商業ギルド。
今日は二話鶏が……なんの話?
二十一時にもう一羽な。こけー。唐揚げ。
はーい、ユーミ女皇帝です。ユーミ暦二十二日です。皆さん元気にしておりますか?
私はかなり不機嫌です。犯罪者を売って奴隷を買いに行きます。人身売買しまーす。まあ犯罪者を売るのを人身売買というと賞金稼ぎとか人身売買になってしまうんで、そちらはそんなに気にしてないですね。全員鉱山で頑張ってもらいましょうね。
買うのがなぁ。需要を作ってしまうのは良くないよね。でも既に売られてる人は買われないと救いが無いし。解放はいずれするけど生きていける下地も無しに解放したら死んじゃうし、でも養う選択肢は無いね。義理がない。養うなら小角族が優先。理由は小角族が親しい関係だから。義理がある。それにしたって生きていけるようになったら放置だしね。それ以上する義理がないから。
私一人に世界を救えとか馬鹿な事は言わないで欲しい。責任無いもんね。そもそも自分一人を助ける責任は本人に有るんだからね。当たり前だけど。だから助けるとしたら私は勝手に助ける。知らないふりして。そもそも他人だし事情なんて知らん。
力が有る者には責任がある? 無いよ、そんなもん。まず貰い物で私の力でもないしね。そして私の財産の使い道を決めるのは私だし救うなら小角族から救う。そして自分も救う。私は奴隷じゃないから好きにするよ。それに助けられる人は何故助けられて当然と思うのか、それがあり得ない。人には一人で立つ義務がまずある。親の責任もない。世界に責任なんてもっとない。だから力有る者の責任もない。理不尽を見たら助けたくはなるものだけどね。
まあうちに来るなら奴隷にも好きなことを犯罪になったり誰かを困らせたりしない限りはさせてあげたいね。……当然働いてもらうけど。
代わりに暖かい物食べてもらうし布団もフカフカだ。小角族にもそんなに贅沢させてないのに奴隷にいきなりそんな贅沢させないよね。その分は親しい人を助けるよ、普通は。
だからそれは仕事の対価だよ。仕事を覚える気が無いなら放逐するし、働かなくても放逐する。鮫の餌にしないだけマシでしょ。鮫に食われかけてたら助けるよ。当たり前だけど。
んで、そんなこと考えて勝手に機嫌悪くしてます。笑えるね。笑えよカツオノ。うわ、ほっぺた引っ張ったらもちもちやん。
「なんでオレ?!」
「なんとなく。じゃあ行ってくるねー」
「ハイハイ、道案内は任せてね。まずは商業ギルドね」
はい、リンヤとリートまでテレポートしまーす。インフォさんが座標を覚えてたらどこでも行けるってチートだよね。
商業ギルドまで歩きながら街を観察する。獣人とかもいるけど奴隷じゃないね。差別的なとこはあまり感じない。奴隷は痩せてる人が多いけど鞭を打たれたりはしてないね。買った方も養う義理はないだろうに食事とかは与えてるんだろうな。自分が食うに困る可能性もある時代なのに。
犯罪奴隷以外は騙された人? うーん、たぶん真偽判定官がいるのにそんな犯罪怖くてできないと思う。真偽判定官を見極めるような、相手のスキルを鑑定できる能力とか有るなら、逆に詐欺なんてしなくても食べていけそうだし。
ほとんどが売られたか借金を自分で背負った人だろう。そして払えなかった。普通に商売するのも難しいだろう環境だしね。
小角族にも経済は教えたいんだよね。例えば私がなにか物を出す。それは有限だ。そうすると競争が起こる。下手したら喧嘩になる。譲り合いというのが気持ち悪い。我慢しすぎる人が必ず出てくる。正直不健康。
だからそこをお金で決める。何かに貢献したらお金が貯まる。その分を使える。不公平がないよね。お金が全てなんじゃなくて他に分かりやすい指標がない。
ぶっちゃけレアな魚とか全員には回せないからね。それが寂しいなと。納得が行かないと喧嘩になるし。小角族はそこが温厚だから好きだけど我慢され過ぎるのはこちらが嫌だ。勝手に我慢してるというなら勝手に我慢させないのもありだろう。
なので小角族を精一杯甘やかしてるよ。先日の二つの集落、因縁が有ったはずのヒバシラとシモバシラも、食べられるとなったらわりとすんなり落ち着いたしね。だから喧嘩しない程度に甘やかす。勝手にね。
おっと、着いたかな。
「うん、ここが商業ギルドだよ」
「汚職とか蔓延ってるかな」
「そうだね、お金で殴ったらだいたい解決するけど」
あんまり期待しては駄目だよなぁ。物は用意してるし騙し取ろうとするならこちらもその人からあらゆるスキルで搾取できるしね。そもそもこっちは脅しに屈しないしお金に困ってないから普通に商売するよね。でも悪人もいないはずがないか。
「こんにちはー」
「へい、ラッシャイ!」
……寿司屋かよ。と思ったら普通にギルド受付の前に座ってる人が声を上げてた。受付嬢は引いてるけど小さい声でいらっしゃいと言ってるね。あれは前に座ってる人に引いてるだけのようだけど。
「寿司屋ですか」
「おう、先祖代々寿司屋でい!」
「商業ギルドに用があるんで失礼します」
「ありゃ、そりゃ済まねえな! オレっちが話つけてやらあ!」
「いらないからどいてくださいね」
「うわ、めちゃハッキリという嬢ちゃんだな……」
普通に邪魔なんだよねえ。困ってもないし。こういうのを善意の押し付けという。違いが分かりやすいよね。だけどしっかりと断るのが礼儀だとは思う。関わりたくないしね。
「家を買いたいのでよろしくお願いします」
「貴女は噂の女皇帝様では?」
「まあそうですが、家はどうすれば買えますか」
「あ、こちらで手続きします。どうぞ」
女皇帝だと一発でバレた理由? ……聞きたい?
まあリンヤもいるし凄く男っぽい女だしね。ヒソヒソと「噂通り」とか言われてるし。あ、このお寿司屋さんはツルギさんというらしい。銀髪碧眼で鉢巻きしてて凄い違和感。聞いてもないことをペラペラしゃべってるので適当にネタを聞き出してみる。なんにも知らないっぽい。
受付の女の人はアリナリアさんというらしい。青い髪に銀色の目だ。色が逆だね。こちらは青いツバのない革っぽい帽子に青いシャツみたいな服だ。物腰は凄く丁寧な感じでいい人そう。
カウンター席の一つに案内されて、すぐに奥からバインダーのような物が運ばれてきた。仕事が速いなぁ。もう少しゆっくりでもいいのに。ツルギさんに怒ったから引かれたのかな。失敗した。今日はイライラし過ぎだな。
いくつか見せられたけどぶっちゃけ住まないので見た目が綺麗で小さい家に決めて連れていってもらう。出がけにツルギさんとすれ違ったので手をあげて挨拶だけしておいた。なんかサムズアップされたけど。苦手なタイプだな。まあ悪い人ではないんだろう。お節介が過ぎるのとせっかちな感じだけど。