですかね」
「寂しいもの、実際に」
「そうですか。なら肩を寄せ会いますか?」
「上手いこと言っても駄目だよ? とうぶん恋とか考えないし」
「寂しいー」
「ぶふ、そんなキャラだったの?」
「僕は普段からお気楽なキャラですよ?」
「ユーミ真偽判定官が黒と判定します」
「ひどいなぁ」
今日は雨上がりの薄曇り。長い雨の中だと釣果は減る。水温が下がれば魚も動きが悪くなるし暖かいところに移るからだ。世界が寒くなってる今だから仕方ないけどね。寒くても魔物は元気に出るらしいんだけど。
「寒ければ雪の魔物とか出ますね」
「美味しいの?」
「氷のは食べられないですけどヒョウとかウサギなら美味しいかもです。臭みが少ないらしいですよ」
「へえー。美味しいんだ。雪シカとかいるなら食べてみたい」
「いいですね。これが釣竿ですか?」
うん、リッタ様は釣竿を持たせると海に落ちそうに見える。こうしてみるとか弱いんだけど、テーブルで向かい合うと迫力なんだよねえ。謎だわ。
今回は9フィート(約2,7メートル)ジギングロッドと六号ライン150メートル巻きの大型スピニングリールだ。ジグは60グラムの大型メタルジグだよ。ユーミ本気モデルだ。大型青物狙います!
ハーチアがジグを美味しそうとか言ってたけど鯵食べてなさい。ちなみにドワーフたちは三日目の宴会に突入してて酒を求めてきたので四斗樽を十樽くらい出してあげた。神輿みたいに担いでわっしょいわっしょい持っていってた。あとで混ざろうかなぁ、お昼くらいから。釣れなかったらだけど。
料理は作って持ってる。クーラーに入れてるよ。……普通にピクニックに聞こえるけど百食は入ってる。材料もたくさんあるし生物のお刺身もたくさんある。つか作れる。
山をもうひとつくらい削ってもいいかもねー。どこか敵対領地でもあれば更地にしてくる? 自然破壊がえげつないことになりそうだからやめとくけど。
「やっぱりユーミさんは戦争とかしない方がいいね」
「そう思う?」
「してくれてもいいけど、なんだか本当の平和って暴力じゃ作れない気がするし」
「暴力じゃ停止させることしかできないからね。二度と生まれないようにするには……豊かさをもたらすことかな、やっぱり。それで適度に人口は減らす。リソースが豊かさに間に合う環境を作るしかないね」
「できますかね?」
「千年もあればできるでしょ」
私はとりあえず時間をかけて品種改良をするよ。あとはあのドワーフどもに自分で酒を作らせる。もうやってるけどね。
「釣るよー」
長めのジギングロッドを振りかぶり、しっかりと遠投する。今日はナブラ出てないなー。あちこち投げて人工ナブラを作ろう。複数人でやるものだけど、一般的なやり方じゃないかも。
コマセ撒いてもいいけどねー、そうすると餌釣りになっちゃう。ジギングは疑似餌釣りだからねー。
「よっと……」
「お、キャスト上手ーい」
「えへへ、釣れるかな……」
「どうだろう。潮はいいよね」
ここいらが潮時だぜ。釣れそうな潮のときに言おうね。そろそろいい頃合い。今が満月から少し過ぎちゃってるのかな? なので昼くらいにいい潮になるはず。潮が動く時間帯に魚も潮に乗って動くからその時間帯が一番釣れるからね。
手返しよく打って、なるべく小魚がたくさんいるように演出して魚を誘う。こうしてると本当にナブラが湧いたりもするんだよねー。たまたまかもしれないけど。
お、海鳥だ。鳥山ができたらそこを狙うんだけど、ただただ投げ続ける。初心者だと釣れないと暇だよね。私はワクワクしながら釣れる時を待ってるけど。キャストをひたすら繰り返すよ。
……。
……。
お、来た? 竿がぐぐん、と引き込まれる。来たー!
「フィッシュー!」
「え、釣れた?」
強靭な横向きの走り出し、これは青物です。良形の予感! っていうか今の私のパワーでも引っ張られる! どんな大物?!
シロル「お茶です」
リンヤ「ありがとー」
シロル「書類仕事楽しいですか?」
リンヤ「うん、私はこういうのも好きかも」
ジル「管理している感じが楽しいですな」
ルル「私も性に合うわね」
マーベル「陛下を支えてると思うと楽しいかな」
リンヤ「変態ね」
ジル「変態ですな」
ルル「キモいのよ」
シロル「総括すると変態でキモいとなりますね!」
マーベル「お前らオレのこと嫌いだろ!」
ネイコ「マーベルも食べてるおやつは美味しいよボリボリ」
マーベル「それ陛下が作ったやつう! 食うなや!」